Cubaseを使ったガイド・メロやリズムの作成方法〜クオンタイズ関連のTipsも紹介|解説:木下龍平

Cubaseを使ったガイド・メロやリズムの作成方法〜クオンタイズ関連のTipsも紹介|解説:木下龍平

 こんにちは。SUPA LOVE所属作家の木下龍平です。前回は結局、曲を作り始める前に終わってしまいましたが、今回はいよいよリズムやメロディを打ち込んでいこうと思います。引き続き“細かなところに手が届く”STEINBERG Cubase Pro 12の機能をご紹介できたらと思うので、今回もどうぞよろしくお願いいたします。

Retrologueを使用して耳に痛くないガイド・メロを作成

 職業作家の多くは、歌のメロディを考えるときにシンセ音源でガイド・メロを打ち込んでいると思います。この音源を何にするかは好みが分かれるところですが、自分はCubaseに付属するRetrologueを使用しています。

Cubase Artist/Proに付属するソフト・シンセ、Retrologueの画面。筆者はガイド・メロの作成に活用している。赤枠のアタック・タイムを少し遅くして、耳に刺さらない音色にしておくと長時間の作業でも疲れにくい。また、黄枠のTUNEでピッチを設定することも可能

Cubase Artist/Proに付属するソフト・シンセ、Retrologueの画面。筆者はガイド・メロの作成に活用している。赤枠のアタック・タイムを少し遅くして、耳に刺さらない音色にしておくと長時間の作業でも疲れにくい。また、黄枠のTUNEでピッチを設定することも可能

 オケを邪魔しない汎用性と、ある程度の音抜けの良さから、基本的なノコギリ波を選択して使うのですが、一つお勧めしたいのがアタックを少し遅くすることです。シンセの高音は結構耳に刺さるので、アタックを遅くすることによって長時間作業をしても聴き疲れしないようにしています。また、実際にシンガーの方に歌ってもらうときにこのガイド・メロを聴いてもらいながら録ることもあり、ヘッドフォンで聴くとより一層高域が耳にダイレクトに届いてしまいます。気持ち良く歌ってもらうためにも、ちょっとだけ耳に優しい音を作ってあげると良いでしょう。

 また、近年のバンド系の楽曲ではデフォルトのチューニングをA=441Hzにして制作することも多いので、そういう場合は画面右上のTUNEから変更することができます。

Undo/Redoやオーディオ編集機能付きGroove Agent SE

 生ドラムのアレンジをする際はNATIVE INSTRUMENTS Kontaktで立ち上げる音源を使用しているのですが、いわゆるエレドラのように自分でサンプルを取り込んでキットを作る場合は、Cubaseに付属するバーチャル・ドラム、Groove Agent SEを使用しています。

Cubase AI/Elements/Artist/Proに付属するGroove Agent SEの画面。赤枠はUndo/Redoボタンで、サンプルを間違えて読み込んでしまった場合も操作を取り消すことができる。黄枠内右の“S”を左右に動かすと音の終わる位置を設定でき、左の白い□を動かすとフェード・アウトさせることができる

Cubase AI/Elements/Artist/Proに付属するGroove Agent SEの画面。赤枠はUndo/Redoボタンで、サンプルを間違えて読み込んでしまった場合も操作を取り消すことができる。黄枠内右の“S”を左右に動かすと音の終わる位置を設定でき、左の白い□を動かすとフェード・アウトさせることができる

 Groove Agent SEの好きなところは、まずUndo/Redo機能があることです。サンプルをパッドに取り込むときに、間違って別のパッドに入れてしまい元々あったサンプルが分からなくなっても、このボタンを押せばすぐ元に戻せます。こういった場合はDAWのUndo機能では対応できないので、ソフト音源自体にこの機能があるのはかなりありがたいです。

 また、スネアやキックの余韻を曲のテンポに合わせて調整することも簡単です。波形の右端にある“S”という文字にカーソルを合わせると“Set Sample End”と表示されますが、ここを左右に動かすことでサンプルの終わる位置を調節できます。また“S”のすぐ上にある白い四角にカーソルを合わせると“Set Fade Out Length”と表示され、サンプルの終わりが自然になるようにフェードを書くことができるようになっています。

 もちろん、パッドごとにフィルターをかけたりピッチを変えたりすることも可能です。あらかじめ曲に合ったサンプルを選べるのが一番良いですが、実際の制作では“ここがもう少しこうだったら……”と思う場面が多いと思うので、こういった機能は覚えておくと便利ですね。

便利なクオンタイズのショートカットと“ハネるリズム”を打ち込む方法

 メロディやドラムのトラックが用意できたら、いよいよMIDIノートを打ち込んでいきましょう。自分は生楽器がメインのアレンジが好きで、ピアノやドラム(特にハイハットなどの金モノ)は、ベロシティが自然になるようになるべくMIDI鍵盤でリアルタイムに打ち込むようにしており、クオンタイズ関係のショートカットを活用することが多いです。

メニュー・バーから“編集→キーボードショートカット...”を選択して開くことができるキーボードショートカットの画面。ここからショートカット・キーの割り当てが可能。赤枠にはクオンタイズに関する項目が並んでいる

メニュー・バーから“編集→キーボードショートカット...”を選択して開くことができるキーボードショートカットの画面。ここからショートカット・キーの割り当てが可能。赤枠にはクオンタイズに関する項目が並んでいる

 中でも使用頻度が高いのはこちらです。

●Set Quantize to ◯th

 クオンタイズのグリッドを何分音符にするかを変更する項目。特に全音符(Set Quantize to 1th)と16分音符(Set Quantize to 16th)は設定しておくと便利です。MIDIノートを打ち込んだり編集するときは、基本的に16分音符のグリッドにして、プロジェクトウィンドウでイベントを1小節ずらしたりするときは全音符に切り替えています。

●Auto Quantize On/Off

 あらかじめクオンタイズされた状態で打ち込むかどうかを切り替えることができます。ドラムのキックのように、ある程度グリッドに正確に合った方が良いものはオンにして打ち込み、かっちり合わせ過ぎると不自然になってしまう楽器やフレーズはオフにして打ち込みます。

●感度指定クオンタイズをオン/オフ

 これをオンにすると、いきなりグリッドに合わせるのではなく、徐々にクオンタイズをかけることができます。バラードのピアノのように、完全にグリッドに合わせたくないときにオンにしています。

左はクオンタイズ前、右はクオンタイズ後のピアノロール画面。感度指定クオンタイズをオンにしているので、完全には拍にそろっていないことが分かる

左はクオンタイズ前、右はクオンタイズ後のピアノロール画面。感度指定クオンタイズをオンにしているので、完全には拍にそろっていないことが分かる

 これらはデフォルトでショートカットに登録されていないので自分で設定する必要があるのですが、MIDI鍵盤で打ち込みをしている人にとってはかなり助かる機能ではないでしょうか。ちなみに、ショートカットに設定できる作業をした直後に“キーボードショートカット”を開くと、最初からその項目にカーソルが合った状態になるので、探す手間が省けて便利です。“なんかこの作業いつもやってる気がするな……”と思ったら、とりあえず“キーボードショートカット”を開いてみることをお勧めします。

 最後にクオンタイズに併せて、近年特に増えたと感じるミドル・テンポ(90~100BPM程度)で16分のハネるリズムを打ち込むときのコツをご紹介します。自分は元々ベーシストですし、スティーヴィー・ワンダーやレッド・ホット・チリ・ペッパーズのようなブラック・ミュージック由来の音楽が好きなので、このハネ加減には結構こだわりがあるのですが、16分音符でかっちり合わせてしまうとイマイチかっこいいハネ方にならないんですよね。こういうときは“クオンタイズパネル”の中にある“スウィング”という項目を60~70%くらいに設定してみましょう。こうすると、とても自然でかっこいいハネ方になるのでぜひ試してみてください!

ピアノロールの画面上にクオンタイズパネルが表示されている。クオンタイズパネルは、赤矢印が指す“e”のマークをクリックすることで表示可能。赤枠の“スウィング”という項目を60~70%くらいに設定すると、自然でかっこいいハネたリズムにすることができる

ピアノロールの画面上にクオンタイズパネルが表示されている。クオンタイズパネルは、赤矢印が指す“e”のマークをクリックすることで表示可能。赤枠の“スウィング”という項目を60~70%くらいに設定すると、自然でかっこいいハネたリズムにすることができる

 今回はこのくらいでしょうか。皆さんの普段の曲作りに少しでもお役に立てればうれしいです。次回もよろしくお願いいたします。

 

木下龍平

【Profile】SUPA LOVE所属の作詞作曲編曲家。15歳よりベースを始める。専門学校を卒業した後、バンドやアーティストのレコーディング、ライブのサポートのほかに講師としても活動。近年ではTVアニメ『ドラえもん』のキャラクター・ソング 「ジャイアントドリーム」の作編曲や、TikTokで話題になった「チグハグ」のアレンジを担当した。声優/アニメ作品のほか、アイドルやJポップ・アーティストへ幅広く楽曲を提供している。

【Recent work】

『馬鹿ばっか』
THE SUPER FRUIT
(TSUBASA RECORDS)
※編曲

 

STEINBERG Cubase

LINE UP
Cubase LE(対象製品にシリアル付属)|Cubase AI(対象製品にシリアル付属)|Cubase Elements 12:13,200円前後|Cubase Artist 12:35,200円前後|Cubase Pro 12:62,700円前後
*オープン・プライス(記載は市場予想価格)

REQUIREMENTS
▪Mac:macOS 11以降
▪Windows:Windows 10 Ver.21H2以降(64ビット)
▪共通:INTEL Core I5以上またはAMDのマルチコア・プロセッサー、8GBのRAM、35GB以上のディスク空き容量、1,440×900以上のディスプレイ解像度(1,920×1,080を推奨)、インターネット接続環境(インストール時)

製品情報

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