
ボーダレスは、その名の通り作品同士の境界が無いのが特徴。鑑賞者が会場を回遊していくだけでなく、作品自体が部屋から出て別の部屋に移動し、ほかの作品と融合する。鑑賞者が触れることで映像や音が反応する作品も多く、視覚はもちろん、聴覚、触覚など五感に訴えかける。
これだけの規模はチームラボでも初めて。木本氏の所属するサウンド・チームの3人にとっても、さまざまな工夫が求められているという。
「ボーダレスでは作品そのものに壁が存在せず、BGMやSEも作品に合わせて移動するので、会場の至る場所でBGMやSE同士が混ざり合う状況が起こります。単に作品の移動に合わせて音を鳴らすだけでは崩壊してしまうので、それぞれの状況に合わせて音の鳴り方や音源を切り替えて、バランスを取っています」
コンピューター×520台、プロジェクター×470台と、使用している機材の量も膨大だ。スピーカーやアンプの台数は公式には発表されていないが、YAMAHAが協賛。スピーカーにVXSシリーズやVXCシリーズ、パワー・アンプにXMVシリーズやMA/PAシリーズが導入された。
「部屋のサイズや、BGMやSEなどの用途によって、小型のスピーカーを複数個設置したり、BGM用にある程度の音量と低音感が確保できるものを用意したりと、一つの部屋であっても複数種類のスピーカーを設置しています。サウンドの調整は、音源の編集やプログラム側での調整に加えて、実際に会場で鳴らしてみて、オーディオ・インターフェースやパワー・アンプのDSPを使用して調整していきました。その点で、YAMAHAのスピーカーはフラットに鳴ってくれるので、現場調整が非常に早くできてとても助かりました」
ボーダレスでは、先述したように作品そのものが移動していく。サウンド作りもそれを意識したものになっていると木本氏は語る。
「会場全体を作品たちが移動していくので、作品に合わせて、流れる音も常に流動的に変わっていきます。そして、お客さんも移動しながら作品を鑑賞するので、従来のマルチチャンネル作品のように特定のスウィートスポットを作るのではなく、空間内どこで聴いてもそれぞれの場所で音として成立することを目指して作っていきました。1万平米という巨大な空間で均質な音場を作るという点では、小型なスピーカーから大型なものまでラインナップされているYAMAHAのスピーカーで統一できたことは非常に大きかったと思います」
各所で話題となっているボーダレス、ぜひ訪れてみたいという読者も多いだろう。その際は、そんなスピーカーの配置など気にせずにご覧いただくことをお勧めする。同じ空間でもさまざまな作品が刻々と入れ替わる、新しいアート体験そのものを楽しんでほしい。


■森ビル デジタルアート ミュージアム:エプソン チームラボ ボーダレス公式Webサイト
https://borderless.teamlab.art/jp/
■ニュース・リリース
『MORI Building DIGITAL ART MUSEUM:EPSON teamLab Borderless』にヤマハが音響機器パートナーとして協力
https://www.yamaha.com/ja/news_release/2018/18060503/