IZOTOPE OzoneとBURL AUDIOを体感するTACセミナー

5月25日、東京・市ヶ谷のサウンドインスタジオBstにて、タックシステム主催による“第36回TACセミナー”が“IZOTOPEマスタリング・セミナー”と、“BURL AUDIO Flight of the Mothership Tour 2017”の2本立て×2回で行われた。

IZOTOPEマスタリング・セミナー

コントロール・ルームで行われたIZOTOPEマスタリング・セミナーは、まずリリースされたばかりのRX6の新機能紹介から。衣擦れ、風切り音、ヘッドフォンからのクリック漏れ、リップ・ノイズ、ブレスなどに合わせたアルゴリズムを新規搭載。範囲選択して実行するだけでこれらのノイズを低減/削除できる。さらによく使用する機能のみを画面右側のメニューに表示できるようになった。また、以前のバージョンからある機能だが、DAWからはRX Connectを使用してRXに信号を送ることで、スムーズなワークフローが実現できることも強調されていた。

RX6の新機能、De-bleedをテストしているところ。ヘッドフォンからマイクに漏れたクリック音も、元のクリックをDAWから送り、範囲選択して実行するだけで簡単に消える RX6の新機能、De-bleedをテストしているところ。ヘッドフォンからマイクに漏れたクリック音も、元のクリックをDAWから送り、範囲選択して実行するだけで簡単に消える

Ozone 7を使用するマスタリング・セミナーではサイデラ・マスタリングのチーフ・エンジニア、森崎雅人氏が登壇。微細な設定が行えるプラグインを探していた際、数値入力で小数点以下5桁まで設定可能なOzoneに出会い、愛用するようになったという。セミナーではMaximizerで音圧のみを上げたものと、自身が行った処理を比較しながら、ダイナミクスを生かしたOzoneの使い方を紹介していた。氏の基本設定はVintage Limiter→Multiband Dynamics→Maximizerというルーティング。またその前段に複数のEQをインサートし、分離感を得たり、にごりを解消したりといったプロセスも行っている。Maximizerのみだとキックへの反応が大きく、そのために損なわれるダイナミクスを、こうした処理をすることで保つことが可能になると森崎氏。パッケージ・メディアに限らず、音楽配信や、ラウドネス制限の設定されているYouTubeなどでも有効だと解説していた。

実際の処理例を示しながら解説する森崎氏。この曲では楽曲の持つ雰囲気に合わせてVintage LimiterのAnalogを選択していた 実際の処理例を示しながら解説する森崎氏。この曲では楽曲の持つ雰囲気に合わせてVintage LimiterのAnalogを選択していた

BURL AUDIO Flight of the Mothership Tour 2017

コントロール・ルームに会場を移してのBURL AUDIO Flight of the Mothership Tour 2017は、BURL AUDIO本社からリック・ウィリアムズ氏を含む3人が来日。初のアジア圏への来訪になるという。バンドの演奏をBURL AUDIOのマイクプリアンプの後段でスプリットし、同社B80 Mothershipと他社オーディオ・インターフェースとで個別にAD変換した素材を持参。このスタジオであらためてMothershipと他社オーディオ・インターフェースでDA変換し、比較試聴するという試みだ。

BURL AUDIO B80 Mothership。カードの構成で、最大80chまで自由に入出力数を追加できる BURL AUDIO B80 Mothership。カードの構成で、最大80chまで自由に入出力数を追加できる

参加者からは“レンジが広い”“サックスの芯がしっかり聴こえる”とB80 Mothershipのサウンドは高評価を得ていた。その理由を解説するにあたり、ウィリアムズ氏の略歴が紹介される。氏はもともとレコーディング・エンジニアで、STUDERのアナログ・テープ・レコーダーとNEVEコンソールの組み合わせで仕事をしていた。1990年代、自身のスタジオを設立するにあたって入手した、それらよりも安価な機材のサウンドに満足できず、現在に至る製品の開発を着想する。1997年にはUNIVERSAL AUDIOに入社し、マイク・プリアンプ4110&8110、2ch AD/DAコンバーター2192の開発に従事。さらなるAD/DA製品の開発を手掛けるために、BURL AUDIOを設立したという。

BURL AUDIO社長のリッチ・ウィリアムズ氏 BURL AUDIO社長のリッチ・ウィリアムズ氏

BURL AUDIOのAD/DAは特にアナログ回路部に力を入れており、大型のトランスやディスクリートのDA回路、位相の乱れを起こしにくいパッシブ・フィルターの搭載などがその特徴として挙げられていた。また、MothershipシリーズはAVID Pro ToolsのDigiLinkやMADIに対応するほか、Dante対応も準備中。近日中にはAES67ポートとUSB端子(ネイティブDAWでのオーディオI/Oとして使用可)に対応したカードもリリースする予定もあると語った。

2スロット仕様のB16 Mothershipも展示されていた 2スロット仕様のB16 Mothershipも展示されていた
大型のトランスを搭載したADカード 大型のトランスを搭載したADカード
API500モジュールのB1とB1D。それぞれ出力トランス線にニッケルとスチールを採用し、サウンド・キャラクターの違いを生み出しているという API500モジュールのB1とB1D。それぞれ出力トランス線にニッケルとスチールを採用し、サウンド・キャラクターの違いを生み出しているという