創立20周年を迎えるRMEが新製品4機種を発表 〜RME新製品発表会レポート

ドイツのレコーディング機器ブランドRMEは、創立20周年を迎える今年、一挙に新製品4機種を発表。東京・赤坂のmEx-Loungeにおいて、同社の創始者の一人であり開発のトップを務めるマティアス・カーステンズ氏と、プロダクト・マネージャーのマックス・ホルトマン氏が新製品についてのプレゼンテーションを行った。

新製品のラインナップ

Madiface Pro

madiface Madiface Pro

アナログ4イン/4アウト(ヘッドフォンを含む)に加え、最大64イン/64アウトを実現した24ビット/192kHz対応のオーディオ・インターフェース。既に発売中のBabyface ProのADAT入出力をMADIに置き換えたモデルと言えば分かりやすいだろう。アナログ入出力に関してはBabyface Proと共通している。バス・パワー動作を想定して、消費電力削減のためにMADI入出力のみをオフにすることも可能だという(コンピューターの機種によっては付属の電源アダプターが必要な場合もある)。

max ▲「バス・パワーに対応しているためカフェや飛行機の中など電源が取りづらい環境でも使用ができる」とホルトマン氏は語った

製品情報ページ
http://synthax.jp/musikmesse-2016-madiface-pro.html

Fireface UFX + & ARC USB

ufx-plus Fireface UFX + & ARC USB

12イン/12アウトのアナログ入出力や4系統のマイクプリ&Hi-Z入力、2系統のMADI入出力などを備え、最大94イン/94アウトを実現した24ビット/192kHz対応のオーディオ・インターフェース。

Fireface UFXとFireface UFX+との主な違いは以下の3点。
1. MADI I/Oを搭載
2. FireWire/USB2.0からThunderbolt/USB3.0に接続方式を変更
3. 新コントローラーARC USB接続用USBポートを装備

ARC USBはFireface UFX+と着脱が簡単に行え、コントロール・ソフトであるTotalMix Fxの機能を15個のボタンに割り当てることが可能。フット・スイッチ接続端子も搭載している。

ARC USBは旧モデルFireface UFXで使用可能かとの問いに対し、端子の形状が異なるため互換性はない。とMax氏は語った ▲ARC USBを手にするホルトマン氏

Fireface UFXの大きな特長でもあったDURec(ダイレクトUSBレコーディング)も進化している。これはフロント・パネルのUSB 2.0コネクターにUSBメモリーやディスク・ドライブを接続するとコンピューターを使用せずにマルチトラック・レコーディングが行えるという機能だが、Fireface UFX+は録音可能なトラック数は最大76Tr。さらに内蔵のリアルタイム・クロックを使い、録音ファイルにタイム・スタンプが記録されるようになった。

durec ▲サンプリング・レートによってMADI入出力のチャンネル数が異なるため、録音可能なトラック数も異なる

発売中のBabyface Proと同様、旭化成AKMの最新世代AD/DAコンバーターを搭載したことで、それに最適化されたアナログ回路に変更されている。これにより20周年アニバーサリー・フラッグシップと呼ぶにふさわしい高品位な製品に仕上がっているという。

difference-1 ▲Fireface UFX+のマイク・プリアンプは最大入力レベル+18dBu、ゲイン・レンジ最大+75dBuを誇り、PADを使うことなくさまざまなマイクに対応する。

製品情報ページ
https://synthax.jp/musikmesse2016-fireface-ufx.html

ADI-2 Pro

adi2-pro ADI-2 Pro

RME初となるDSD(11.2MHz)とPCM768kHzに対応したオーディオ・インターフェース。アナログ2イン/2アウトで、メイン・アウトとは異なる音声を出力できるヘッドフォン端子に加えS/P DIF、AES/EBU、ADATのデジタル入出力も装備している。

ADI-2 Proの開発にあたって マティアス氏は並々ならぬ情熱を注ぎ込んだという。

土台となったのがAD/DAコンバーターADI-2だ。既に10年以上前に発売されたモデルなので、これまで培ってきた自身のアナログの知識や品質の良いパーツを使ってこれをアップデートする製品を作ろうと考えた結果が、リファレンスとして使えるヘッドフォン・アンプだったとマティアス氏は語る。

matthias 「市場に出回っているヘッドフォン・アンプを30〜40種類も試したが納得できるものがなかった。このことがADI-2 Proを開発する動機になった」とマティアス氏

ADI-2ProはAD/DAコンバーター、ヘッドフォン・アンプ、USBオーディオ・インターフェースを一台でまかなえる製品だが、ダイレクトDSDプレイバック機能を搭載しており、PCM変換を介さない完全なネイティブDSD再生が可能となる。

高い品質を維持するためパーツのクオリティにもこだわりがみられる。その一部を紹介すると、オペアンプに、TEXAS INSTRUMENTSのSoundPlus OPA1602をヘッドフォンに、それ以外の部分にSoundPlus OPA1688を使用。コンデンサーにハイファイ・オーディオに特化したNICHICON Museを採用している。

また、パーツを実装する基板にも特別なものが使用されている。一般的には4層程度のものが使われることが多いが、ADI-2 Pro基板は10層にもなるという。基板を高層化することは技術的にも難しいのだが、ノイズを十分考慮した設計が可能になると同時に、高密度にパーツが実装でき、製品を小型化できる。オーディオ・ファンにも納得してもらえるようなスペックを引き出したいというRMEの思いがここにある。

circuir-adi2pro ▲ADI-2 Pro内の10層の基板がアニメーションで紹介された
top ▲基板上に各セクションのパーツがコンパクトに整然と並んでいるのが分かる。これはドライバーからコンポーネントの開発まで自社で行っているRMEだからこそ実現できるのだという。なおアナログ部はすべてバランス仕様で回路が組まれ、フロア・ノイズを最小限に抑え込んでいる。当然、回路や部品の点数が倍増するとともに、+とーの特性がそろっていないとこれを実現することはできない
spec-adi2 ▲測定器で測ったスペック。SN比が124dBA、ひずみ率0.00003%、周波数特性は最高120kHzという驚異的なパフォーマンスを実現しているのが分かる
headphone-spec ▲ヘッドフォンのボリュームをフルにしてもノイズが聞こえないパワフルなヘッドフォンポートを作ったマティアス氏は語る。また、バランス仕様のヘッドフォンも使用可能だ。
headphone-spec2 スピーカーでのリスニング環境を擬似的に体験するバイノーらル再生や、ヘッドフォンや耳を守るための機能も搭載している

さらに、ADI-2 Proには、5バンドのパラメトリックEQ、Bass/Trebleへのクイックアクセスなどの多くの音質調整機能を搭載し、フロント・パネルに配置された液晶ディスプレイとエンコーダーから操作が可能となっている。

front フロントパネルには、Fireface UFXと同じく高精彩、高画質、広視野角を特徴とするIPS(In Plan Switching)方式の液晶パネルを装備。3つのプッシュ機能付きエンコーダーと、4つのボタンが配置されており、すべての機能に直感的にアクセスができる

 製品情報ページ
https://synthax.jp/musikmesse-2016-adi-2-pro.html

RMEが愛されている理由

1996年ドイツで誕生したRMEの製品には大きくは2つに分けられる。一つはプレミアム・ラインとよばれるAD/DAコンバーターやマイクプリなど主に設備用として使われるタイプ。もう一つはプロ・ラインとよばれるオーディオ・インターフェースなどコンピューターと接続するタイプだ。

今年で創立20周年になるRMEが世界中で愛されている理由のひとつは、高品質と安定性だろう。古い製品に対応するドライバー開発も続けているためユーザーはコンピューターを買い換えても末永く製品を使うことができる。

adi8 ▲RME創立5周年を記念して作られたDA/ADコンバーターADI-8AE。トップ・パネルには当時のスタッフ18名のサインがつづられている。

ハイクオリティなサービスを続けられた理由をマティアス氏はこう語る。

「開発のチームは自由な気質で、上層部の命令による製品ではなく、自分たちの作りたい物を作ってこれたことが良かったのではないだろうか。この姿勢はこれからも基本的に変わらない。自分たちが必要なものをずっと開発してきた。市場が求めているものを、そして自分たちが必要だと思う物を作り続けていきたい」

今回発表された製品は今年8~9月ごろの発売予定で、価格は未定となっている。