新世代のライブ・コンソールAVID Venue S6L発表会レポート

2016年1月28日、六本木ザ・リッツ・カールトンにてオーディオブレインズ主催によるAVID Venue S6Lの発表会が開催された。AVIDは近年AVID Everywhereという戦略的ビジョンを掲げている。レコード会社やプロダクション、クリエーター、コンシューマーをつなげるテクノロジーを提供をすることが同社の狙いであり、Venue S6Lはライブ・エンターテイメント産業における大きな役割を果たすものと位置づけている。

venue-4 ▲2016年1月28日ザ・リッツ・カールトン東京で開催されたオーディオブレインズ主催のVenue S6Lセミナーの様子

S6Lは、すべて新設計によるコントロール・サーフェス、エンジン、I/O、Venueソフトウェアで構成されたAVID初の96kHz対応ライブ・コンソールである。ハイパワー・エンジン、豊富なチャンネル数など従来のVenueシリーズを大きく上回る仕様により、さまざまなシチュエーションに柔軟に対応することができる。

例えば、チャンネル数に増加は複数のプレイヤーがインイア・モニターを使用する場合にも大きなアドバンテージとなる。E6L-192のミックス・バスは96で、ステレオ換算で48。つまり48人へ個別のモニター・バランスを返すことができる。FOHから表返しをしなくてならない場合もインプット・チャンネルをすべてダブル・アサインするようなことも可能とのこと。また、一つのコントロール・サーフェスを2つに完全に分けてオペレートできるので、ミュージカルの劇場などにおいて音響監督とFOHエンジニアが1台のサーフェスをシェアするような状況にも十分対応できる。

S6Lの接続はAVBを採用し、別途モジュールを使用すればLANケーブルだけでなく光ケーブルでも使用できるので長距離伝送も可能。また、複数のS6Lシステムで複数のI/Oをシェアし、なおかつそれぞれのコントロール・サーフェスで個別のゲインを持つことができるゲイン・コンペンセーションにも対応予定。将来的にはAVB HUBも利用可能となり、固定設備などでの利用も増えてくるだろう。

venue-3 ▲3つのラインナップ(S6L-32D、S6L-24D、S6L-24)のうち、最上位モデルのS6L-32Dが展示されていた
venue-2 ▲ディスプレイはすべてマルチタッチになっており、視認性が良く直感的な操作ができる
venue-5 ▲S6Lコントロール・サーフェスのリア・パネルにはこれまでの同社サーフェスには無かった8イン/8アウト・アナログ入出力、4系統のAES入出力が搭載されている
venue-10 ▲プロセッシング・エンジンE6L。10Uあった従来のFOHラックがコンパクトな5Uサイズに
venue-11 ▲I/OのStage 64は64イン/32アウトをサポート(標準仕様は48イン/8アウト)。Stage 64の上には長距離伝送を可能とする1UサイズのLANケーブル端子を光ケーブルに変換するためのモジュールが設置されていた
venue-8 ▲LANケーブル一本でS6LとApple MacBook Proがつながり、Pro Toolsとの64chの入出力連携が可能となる。また発売予定のThunderboltカードを使用することで192トラック録音も可能
venue-13 ▲Venueソフトウェアは基本的に従来のバージョンを踏襲しつつ、タッチ・スクリーン対応や視認性の向上など機能が一新されている。過去のVenueソフトウェアのデータのインポートも可能

プラグインはAAX DSPが採用されており、既にSONNOXとMCDSPがサード・パーティ製プラグインとしてS6Lに正式対応している。今後WAVES、FLUXも対応を予定している。

venue-14 ▲いち早くS6Lに正式対応したMCDSPプラグイン

最近ではインイア・モニターの使用により、プレイヤーのモニター環境を心地よいサウンドに仕上げることが重要になっている。これらのプラグインを使用することはFOH環境だけでなくモニター環境も向上できるだろう。さらに制作とライブにおいて共通のプラグインが使用できることも見逃せないポイントだ。

さらに、先日NAMM Show 2016にて、Pro Tools 12.5においてAVID CLOUD COLLABORATIONが実装されることが発表された。Venue S6L+Pro Toolsシステムが、今後クラウドの活用によってどのようにワークフローに影響を及ぼすのかにも注目していきたい。

venue-15 ▲NAMM Show 2016のAVIDブースの様子。ここでAVID CLOUD COLLABORATIONが発表された。

Pro Toolsでマルチ録音した音源を使用して行うバーチャル・サウンド・チェック、S6LからPro Toolsへのダイレクト・レコーディング、外部のエンジニアとのリモート・コラボレーションによるミックス・ダウン……さらには完成した作品の配信までを、AVIDはワンストップでユーザーへ提供しようとしている。そのワークフローの中でS6Lが重要な一角を担うことは間違いないだろう。

関連Webサイト
●AVID Venue S6L
http://www.avid.com/JP/Products/Venue-S6L
●オーディオブレインズ
http://www.audiobrains.com/
●メディア・インテグレーション(SONNOX、McDSP、WAVES、FLUX)
http://www.minet.jp/

サウンド&レコーディング・マガジンとOTOTOY、スパイラルの3社合同企画による2016年3月11日より開催のHIGH RESOLUTION FESTIVALにおいて、AVID Venue S6Lを使用した24Bit/96kHzでバンド演奏をマルチ・レコーディング・デモンストレーションを行う予定。詳しい告知は公式サイト( http://highresofes.com/ )にて後日アナウンスいたします。

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