細井美裕の“ゆるっとインタビュー”大鹿展明編〜舞台監督ってどんな仕事?【第43回】realize〜細井美裕の思考と創発の記録

表現活動をしていきたい方にお勧めのバイトは美術館の施工現場と舞台の現場

 ロームシアター京都での最終クリエイション、最後の1週を切ったところです。今月はせっかく劇場という現場にいるので、舞台やライブに関わらないとなかなかその仕事を見る機会がない舞台監督という存在を少しご紹介します。

 もし、表現活動をしていきたいと思っている方にお勧めのバイトを聞かれたら、美術館の施工現場と、舞台の現場の二つをお勧めします。私は舞台では音響チーム所属で、相当鍛えてもらいました。専門的な仕事ですが、人手が必要な現場だと募集がかかることがあるので、情報を見たらぜひに……。安全管理、段取り、クオリティ、礼儀などなど、学ぶことがたくさんあります。そして何より、自分より圧倒的に多くの表現の現場に関わっているので、1相談したら10返ってくる。物理的に舞台を仕上げる以上の存在なのです。

 今回『tangent』の舞台監督として入っているのは大鹿展明さん。大鹿組は過去に、高谷史郎さん、坂本龍一さんをはじめ、ダムタイプ、ヨーロッパ企画、地点、木ノ下歌舞伎などの舞台作品や、原 摩利彦、空間現代、日野浩志郎などのライブコンサートにも関わっています。以下、細井から大鹿さんへのゆるいインタビューを元にした内容でお送りします。

舞台監督はカンパニーメンバーを笑顔にする仕事 得意ジャンルに合わせて楽しめるメンバー構成で

──舞台監督の仕事と大鹿さんの遍歴は?

 仕事をざっくり説明すると、例えるならバーベキューに行くときの仕切り役‼ いなくてもいいけど、いると便利な存在‼(細井注:うそです!いないと無理です)。説明すればするほど雑務であるが、みんながやりたいことを可能な限り実現するために時間調整、段取り調整をする仕事……!? カンパニーメンバーを笑顔にするお仕事。

 最初は役者を目指してたけど(細井注:大鹿さんはめちゃくちゃ声が通る)、10代で間違って大阪の野外劇団“維新派”に関わって、そのままアウトローな人生。大道具をしながら知人経由でいつのまにやら舞台監督になる。

──大鹿組にはどんな人がいる?

 大鹿組は一人親方の会社だから、現場に来てくれるのは基本的にフリーランスの皆さん。大道具の方がメインで、美術作家、役者などさまざま……人によって得意ジャンルが違うから、現場によって人選しつつ、毎度楽しめるメンバー構成で!!

──日本の公演を海外でツアーするときに一番違うところは何? 気をつけるところは? 逆に良いところは?

 事前に入念に打ち合わせを済ませるけど頼んでいたモノがないor全く違う!!(苦笑)。担当者が不在がち!!(涙)。日本人が真面目過ぎるのかな……。ガチガチ過ぎるスタンスで乗り込まないように心構えしている。現場には現場特有の空気が流れているからその国特有のやり方を尊重しつつ与えられた状況でベストを尽くせるように臨機応変に!! 底力が試される(細井注:照明のラリーさんは海外の現場で、照明をつるときにチョークを渡されて、どこにどの照明が欲しいか床に書けって言われたらしい。でも書いたらその通りにつられたらしい)。海外はノリが最高!! 設営時もそうだし、終演後の拍手であったり、リアクション初日後のレセプションパーティーの雰囲気もアゲアゲ!! 感情の出し方がストレートで反応も分かりやすい。

 ゆるインタビューいいかもなあ。またやってみますね。

 最後に、今回のクリエイションの影のサポーター、食事難民になりがちなロームシアター京都周辺で夜遅くまで開いている我々の食堂“ミニネパール”に拍手を! ここのミールス(定食)、ダルとライスに熱々に熱したギーをかけられるのですが、ネパールでは一般的なのでしょうか? 今度U-zhaanさんに会ったら聞いてみます。ではまた~!

 

仕込み中の大鹿さん(写真中央)

仕込み中の大鹿さん(写真中央)

舞台袖でプロップ置き場を作る大鹿さん。誰よりも早く現場に入り、誰よりも遅く現場に残る大鹿さん、いつもありがとう

舞台袖でプロップ置き場を作る大鹿さん。誰よりも早く現場に入り、誰よりも遅く現場に残る大鹿さん、いつもありがとう

楽屋から出てきた大鹿さんが鬼の仮面をかぶっていました

楽屋から出てきた大鹿さんが鬼の仮面をかぶっていました

最初に見たとき感動した、大鹿さんによる“センターが取りやすい”バミリ! 2枚のテープの中央がセンターを示す。これはコモンセンスなのだろうか?

最初に見たとき感動した、大鹿さんによる“センターが取りやすい”バミリ! 2枚のテープの中央がセンターを示す。これはコモンセンスなのだろうか?

見えづらいワイヤーがある場所にホスピタリティテープ

見えづらいワイヤーがある場所にホスピタリティテープ

衣装の靴裏。白パンチの床に黒ゴムの靴底は相性が悪く、足跡が付いてしまうため、大鹿組とどうしたら跡がつかずに滑らないか、日々靴裏の素材を変えて実験。特殊な環境で稽古をしているので、1日過ごしただけで写真のように摩耗する。靴底の凹凸はカッターですべて平らにカットして、テープが剥がれないようになっている

衣装の靴裏。白パンチの床に黒ゴムの靴底は相性が悪く、足跡が付いてしまうため、大鹿組とどうしたら跡がつかずに滑らないか、日々靴裏の素材を変えて実験。特殊な環境で稽古をしているので、1日過ごしただけで写真のように摩耗する。靴底の凹凸はカッターですべて平らにカットして、テープが剥がれないようになっている

食事に困るクリエイション中、我々の食堂になった“ミニネパール”。フライパンに入っているのは熱せられたギーで、ライスとダルにかけられる。写真左:濱哲史、同右:古舘健

食事に困るクリエイション中、我々の食堂になった“ミニネパール”。フライパンに入っているのは熱せられたギーで、ライスとダルにかけられる。
写真左:濱哲史、同右:古舘健

ついにミニネパールに、公演ポスターが貼られた!

ついにミニネパールに、公演ポスターが貼られた!

高谷史郎(ダムタイプ)新作パフォーマンス『tangent』

  • 会場:ロームシアター京都サウスホール
  • 開催日時:2024年2月9日(金)~ 2月12日(月)

総合ディレクション:高谷史郎
プロジェクトメンバー:濱哲史、古舘健、白石晃一、細井美裕、南琢也
照明:吉本有輝子
舞台監督:大鹿展明
マネジメント:高谷桜子


今月のひとこと:中国の電子音楽、ハウイー・リー熱が再発。『“DOME” Presented by DENPA!!!』で来日したときはライブにLeap Motionを使っていた模様。

 

細井美裕

細井美裕
【Profile】1993年生まれ、慶應義塾大学卒業。マルチチャンネル音響を用いた空間そのものを意識させるサウンドインスタレーションや、舞台公演、自身の声の多重録音を特徴とした作品制作を行う。これまでにNTT ICC無響室、YCAM、札幌SCARTS、東京芸術劇場コンサートホール、愛知県芸術劇場、国際音響学会AES、羽田空港などで作品を発表してきた。

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