第17回~【番外編】モニターについて考える②

9月も半ば。すっかり秋めいてきました。今年は秋が早く来た感じですね。芸術の秋! 皆さん、どんどん良い音楽を作ってくださいね。私は食欲の秋にハマってみたいと思います!

さて、前回からちょっと脱線し、番外編として「モニターについて考える」というお題でモニター、特に今回はスピーカーのことを皆さんと考えてみたいと思います。

お薦めしたい「モニター選び」3つの方法

モニター選び、本当に難しいですよね……。

どれも原音に忠実なモニター・スピーカーのはずなのに、同じソースでも出てくる音のバランスや音色感、広がりなど全く違いますよね。
とはいえ何か選ばないといけないわけなので、今回は私がお薦めするモニター・スピーカーの選び方をお話ししましょう!!!

• 好きなアーティスト/エンジニアの使っているスピーカーと同じものにする。

これは一番間違えが無いかなと思います。例えば中田ヤスタカ君が好きなら、GENELECにすればいいですし。クリス・ロード・アレジのサウンドが好きなら、何とかYAMAHA NS-10MにオリジナルのYAMAHA PC-2002Mパワー・アンプを探して、サブウーファーにINFINITY BU-2を使う。

もちろん、プロフェッショナルの環境は大きな音を出せたり、電源回りや配線もしっかりしているので、真似をしても同じ音が出るわけではないのですが、ほぼほぼオリジナルに近い音で聴くことができます。そこで、好きなアーティスト/エンジニアが作った音を聴きまくってください。そうすれば、その好きなアーティスト/エンジニアの音が、基準としてあなたの耳に刻み込まれるでしょう。

• 一般的に評判が良いものを使う。

“ちょっと、いい加減じゃないですか〜”って言われそうですが、それこそサンレコ本誌でも特集をしているので、諸先輩や今を時めく優秀なアーティスト/エンジニアが薦めるものを参考にしましょう。それも多くの人々がレコメンドするものはやはり良いものです。結果、それはとてもスタンダードなものになると思います。

こんな話があります。昔のことですが、あるベテランで素晴らしいキャリアを持っているエンジニアと仕事をしました。実は当時、私はスタジオでのミックス・チェックに自分のスピーカーを持ち込んでいました。それを見て、そのエンジニアに言われたのは「気持ちは分からなくないけど、そんな特殊なスピーカーでモニターしているとそれが無いと仕事できなくなるよ。普通のものを普通に使った方が良いよ。世界中どこに行っても調達できるからね。モニターとヘッドフォンは普通が一番!」。

とても、理にかなっている考え方ですよね。それから私も何となくスピーカーの持ち込みがめんどくさくなって(笑)、やめました。
モニター選びに悩んでいる人は、“評判が良いものを買う”って結構良い選択肢かもしれません。

• 運命の出会いを待つ。

モニターはレコーディングの中で最も大切なツールの一つなのは皆さんもお分かりですよね。前回お話ししたように、モニターによってバランスや音色の仕上がりは左右されます。

ある有名なエンジニアさんに「ミックスはモニターの音になるんだよ」と言われたことはあります。つまりGENELECでミックスするとGENELECっぽい音に仕上がり、TANNOYはTANNOYの音になり、FOSTEXはFOSTEXの音になるということです。確かに、モニターによってEQをいじるときの音の変化の仕方は結構違いますしね。この言葉も一理あると思います。

であれば、自分の作品や自分が好きな音楽をいろいろなモニターで聴いてみて“こいつだ!!!”という運命の出会いが訪れるまで、いろいろなモニターを試してみるのも良いか思います。

しかし、運命の出会いにはちょっと落とし穴というか、気を付けなくてはいけないことがあります。いわゆるモニター・スピーカーは音を作り込み、かつその音を評価するために設計されています。ということは、ひどい音はひどい音に、良い音は良い音に聴こえるようにできています。また、ささいなEQの動きやコンプの設定の変化が分かるようになっているはずです。

しかし、一般のスピーカーはその逆のコンセプトで作られていることが多いのです。というのは、どんな音楽でも、つまりどんなミックスでも良い感じで聴かせるようにしているのです。オリジナル以上に低音が出たり、ボーカルがやけにしっかり聴こえたり……。スピーカー自体にあるキャラを付けて、何を聴いても同じ感じに聴こえさせるスピーカーも多いです。なので、あなたが“運命の出会い”をしたとしたら、そのスピーカーがモニター用で無かった場合、いろいろな音楽を聴いて確かめてみてください。どんな音楽でも同じように聴こえたらちょっと注意してください。

▲筆者の使っているYAMAHA NS-10M ▲筆者の使っているYAMAHA NS-10M
同じく筆者のPMC ALM2 同じく筆者のPMC ALM2
▲いわゆるラジカセ・チェックで有名なSONY FS-F1も筆者は所有 ▲いわゆるラジカセ・チェックで有名なSONY FS-F1も筆者は所有

 とはいえ私も自分の最愛のスピーカーと“運命の出会い”をするために日々、情報を集めています。
さて、次回はボーカル・テイクの作り方に戻りましょう〜。

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【中脇雅裕】
プロデューサー/音楽ディレクター。CAPSULE、中田ヤスタカ、Perfume、手嶌葵、きゃりーぱみゅぱみゅなどのヒット作品に深くかかわる。アーティスト/クリエイターの成功とメンタルの関連性に日本でいち早く着目し、研究を重ねている。http://nakawaki.com

※本連載は毎月15日・30日近辺に更新していく予定です。お楽しみに!