
設置環境に左右されないSAMスピーカーは
自分ではどうにもできない調整を担ってくれます
40年の歴史を誇る、フィンランドのモニター・スピーカー・メーカー、GENELEC。現在のスタジオ・モニターでは主流となったアクティブ式のパイオニアとして知られる同社は、コンパクトなデスクトップ機からスタジオ用ラージ機までを手掛け、世界中のエンジニアやクリエイターから厚い信頼を寄せられている。この連載では、そんなGENELECモニターを愛用するクリエイターに、制作のパートナーとしてのモニターを語ってもらっている。今回はドラマや映画などのサウンドトラックをはじめ、Jポップでも活躍する作編曲家、兼松衆のプライベート・スタジオに伺った。
どのくらい低域が出ているのかまで分かるモニター
兼松が、現在のスタジオに移ってきたのは2年前のこと。以前は8040Bを使っていたが、部屋のサイズに合わせ一回り小さなSAM内蔵モデルの8330Aにリプレースしたそうだ。SAM(Smart Active Monitoring)は、DSPによって音場に合わせた最適なモニター調整を自動で行えるシステム。専用マイクとソフトウェアから成るGLM(Genelec Loudspeaker Manager)で簡単に測定と補正が行える。
「SAMはビクタースタジオのエンジニア、谷田茂さんに薦めていただきました。GLMソフトウェアでSAMをバイパスしてみると、その効果がよく分かりますね。SAMが低域をすごく削ってくれているのですが、つまりモニターの設置環境にもともとそれだけ問題があるということ。これほどの低音の調整は自分ではどうにもできないので、そこを担ってくれるのがすごくいいなと思っています」
兼松自身がミックスをすることもあるが、多くの仕事はエンジニアと組んで行っている。それでもSAMで調整されたモニター環境の恩恵は大きいようだ。
「エンジニアの方が仕上げてくださったミックスをここで確認するときに、信頼できるモニターであってほしい。特に低域ですね。“低域がある/無い”ではなく、どのくらい低域が出ているのかということまで分かります」
サブウーファーを追加し低域解像度がさらに向上
そんな兼松のスタジオには、半年ほど前にSAM対応サブウーファーの7350Aが追加された。映画の仕事が続いたので、低域を補強したいというのがその理由だ。さぞ迫力のある音で鳴るのかと思いきや、そうではないという。
「最初は7350Aの有無でそれほど迫力が変わらなくて、少しがっかりしたくらいでした。よく考えたら、SAMは2.0chでも2.1chでもSAMが適正なモニター環境を提供してくれるもの。だから、サブウーファーを入れたからといって、低域がブン!と強調されるわけではない。そうではなくて、音量が変わらなくても低域の解像度が上がり、量感や音色がより分かるようになりました。かえってGENELECに対する信頼度が上がりましたね。たぶん、GENELECの個々のモデルで解像度や音色などの違いはあったとしても、SAMで鳴るバランスは変わらないんじゃないかと思います。だからこそ、同軸のThe Oneシリーズも興味が出てきましたね。何を鳴らしても、自分は今間違った状態じゃないということを確認できるモニターだと思っています」

兼松衆の使用モデル
SAMシステムにより、設置環境の問題を自動補正可能なアクティブ・モニター。マルチチャンネルにも対応
8330A

オープン・プライス
(ダーク・グレー:市場予想価格100,000円前後/1基、ホワイト:市場予想価格108,000円前後/1基)
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7350A

オープン・プライス
(市場予想価格150,000円前後/1基)
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Creator of This Month
兼松衆
国立音楽大学作曲科在学中よりジャズ・ピアニストとして活躍。卒業後はドラマや映画のサウンドトラック、アーティストへの楽曲提供などに創作のフィールドを広げ、鋭意活動中。直近ではテレビ朝日開局60周年記念ドラマ『白い巨塔』(5月放送)の音楽を担当している
■GENELEC製品に関する問合せ:ジェネレックジャパン https://www.genelec.jp/