音を楽しみながら作るスタイルが好きなので
“音楽的に聴ける正確なモニター”は万能なスピーカーです
40年の歴史を誇る、フィンランドのモニター・スピーカー・メーカー、GENELEC。現在のスタジオ・モニターでは主流となったアクティブ式のパイオニアとして知られる同社は、コンパクトなデスクトップ機からスタジオ用ラージ機までを手掛け、世界中のエンジニアやクリエイターから厚い信頼を寄せられている。この連載では、そんなGENELECモニターを愛用するクリエイターに、制作のパートナーとしてのモニターを語ってもらっている。今回はガールズ・グループMaison book girlの音楽面のみならずアートワークなども手掛けるプロデューサー、サクライケンタに登場いただく。
低域の輪郭や量感が見えやすくなった
サクライは、Maison book girlのミックスを手掛けるエンジニア、采原史明氏の薦めで8030Bを購入したという。
「以前は、8030Bと同じくらいのサイズの、5インチ・ウーファーの2ウェイ機を使っていました。このスピーカーも気に入っていたんですが、どうしてもこのサイズだと低域を把握するのが難しかったんです。3年ほど前に采原さんにそんな相談をしたところ、ご自身がサブモニターとして使用していた8030Bを薦めてもらいました。“低域の輪郭がはっきりしているのでいいんじゃないか?”というのがその理由でした」
Maison book girlでは采原氏がミックスすることがほとんどだが、サクライが手掛けるラフ・ミックスが基準となるので、プライベート・スタジオでの出音も重要なのだそう。また、ほかのプロジェクトではサクライ自身がミックスをすることもあるという。
「8030Bにしてから、低域の輪郭、低域の量感、ベースとキックの混ざり具合、全体の定位などが見えやすくなりました。それでいて、高域も奇麗に鳴ってくれる。全体的にバランスがいいスピーカーだと思います」
広くないスペースでも気持ち良く聴ける
サクライのプライベート・スタジオは、一般的な住宅の半地下にある。試しに普段の作業音量でラフ・ミックスを鳴らしてもらうと、かなりラウド。フローリング床が細かく振動するほどだ。
「本当はもう少し壁から離して設置したいところですが、8030Bのフィルターで低域を4dB落として調整しています。それでもベースの音程感がよく分かるんです。そこが以前使っていたスピーカーとの大きな違いですね」
そう語るサクライ、続いて同じ曲の完成版を再生してくれた。バランスの印象は変わらないが、ベースやキックのリリース・コントロールが効いた仕上がりだ。そうした違いが、ルーム・アコースティックに手を入れていないこの環境でも、ありありと分かる。
「細部のコントロールはエンジニアのおかげですが、僕が持っていったバランスのまま良くしてもらった印象ですね。8030Bのおかげでラフ・ミックスのバランスも良くなり、“スタジオに持っていったらバランスの印象が違って聴こえる”といったことはなくなりました」
そんなふうに8030Bを絶賛するサクライ。最後にこう語ってくれた。
「デザインもいいし、曲がかっこ良く鳴ってくれるので、やる気にさせてくれる。音楽を作っていて楽しいモニターだと思います。大きなスタジオを造ってラージ・モニターを入れるなら別ですが、現状では8330Aに満足していますね」
サクライケンタ使用モデルの後継機
8030C
オープン・プライス
(ダーク・グレー:市場予想価格76,000円前後/1基、ホワイト:市場予想価格84,000 円前後/1基)8000シリーズの5機種の中で3番目のサイズ。前身となった8030BよりSPLが4dB上昇し、消費電力がさらに低下している。ユニットは5インチ・ウーファー+3/4インチ・メタル・ドーム・ツィーター。アンプはクラスD50W+50Wのバイアンプ構成を採用する
Creator of This Month
サクライケンタ
Maison book girl、いずこねこ、クマリデパートの作詞/作曲/編曲/ギターといった音楽面だけでなく、アートワークなども手掛けてきたプロデューサー。大森靖子のサポート、カオティック・スピードキングでのバンド活動なども行っている
■GENELEC製品に関する問合せ:ジェネレックジャパン https://www.genelec.jp/