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本当にマルチな映像表示の話〜【第24回】DIYで造るイマーシブ・スタジオ 古賀健一

 先日、鹿児島の大久保重樹さんのChimpanzee Studio(前回参照)を再訪した際、急遽、Dolby Atmosに関連するセミナーを開催しました。高校生から年配の方まで来てくださり、僕も大変刺激をもらいました。チャンスがあれば、東京でもやってみたいです。

悩ましい解像度とレートのマッチング〜4Kで統合するための壁

 さて、ついに90インチのサウンド・スクリーンの工事が終わり、特注していた360 Realty Audioのボトム・スピーカー台も届きました。AUDIO FUTURES 360 WalkMix Creatorのスピーカー・プロファイルで9.0.4.5設定を作っていただき、ソニーの“360 Reality Audioミキシングスタジオ”の一覧にXylomania Studioが掲載されました。

 『サウンド&レコーディング・マガジン』では映像は専門外だと思いますが、苦節10カ月、サウンド・スクリーンが設置できるまでと、映像周りのシステム構築の紆余曲折を書きます。正直、こんなに大変だとは思っていませんでしたし、こんな複雑なシステムを導入するとも、建設当初は想像もつきませんでした。でも、自分の映像知識の無さを見直すきっかけになったので、結果的に良かったなと思っています。

ついにサウンド・スクリーンを設置。スクリーンを通して後ろの壁面が見える。導入までの顛末は前々回を参照

ついにサウンド・スクリーンを設置。スクリーンを通して後ろの壁面が見える。導入までの顛末は前々回を参照

360 Reality Audio用のボトム・スピーカー台も到着。平面が9ch、ハイトが4ch、ボトムが5chという構成

360 Reality Audio用のボトム・スピーカー台も到着。平面が9ch、ハイトが4ch、ボトムが5chという構成

 現在、僕のスタジオのディスプレイは6枚+iPad2枚。内訳はAPPLE Mac ProからAVID Pro Tools、DAD Dadman、NON-LETHAL APPLICATIONS Video Sync(ライブ映像用)、Dolby Atmos Renderer Remoteの4つ。APPLE Mac Miniが2台(Dolby Atmos Rendererとバイノーラル確認用のAPPLE Logic Pro)あり、Logic Proとの兼用でDENONのAVアンプAVC-A110からのApple Musicなどを表示。さらにアシスタント用ディスプレイとEuCon用のiPadが2枚あります。そこに、8K対応サウンド・スクリーンを追加しました。表示はPro Toolsが4Kで、後は基本的にフルHDです。

 これらを自由に連携すべく、BLACKMAGIC DESIGNの映像ルーターSmart Videohub 12×12を導入しました。しかしこれはめちゃくちゃファンがうるさいので、スタジオの外に置いて、リモート・コントロール・パネルのVideohub Smart Control Proをスタジオの中に入れています。

 ここにまず落とし穴が一点、Smart Videohub 12×12は2160p/30HzのUltra HDフォーマット(4K)まで対応していますが、60Hzに対応していません。現在僕のPro Tools画面はたくさん波形やフェーダーを並べたいので、27インチを60Hzの4K(3,840×2,160)で動かしています。

BLACKMAGIC DESIGN Smart Videohub 12×12。2160p/60Hzの入出力には12G対応モデルが必要だが、現行の同社ラインナップでは40×40のみ。12×12と12G 40×40では価格差が約3.5倍なので、このモデルでの運用方法を考えた

BLACKMAGIC DESIGN Smart Videohub 12×12。2160p/60Hzの入出力には12G対応モデルが必要だが、現行の同社ラインナップでは40×40のみ。12×12と12G 40×40では価格差が約3.5倍なので、このモデルでの運用方法を考えた

Videohub Smart Control Proは、Smart Videohubのリモート・コントロール・パネル。こちらのみコントロール・ルーム内に置くことで、ファン・ノイズの問題を解決

Videohub Smart Control Proは、Smart Videohubのリモート・コントロール・パネル。こちらのみコントロール・ルーム内に置くことで、ファン・ノイズの問題を解決

 ここで用語解説。コンピューター側のグラフィック・ボードが送出できる、映像の切り替わる頻度のことをフレーム・レートと呼びます(単位はfps)。例えば映画だと24コマ、テレビだと30コマ(パラパラ漫画みたいなものです)。一方、リフレッシュ・レートというものもあり、こちらはディスプレイ側が1秒間に最大何フレームの映像の切り替わりを処理できるかを示す数値で、単位はHzで表されます。最高スペックとなると240Hzとかがあります。

 これに照らし合わせると、Mac Proのグラフィック・カードやDENONのAVアンプからSmart Videohub 12×12で映像を受けるには、60Hzではなく30Hzになってしまいます。DENON AVアンプの最上位に位置するAVC-A110はなんと8K/60pまたは4K/120pまで出力できるのに、完全にお手上げです。

 また突然“p”という文字が出てきました。“p”はプログレッシブ走査、iはインターレース走査……チンプンカンプンになってきましたね(笑)。インターレースは“飛び越し”という意味で、一枚の静止画像を表示するために、まずは1、3、5……と奇数列を表示し、次に、2、4、6……と偶数列を表示する方法。テレビがこれです。プログレッシブ走査は、1列目から1080列目まで(1080pの場合)上から順に映像を表示します。基本的に、僕らは“p”で動かしていることが多いと思ってください。

 なので、すべての機器がSmart Videohub 12×12とスムーズにつながるわけではないのです。

 ここで対策を考えます。主要ディスプレイやプロジェクターはハブを使わず直挿し。切り替えたいものだけ、30Hzに出力を落としSmart Videohub 12×12につなぎました。一応50Hzでも表示できますが、いまいち安定しません。

 AVC-A110は出力が2つあり、ミラーリングできます。Mac Pro(2019)も今後に備えてグラフィック・カードを2ランク・アップのAMD Radeon Pro W5700Xにしていたので、パワーは問題なし (最大6台の4Kまたは3台の5Kディスプレイがつなげるので本当にお薦めです)。

プロの助力を得てついに映像システム構築

 もう一つ落とし穴、Smart VideohubはHDMI入出力でなく、SDI(同軸)入出力なので、変換が必要です。4K(3,840×2,160)にしたいところはBLACKMAGIC DESIGNのMicro Converter 12Gを使用。Full HD(1,920×1,080)でよいところは同3Gにします。しかしDENONのAVアンプからの8K出力はもちろん受けられません。現在8Kコンテンツはほぼ無いのですが、少しでも4Kで良い映像を出すにはと思い、DENONのAVアンプとEPSONのプロジェクターEH-TW8400(生産終了)との接続は、長く引き回せる4K対応のアクティブHDMIケーブル20mにしました。HDCP 2.2です……さあ、また3Gとか12GとかHDCPとか、見慣れない言葉が出てきてしまいました(笑)。

Micro Converter 12GはSDIとHDMIの変換を行うコンバーター。HDMI→SDIでソースからハブに、SDI→HDMIでハブからディスプレイに接続する。12Gはケーブル1本で4K映像の伝送が可能な速度に対応している、という意味。3GはフルHD(1080p)をケーブル1本で扱える

Micro Converter 12GはSDIとHDMIの変換を行うコンバーター。HDMI→SDIでソースからハブに、SDI→HDMIでハブからディスプレイに接続する。12Gはケーブル1本で4K映像の伝送が可能な速度に対応している、という意味。3GはフルHD(1080p)をケーブル1本で扱える

 そう、映像の世界の用語は、音楽以上に理解が難しいなというのが僕の感想です。正直、人様に説明できる知識を僕は持ち合わせていません。よって、DIYという趣旨でずっときたのですが、ついにプロのお力を借りました。10カ月も右往左往した理由が少し、分かってもらえたでしょうか?

 心強い方々のお力添えもあり、ハブから全然映像が出力されないトラブルもあったりしながら、プロジェクターが4K対応と書いてあるのに、実はなんちゃって4Kだったことが分かったり。レンズ調整やスクリーンの設置位置をご教授していただき、なんとか無事、映像周りが完成しました!!!!。……と見せかけて、ディスプレイごとのディレイ(遅延)を合わせないといけないので、また近々来ていただきます。MAスタジオや映像にかかわる方々のお仕事、恐るべし!と思い、今回のコラムを終わろうと思います。

古賀健一

古賀健一

【Profile】レコーディング・エンジニア。青葉台スタジオに入社後、フリーランスとして独立。2014年Xylomania Studioを設立。これまでにチャットモンチー、ASIAN KUNG-FU GENERATION、Official髭男dism、ichikoro、D.W.ニコルズなどの作品に携わる。また、商業スタジオやミュージシャンのプライベート・スタジオの音響アドバイスも手掛ける。
Photo:Hiroshi Hatano

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