
AVID Pro Toolsユーザーに、仕事で使う道具としてのPro Toolsについて語っていただくこの連載。今回はJVCケンウッド・クリエイティブメディアのJVCマスタリングセンター赤坂スタジオにお邪魔し、Pro Tools|HDからHDXへのリプレースについてお話を伺った。
持ち込まれるセッションに併せて
レコーディング用ルームにもHDX導入
JVCケンウッド・クリエイティブメディアは、CDやDVD/Blu-rayなどのメディア製造を主軸とし、その関連業務としてJVCマスタリング・センターを開設。名匠として知られる小鐵徹をはじめ多くのマスタリング・エンジニアが在籍する、国内屈指の規模のマスタリング・スタジオとして知られてきた。2016年、中央林間にあったマスタリング・スタジオを代官山スタジオに統合するのと併せて、代官山にあったレコーディング部門を赤坂へ移設することとなった。
その赤坂スタジオは、マスタリング/ミックスを兼ねた1stと、ボーカルやナレーション収録用のブースを備えるレコーディングの2stを備える。1stは先にPro Tools|HDXを導入しており、この3月にPro Tools|HDからHDXへのリプレースを果たしたのは2stの方だ。
「この2stでは歌もののボーカル録音からサントラの録音、あるいはナレーション収録をすることが多いですね。広いブースとは言えませんが、楽器の録音をすることもあります」
そう説明してくれたのは、所属エンジニアの湯沢貴久氏。Pro Tools|HDXへのリプレースについてはこう語る。
「最近ではPro Tools 12のセッション・ファイルが持ち込まれることも多く、外部スタジオとの互換性を考えると必要なアップグレードでした。1stのPro Toolsは先行してHDXを導入していたので、環境を合わせる意味でも導入して良かったと思います」


アナログ入力に余裕を持ったI/Oを選択
HDX化によってサウンド面も向上
従前のPro Tools|HDではカード3枚を搭載したHD3構成だったそうだが、HDXではカード1枚で十分な処理能力が得られるとのこと。HD I/Oはアナログ16イン/8アウト仕様と、この規模にしてはアナログ入力が多いモデルを選択している。
「基本的にはボーカル・ダビングやナレーション収録がメインのスタジオですが、まれにドラムを録音するようなセッションもあります。スペース的にはかなり難しいのですが、それでもドラムを録るとなると8インでは足りないので、16インを選択しました」
もちろんPro Tools|HDからPro Tools|HDXへのアップグレードによって、サウンド面での向上も大きなメリットになっているという。
「Pro Tools|HDのころは、ミックス・バスでの飽和があるように感じていて、アナログでパラレル出力をして自作のサミング・アンプでまとめたりもしていましたが、Pro Tools|HDXになってからはそうした飽和感も解消されたように思います」
リスナーへのアウトプットとなるメディアから徐々に、制作現場へと業務を拡張してきたJVC赤坂スタジオ。スタンダードな制作スタイルが求められる現場へのPro Tools|HDXの導入は、必然とも言えるだろう。

