ACOUSTIC REVIVE クロス・レビュー「多目的消磁器」

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 “原音忠実”の理念のもと、ケーブルなどのオーディオ・アクセサリーを手掛けるACOUSTIC REVIVE。今回のテーマは、光学ディスクやUSBストレージ、ハード・ディスク、ケーブルに至るまで、さまざまなものに使える消磁器RD-3だ。

 

ACOUSTIC REVIVE代表
石黒謙、氏の技術解説

 CDやDVD、Blu-rayディスクなどの光学ディスクは、レーベル面の印刷塗料の顔料と信号面のアルミはくの中に含まれる磁性体によって磁化し、レーザーでの読み取りやピックアップ周辺の配線および回路に磁気の影響が出て、音質が劣化します。ACOUSTIC REVIVEの消磁器RD-3で光学ディスクを消磁すると磁気の影響が無くなり、音質や画質が劇的に向上します。またCD-RやDVD-Rなども、レーベル面の印刷塗料や信号面の色素の中に含まれる磁性体により音質が劣化してしまいます。データを焼く前にRD-3で消磁していただくと、記録される音質が確実に向上します。


 USBストレージやハード・ディスク、SSDなども各部に鉄などの強磁性体を含むため、データの記録前(記録中や後ではなく“前”)にRD-3にて消磁すると、驚くほどのクオリティ差で記録可能。ケーブルのプラグやコネクター、コンセントなどにも磁性体が含まれるため、RD-3で消磁することにより音質向上が得られます。


 シールドなどに磁性体を使用したケーブルは丸めてRD-3の上に置き、ケーブルごと消磁することでクオリティ・アップします。そのほか機材のネジやケースなど、磁性体はあらゆるものに含まれており、帯磁することで知らぬ間にクオリティを劣化させていますので、RD-3にて定期的に消磁していただきクオリティを保つことをお勧めします。

 

<製品ラインナップ>
RD-339,800円
 外形寸法:160(W)×56(H)×198(D)mm、重量:650g 

 

Cross Review

諏訪内保

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<Profile>Wax Alchemy主宰。MALAやGOTH-TRADのダブプレート・カッティングを担い、マスタリングでFriday Night Plans、millennium parade、向井太一らに携わる

 

帯磁がいかに音像を濁らせるのか
痛感する結果が得られた

 一流料亭の職人が活魚の輸送方法をこだわり抜くように、マスター・データのトランスポートも可能な限り音質劣化を避けたいものです。レコードやテープといったアナログ・メディアの再生では静電気、ほこり、温度、電気など音像に影響を与える要因が多々存在しますが、デジタル領域の再生やトランスポートにはどのような現象が見られるのでしょう。今回は、USBストレージからマスタリング・ソフトへのオーディオ・インポート、オーディオCD作成時のブランクCD-Rへの書き込み、書き込んだCD-Rの読み込みという3つの作業を、それぞれ消磁あり/無しで行いました。


 いずれの場合も消磁ありの音源は飽和感が少なくヘッドルームに余裕があり、パルス・レスポンスがより鮮明。何もしない状態では、帯磁がいかに音像を濁らせていたのか痛感させられます。繊細ですが、特にステレオ成分の中高域の明度が良くなり、モノラル成分では中低域の輪郭が見えやすくなりました。これは周波数バランスの変化ではなく、解像度の向上(=劣化しない)という印象です。


 プロセッサーによる後処理では再現困難なトランジェントの明りょう感、そして濁りの無いエネルギッシュな再生がマスタリング前のインポート時点で手に入るのは、とてつもないアドバンテージです。この素材の鮮度の差は、曲を初めて聴いたときの印象から始まり、オーディオ処理への影響を経て、最終的な仕上がりに雲泥の差を生みます。音を調整するプロセスだけでなく、ACOUSTIC REVIVE製品のような“プロダクトを駆使した品質管理”も、良質な楽曲を生み出す重要なファクターだと思います。


森崎雅人

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<Profile>マスタリング・エンジニア。サイデラ・マスタリングでチーフを務めた後、TINYVOICE PRODUCTIONへ。昨年、東京・中目黒にArtisans Masteringを開設した

 

立ち上がりが速く輪郭の鮮明な音に
低域の再現性は特筆に値する

 CD-Rと、DDPマスターの器となるDVD-Rで音の違いを比較試聴しました。CD-Rは消磁あり/無しの試聴盤を焼いて比較。DVD-Rは消磁あり/無しの各ディスクにDDPマスターを焼き、MAGIX Sequoiaで展開して比較しました。音質はCD-R、DVD-R共に傾向が似ています。最初に聴いたとき、膜が一枚はがれたようなクリアで立ち上がりの速い音に驚きました。ボーカルや楽器の輪郭がとても鮮明に聴こえます。まるでアイロンをかけたワイシャツのような折り目正しい音が印象的。立体感や空気感も抜群で、天井が無くなったような解放感があります


 特に驚いたのは低域の再現性で、キックとベースの厚みがグッと増しました。ローエンド、ハイエンドも消磁無しに比較すると奇麗に伸びています。最後にディスクに焼く前のオリジナルのDDPマスターと比較試聴したところ、消磁したディスクと音の方向性が近いことに驚きました。音を良くするにはまず再生ソフトからと言われますが、RD-3は音を正確に再現する助けとなる素晴らしい製品です。

 

葛西敏彦

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<Profile>レコーディング/PAエンジニア。これまで蓮沼執太、高木正勝、スカート、大友良英、Okada Takuro、サニーデイ・サービス、トクマルシューゴなどを手掛けてきた

 

品質&安心感の担保のために導入
音飛びなどのエラーが減った印象

 ACOUSTIC REVIVEの消磁器は、エンジニアzAkさんのスタジオで見たのを機に購入しました。今でこそアーティスト側とのラフ・ミックスなどのやり取りをファイル・ベースで行えるようになりましたが、数年前まではCD-Rに焼いて渡すのが日常で、その際にこの消磁器が活躍。使い方は、ラフ・ミックスをCD-Rへ焼く前に記録面/レーベル面の両方を消磁するというものです。導入前は、焼き終えたCD-Rに音飛びなどのエラーが見られることもあり困っていたのですが、使い始めてからはエラーの頻度が確実に減ったと感じています。ラフ・ミックスだけでなく、ファイナル・ミックスやマスターの書き込みにも役立ちます。


 記録後の音質に関しては、消磁効果が持続する間は透明感が増す印象。ただ、僕の場合はエラー防止という目的の方が大きく、プロの仕事としての品質や安心感を担保するために導入したと言えます。ACOUSTIC REVIVE製品は好きでいろいろ使っていて、“音本来の姿を追求する”といった一貫した哲学が消磁器からも感じられますね

 

■ACOUSTIC REVIVE製品に関する問合せ:ACOUSTIC REVIVE

https://acousticrevive.jp/