僕がこれまで試したヘッドホンの中で間違いなくベスト。別格のサウンドだと言えます
国内オーディオ機器ブランドの老舗として知られるSTAX。“イヤースピーカー”と銘打ったコンデンサー型ヘッドホンと“ドライバーユニット”なる専用ヘッドホンアンプを主要製品とし、国内外で高く評価されている。ここでは1979年に登場したSR-Λ(ラムダ)の系譜を継ぐ、アドバンスド・ラムダシリーズ・トップエンドモデルの最新版=SR-L700 MK2と、フラッグシップモデルSR-X9000をピックアップ。普段からSTAX製品を愛用するDJ/プロデューサーのDJ WATARAIに、専用ドライバーユニットと組み合わせてレビューしていただいた。
Photo:Takashi Yashima
Products Overview|SR-L700 MK2
同社アドバンスド・ラムダシリーズにおけるトップエンドモデルSR-L700の最新版。リケーブル構造を採用し、ケースホルダーの素材は従来のプラスチックからアルミへ変更となった。強度アップに加え、側頭部へのフィット感が改善し、低域の再現性も向上したという。多層固定電極“MLER”を採用した長円形ユニットが大きな特徴だ。
Impression
まず目を引くのが長方形のハウジング。耳全体をすっぽり包んでくれるサイズ感がお気に入りです。また、ほどよい弾力性のある本革製イヤーパッドとアルミ製ケースホルダーが相まって、快適な着け心地を提供してくれます。位置調整においては、10段階のクリック式スライダーが付いているので、一度調整したらそのまま理想的なポジションをキープしてくれるので使いやすいと感じました。あとケーブル部分がリケーブル仕様になったのもいいです。仮に断線したときでも、ケーブル部分だけ交換ができるので実用的ですね。
サウンド面については、縦のレンジがとにかく広い!再生周波数帯域は7Hz~41kHzまでなので、トラップで重要なキックベースがよく見えます。今までローエンドが出ていないと思っていた曲をSR-L700 MK2でモニタリングしたところ、“こんなに出ていたんだ!”と気付くことができたのは驚きでした。ボーカルはリアルに聴こえ、リバーブテイルの消え際も奇麗に見えます。高域は耳に痛くない自然な聴き心地なので、長時間の作業にも向いているでしょう。真空管式ドライバー・ユニットSRM-700Tとの組み合わせということもあり、“迫力のある元気なサウンド”という印象です。
Products Overview|SR-X9000
4層構造の固定電極“MLER-3”を搭載したフラッグシップモデル。音の透過特性に優れ、不要な共振を徹底的に排除したそう。また極薄スーパー・エンプラフィルムを採用したダイヤフラムの面積は、SR-009Sに比べ20%大型化に成功。より広大なサウンドフィールドを実現した。高い原音再現性を誇るという独自開発の幅広6芯平行ケーブルもポイントだ。
Impression
初めて手に持ってみたときに感じたのは“軽い”ということ。重量が432gなので、長時間付けていても首や肩への負担が少ないです。イヤーパッドは非常に柔らかく、装着していて大変心地よい感触でした。またこちらもリケーブル仕様となっており、2.5mと1.5mのオリジナルケーブルが付属しているため、使用環境によって使い分けできて便利です。
SR-X9000のサウンドは“音像が広く、解像度が高いため各楽器の定位がよく分かる”という印象。音像が広いヘッドホンは“整いすぎた音”になる傾向がありますが、SR-X9000は違います。上下左右前後において広大ですが、音のパンチ感は保たれているんです。そしてダイナミクスも明確に把握できます。例えばシザ「ゴーン・ガール」では、これまでスネアと左右のクラップが同時に鳴っていると思っていましたが、実は3つとも異なるタイミングで鳴っていることに気付けました。これには驚きましたね。ベースとキックのすみ分けもしっかりとモニタリングできるため、ミックスも楽に行えます。クリアな音質を持つSRM-T8000との相性も抜群でした。SR-X9000は、僕がこれまで試したヘッドホンの中で間違いなくベスト! 別格です。今すぐ試聴してみてほしいですね。
DJ WATARAI
【Profile】DJ/トラックメイカー/プロデューサー。これまでにMUROやNitro Microphone Underground、MISIA、DOUBLE、AIなどへ楽曲提供。渋谷HARLEM『MONSTER』のレギュラーDJとしても活動している。