ハードウェア・モデリングから独自の製品まで、多くのプラグインを発表するSOFTUBE。当コーナーでは、プラグインのレビューと併せて、オリジナルのプリセットもダウンロード可能となっています。今回取り上げるのはシンセ・プラグイン、Model 82 Sequencing Mono Synthです!
キックやベースの音作りに活躍するVCF
Model 82 Sequencing Mono Synth(以下Model 82)は、1990年代初期のテクノ・ミュージックの有名ハードウェア・モノ・シンセを再現するソフトウェア・シンセです。そのサウンドの忠実性もさることながら、特徴的なシーケンサー・アルペジエイターの操作性までも緻密に再現されています。
オリジナル機のレイアウトをベースにしつつ、ステレオ・ダブリングやドライブなどの現代的な機能や、画面右端をクリックすると現れる拡張画面(サイド・パネル)にVCFとVCA用のアフタータッチ・コントロールなども搭載。シンプルな作りのユーザー・インターフェースなので、初めて触る方でもすぐに操作可能なデザインだと思います。
では、特に注目したパラメーターの機能をピックアップしていきましょう。画面上部中央にあるSOURCE MIXERはVCOの音量を調節するミキサー。パルス波とノコギリ波、サブ・オシレーター(SUB OSC)、ノイズの4つを調整できるので、とても“1”VCOとは思えないほどです。フィルターは非常にパワフルで、ついVCFのFREQとRESのフェーダーを動かしたくなってしまいます。RESのフェーダーを最大方向に上げていくと、フィルターが自己発振するのはオリジナル機の特徴をまさに再現しているところ。例えば、ハーモニクスの付加、パンチがあるキック、アシッディーなベースなど、ユニークな音作りに大活躍できると思います。
SUB OSCも音が太く優秀。オクターブ切り替えスイッチが搭載されており、楽曲の途中で切り替えてベースの音に変化をつけるなど、面白い使い方ができそうです。
音を広げて存在感を際立たせるDOUBLING
SEQUENCERには、最大100ステップのノートを保存。目で見て分かるシーケンスのプレビューはありませんが、1音ずつノートを入れて、LEGATO(KEYセクションのHOLDボタン)とREST(同じくTRANS-POSEボタン)を活用しながら直感的にフレーズを生成できます。DAWに慣れている人にとっては、どんなフレーズを打ち込んだのかを確認できないのは不便かもしれませんが、その不便さ含め、ビンテージ・シンセを扱っているようなワクワク感を楽しめるでしょう。
右隣にあるARPEGGIOは、HOLDボタンを押しておくとMIDIキーボードなどで弾いた和音からフレーズをリアルタイムに演奏可能。さらにTRANSPOSEボタンを押すと、和音構成はそのまま、キーボード上の音階へワンタッチで移調できます。ダンス・ミュージックのフレーズ作りには、SEQUENCERとARPEGGIOが有効ではないでしょうか。直感的に入力したノートや、偶然弾いたキーボードから発生するシーケンスは、予想外でトリッキーなフレーズを生み出します。
OUTPUTにあるDRIVEは、ファズのようなひずみを加えることができる機能。ノブを最大まで上げても音が汚くなりすぎず、太さのあるひずみを作れます。
その左のノブのDOUBLINGは、オリジナル機には無いModel 82独自の特徴的なパラメーターで、ノブを右に回すほど音が左右に広がり、ステレオ感を生成。モノ・シンセでありながらも気持ち良く左右に音を広げられます。モノラルだったベースやリード・シンセを、コーラスのエフェクトがかかっているように変化させられるなど、音像が広がることで楽曲の中での存在感が際立つように感じました。ぜひDOUBLINGノブを回してその違いを体験してもらいたいです。
音全体としてはオリジナル機と同様のアナログ感、温かみやドライブ感がありながらも、輪郭がはっきりとしているところが持ち味かと思いました。シンプルながらも計り知れないポテンシャルを秘めたModel 82。すべてのダンス・ミュージック・クリエイターが大好きなサウンドで、音作りに一役買ってくれることは間違いないです。
Sakiko Osawa's Presets:Preset #1 -Bass-
ボトムが効いたベース!
SUB OSCをメインにしたボトムが効いたベース・サウンド。サンプル音源では、前半と後半でSUB OSCのオクターブの変化とDOUBLINGのかかり具合を変えてみました。後半の音が太く広がりがあるようになっているので、その違いを感じ取ってみてください。
Sakiko Osawa's Presets:Preset #2 -Lead-
うねりのあるディスコ風のリード!
LFOの速度を速めてトレモロの効果を作ったディスコ風のリード・シンセ。アタックを気持ち遅めにして、PORTAMENTOもかけているので少しうねりのある音になっています。フレーズはSEQUENCEを使用して作り、後半でTRANSPOSEを使ってキーの変化を加えています。
Sakiko Osawa
DJとして、『MUTEK』『りんご音楽祭』『春風』『Re:birth』など国内外のさまざまなクラブやパーティー、フェスに多数出演。ミュージック・ブランド、OIRAN MUSIC設立と同時に、アムステルダムの7 Stars Musicから「Tokyo Disco Beat」で世界配信デビュー。iTunes エレクトロニック アルバム・チャートにて2位を記録する。