新型コロナ・ウィルスの影響で押し進められた ストリーミング・サービスでの音楽ライブ〜Introduction

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新型コロナ・ウィルス(COVID-19)という禍災は、さまざまな人々に影響を与え続けている。音楽業界も大きな打撃を受け、感染リスクが高まってしまう環境として挙げられたライブ・ハウス、そしてそこで演奏を行う予定だったアーティストたちはイベントの中止という決断を迫られた。そんな中、取り上げられたのがライブ・ストリーミング。ファンが集まることなく、自宅からアーティストの生演奏を楽しめる手段として、多くの音楽家たちが実践して話題となっている。編集部はその動向を追い、ライブ・ストリーミングを行ったスタジオやアーティスト、配信プラットフォームへの取材を敢行。日々刻々と状況が変わる中で、今、音楽のライブ・ストリーミングに求められることは何なのか、そして今後アーティストにとってどうあるべき存在なのか、音楽を伝えるライブ・ストリーミングとしてクオリティを高めるにはどうしたらよいのか、この特集を通して迫ってみた。

Text:編集部 Photo:Hiroki Obara

 

音楽業界に今何が起きているのか

 1月、新型コロナ・ウィルスの存在が認められたという報道があった時点では、まだ対岸の火事のことのようにとらえていた人も多いのではないだろうか。2月に入ってからは日本での感染者も増えていき、国内での緊張感も高まっていった。そんな中、多くの人々が集まるイベントや施設の自粛が始まる。明確な基準が無かったことから混乱する人々が多くいたが、2月26日には政府から、多数の人が集まる全国的なスポーツや文化イベントの中止/延期/規模縮小などの対応要請が行われた。

 

 政府からの要請を機に、より多くのイベントが中止となってきたが、特に注目されたのはライブ・ハウスの存在だ。密閉/密接/密集という、いわゆる3密の空間での代表例として行政から名指しされ、それが報道でも取り上げられることに。その結果、各地のライブ・ハウスや音楽イベントの自粛/中止の流れが強まることとなる。全国のライブ・ハウスは運営の危機に立たされ、中には閉店を余儀なくされる店舗も出てきた。ライブ・ハウスを守っていきたいという声が増える中、文化施設への助成金の交付を求める署名運動“#SaveOurPlace”がスタート。ミュージシャンや俳優など多くの著名人も賛同し、3月末の時点で30万以上の署名が集まることとなった。ほかにも、音楽配信サイトOTOTOYのライブ・ハウス支援プロジェクト“Save Our Place”や、事前にドリンク代を購入する支援企画“SAVE THE LIVEHOUSE”など、ライブの場所を守っていこうとする動きは今も増え続けている。

 

 リモート・ワークに切り替え始める企業が増える中、ライブという活動の場を失った音楽家もリモートでのパフォーマンスを行い始めた。ヒップホップ・グループのBAD HOPは、公演が中止となった横浜アリーナで無観客でのライブを開催。YouTube Liveの投げ銭システムとCAMPFIREでのクラウド・ファンディングという形を採った。また、aikoもYouTubeを使いZepp Tokyoから無観客ライブを実施。ほかにも、cero、ASIAN KUNG-FU GENERATION、田島貴男、DEAN FUJIOKAなど、多くのアーティストがライブ・ハウスでの無観客ライブまたはスタジオ・ライブの配信を行った。

 

 

 しかし、日増しに感染者数が増えていき、感染防止のために人との距離を保つソーシャル・ディスタンスという言葉も登場。複数のアーティストやスタッフが集まるようなライブ・ストリーミングは、配信者たちの感染防止のために控えるようになっているのが現状だ。4月7日の東京や大阪などを対象とした緊急事態宣言以降、その流れは一層強まり、アーティストたちは自宅などからスマートフォンを使った配信をするなど、よりパーソナルな空間でのパフォーマンスを行っている。

 

 このように、ライブ・ストリーミングはアーティストとリスナーにとって、これまでよりもはるかに重要な存在となった。オンラインでの活動が中心となってしまった今、ライブ・ストリーミングの在り方を考え直す必要が出てきたのではないだろうか? 新たな表現方法として追求していけば、新型コロナ・ウィルスの感染が収束した後も、ライブ・ストリーミングというコンテンツはアーティストたちに恩恵を与える存在となり得るだろう。

 

浮上するライブ・ストリーミングの収益化問題

 ア ーティストが活動の場としてライブ・ストリーミングに比重を置かざるを得ない現在、収益をどのように得ていくのかは重要な問題となる。2月下旬~3月上旬くらいまで、無償で配信されているライブは多く見受けられた。それは、音楽で人々を元気付けるといったアーティストたちの善意によるものもあったと思う。しかし、この新型コロナ・ウィルスの影響は今後も長く続くだろうということが分かり、しっかりと収益についても考える必要が出てきた。

 

 ライブ・ストリーミングのプラットフォームによってマネタイズの方法は異なるが、よく採られる手法は投げ銭システムだ。YouTube LiveのSuper Chatがそれにあたる。視聴者が任意の金額を支払うことができ、投げ銭をした視聴者は投稿したコメントがハイライトされるなどの特典を得ることが可能。しかし、あくまで投げ銭なので金額は一律ではないし、視聴者が全員支払うわけでもないので安定した収益は得られないのが難点だ。

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YouTube Liveでの投げ銭機能、Super Chat。視聴者は幾つか設定されている金額から任意のものを選んで投げ銭が可能だ。金額に応じて、投稿したコメントがハイライトされる。スマートフォン用アプリからの投げ銭は、スマートフォン・アプリの決済システムが利用される

 

 ほかの手段としては有料チケット制の配信にする方法がある。ZAIKOPeatixなどの電子チケット販売サービスを利用し、その購入者に配信先URLを伝える。通常のライブのような形でチケット収入を得られるが、このような配信プラットフォーム外部での販売は利用規約違反になる場合もあるので注意が必要だ。

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電子チケット販売サービスのZAIKO。チケット販売だけでなく、ZAIKOでのライブ配信ができるサービスもスタートし、3月にはceroが演奏を行った

 また、コミュニティに限定した配信であれば、そのコミュニティの月額会員料で収益を得ることも可能だ。クローズドな環境になってしまうが、一定のファンを抱えているアーティストには有効な手段だろう。投げ銭やオンライン物販などと組み合わせることも考えられる。

 

 現状ではアーティスト側もプラットフォーム側も、ライブ・ストリーミングにおける収益化の最適解を模索している段階だ。これまでライブ・ストリーミングの在り方としては、音源のリリース、ライブやフェスでの演奏といったものよりも重要度の低いサブコンテンツであり、アーティストの主な収益となり得る場ではなかった。さまざまなライブ・ストリーミングが行われている中で、今後アーティストごとに見合ったマネタイズ方法を見つけていく、または配信プラットフォームが新たな方法を提示するということが起きていくだろう。