ボカロPは、どのようにVOCALOIDなどの歌声合成ソフトを使いこなしているのか? 現役ボカロP7名がおすすめのテクニックを紹介。ここでは、すりぃが調声テクニックを解説します。調声のビフォー/アフターを比較できる音源も掲載しているので、ぜひ参考にしてみてください。
テクニック 1:1オクターブ下げたボーカルをレイヤーしてオケ中で埋もれないボーカルを作り出す
◎使用ソフト:
DAW:APPLE Logic Pro
エディター・ソフト:CRYPTON Piapro Studio
音例に使用したボイス・ライブラリー:CRYPTON 鏡音レン V4X
◎調声のビフォー/アフター:
Step❶ 自分が作った曲を聴いたとき、なんだかVOCALOIDのボーカルが薄っぺらい、またはほかの楽器に埋もれて聴き取りづらいなと感じたことがある方は多いと思います。僕も同じように感じていたのでいろいろ研究した結果、あるテクニックを考案しました。なので今回は、そんな薄っぺらいボーカルをしっかりと補強するテクニックを紹介したいと思います。
やり方は簡単です。まずはPiapro Studio上でメインのボーカル・トラックを複製します。画面左端にあるトラックヘッダーをControlキーを押しながらクリック(Windowsの場合は右クリック)して、“トラックを複製”を選択します。すると、メインのボーカル・トラックの下段にコピーしたトラックが生成されます。
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Step❷ 次はこのコピーしたトラックをダブル・クリックし、エディター画面に入ります。ここでは打ち込んだメロディのMIDIノートをすべて選択し、⌘+Shift+下矢印キー(WindowsはCtrl+Shift+下矢印キー)を押します。すると、一瞬で選択したノートがまるごと1オクターブ下に移動できるのです! 手動でノートを下げることもできますが、こちらのほうが簡単かつ速いのでお薦めです。オリジナルのトラックと、1オクターブ下のトラックを重ねる際の音量の割合ですが、方向性としてはオリジナルのトラックがメインとなるようにミックスします。こうすることで、オケ中でもほかの楽器の音に埋もれず、かつ芯のあるボーカルを作り出すことができます。
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テクニック 2:がなり声を生み出すGrowlで楽曲にパンチを加える
◎調声後の音源:
Step❶ もう一つ僕がお薦めしたいテクニックは、“Growl”を使った調声方法。Growlを使うと、うなり声やがなり声を作り出すことができます。ブルースやロックなどでも、たびたび聴くことがあるかもしれません。僕は曲を作る際、実際に歌いながらメロディを考えていくのですが、しゃがれたりひずんだりしたらいいなあと思うところに、このGrowlを使うことが多いです。
Growlは、エディター画面左端にあるパラメーター欄のGrowlをクリックし、画面下段に現れるオートメーショントラックでコントロールすることが可能です。最小値は0、最大値は127となっており、パラメーターが上に行くほど効果が強くなります。値が60を超えてくるとがなり具合がきつくなってくるので、僕の場合は値を50以下にして使用することが多いです。
オートメーションを描く際のポイントは、フレーズの頭にかけること。インパクトのある歌い出しを表現したいとき、歌に何か物足りないなと感じるとき、もっとパンチが欲しいなと思ったときなどにGrowlは役立ちます。まだ使ったことがない人は試してみてください!
すりぃからのアドバイス
新しい音楽を聴いたり映画を見たり絶えず新しいものに触れて曲作りに生かす
僕は普段から人間っぽく聴こえるように調声しようとせず、ロボットと人間の中間を狙っています。それがすりぃっぽいサウンドにつながっていると思うんです。なので自分のイメージ通りに調声するのが最終的なゴールだと考えています。そして、ボカロPになりたいなら“悩むより慣れろ”です。遊んでいるうちにスキルが上達するはずです。既に曲を作っている人は、たくさん作品作りに挑戦してください。そのためには新しい音楽を聴いたり映画を見たりして、インプットすることが必要だと思います。それが、あなたの書く歌詞や音楽になって出てくるので、絶えず新しい“何か”に触れていることが大切なのではないかと思います。
すりぃ
【プロフィール】2018年3月3日ボカロPとして活動開始。時折自身での歌唱や女性ボーカリスト、ねねを迎えた楽曲を発表する。当初より楽曲/詞が高く評価され、ニコニコ動画では伝説入りを達成。作家としてもAdoなどへ楽曲提供を行っている。
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