FABFILTER Twin 3|2020年代生まれのソフト・シンセ12モデルを徹底レビュー

さまざまなメーカーから日々新しい製品が誕生しているソフト・シンセ。しかし数の多さから、まだ十分にその魅力を知られていない製品もしばしば。そこで本企画では、2020年代以降にリリースされたソフト・シンセ12モデルを、シンセに造詣が深い、毛蟹(LIVE LAB.)、Naive Super、林田涼太、深澤秀行の4名が紹介。ここでは、FABFILTER Twin 3を林田涼太がレビューします。

大幅に刷新されたバーチャル・アナログ・シンセ

FABFILTER Twin 3|価格:21,450円 ※エデュケーション版/19,800円、Twin2からのアップグレード版/11,000円

FABFILTER Twin 3|価格:21,450円 ※エデュケーション版/19,800円、Twin2からのアップグレード版/11,000円

Requirements
●Mac:macOS 10.13以降(64ビット)、INTEL/APPLE Siliconプロセッサー
●Windows:Windows Vista/7/8/10/11
●対応フォーマット:AAX/AU/VST/VST3/AudioSuite(AUは64ビットのみ)

概要

 かねてから評価の高かったTwin 2を大幅に刷新して生まれ変わった最新型アナログ・モデリング・シンセの意欲作。GUIやワークフローを全面的に見直し、オシレーターやフィルターまでも新設計になっており、使いやすさとサウンドが大きく向上しています。フィルターやエンベロープなど、動きの分かりづらいパラメーターが常に動的にグラフィックで表示されている部分などは、一度理解すると非常に使いやすいインターフェースではないでしょうか。最大ボイス数も32から64にアップしています。

収録された音色のバリエーション

 プリセットは、通常のリード、パッド系以外にもプラック、FXも充実しており、加えてTwin 2で人気のあったプリセットも受け継がれています。またエレクトロなキックやスネアなど、ドラム系の音色が非常に充実しているのもTwin 3の特徴です。

キャラクター

 アナログ的な響きの中にデジタルのクールさも兼ね備えていて、プリセットの完成度が高いこともあり、ほかのシンセでは出すのが難しそうな音色が多数存在しています。全体的にはシネマティックなものが得意かなという印象。ユニークなものも多く、そもそもの出音の良さが際立っています。

操作性

 最初はカーソルを合わせないと何のパラメーターか表示が分からないものが数多くありますが、10分も触れば慣れてきて誰でも理解可能です。各パラメーターはクリックするとサブウィンドウが開き、さらに細かくパラメーター操作できるものも。特にモジュレーションに関してはソースからデスティネーションへドラッグ&ドロップするとパッチ・ケーブルのように線が出てきて接続できるのが分かりやすくて便利。ソースとなるものは画面下にずらっと並び、好きなものをクリックすると中のパラメーターを調節できます。この辺りは説明書を読まなくても分かるものも多いです。

オシレーター

 基本的にはボイスごとに4つのオシレーターが搭載されています。波形、ピッチ、オシレーター・シンクとボリュームなど、アナログと変わらないパラメーターしか付いていないため、使い方は簡単です。

フィルター/エンベロープ/その他、モジュレーション

 フィルターは4つ。画面中央の上部にフィルター・カーブを目で見ながら調整でき、種類も豊富です。まずフィルターのキャラクターを選ぶボタンがあり、アグレッシブにしたり真空管の質感を出したり、メロウな効きのものなど多種多様なフィルターのキャラクターが用意されています。あとはローパス/ハイパスなどマルチモード型でスロープも−6dB/octから−48dB/octまで選択できるほか、オシレーターに対して複数のフィルターを直列にしたり並列にしたりと、接続方法も変更可能。EQのような使い方もできます。その下にあるエンベロープはADSRタイプにサステインのホールド・タイムが追加されたタイプで下降、上昇のカーブの調整も可能です。モジュレーション・ソースのリストの中にも別のエンベロープがあるほか、モジュラー・シンセにあるようなファンクション・ジェネレーター的なXLFO、ベロシティ、アフター・タッチなどさまざまなものが用意されています。

独自の機能/特徴

 DAWに同期可能なアルペジエイターに加え、エフェクト(リバーブ、ディレイ、コーラス、フェイザー、ドライブ、コンプ)も搭載。MIDI LEARN機能によってMIDIコントローラーからのプラグイン操作も簡単です。

総評

 FABFILTERはもともとプロ御用達のプラグイン・エフェクトで有名になったメーカーなので、内蔵エフェクトを含め音のクオリティが非常に高いシンセだと思います。実機では実現できないフィルターの自由度なども魅力的です。

 

林田涼太
いろはサウンドプロダクションズ代表。録音/ミックス・エンジニアとして、ロックやレゲエ、ヒップホップとさまざまな作品を手掛ける。シンセにも造詣が深く、9dwのサポート(syn)としても活動。

製品情報

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