「SOUNDWARRIOR SW-HP10S」製品レビュー:40mm径ドライバーを搭載する国産の密閉型モニター・ヘッドフォン

SOUNDWARRIORSW-HP10S
 プロ向けのヘッドフォンを中心に開発を行うSOUNDWARRIORが、密閉型モニター・ヘッドフォンのSW-HP10Sを発売した。編集作業用途に開発されていたセミオープン型ヘッドフォンのSW-HP100を以前レビューしたので、これと比較しながらSW-HP10Sの使用感をレビューしていこう。

人間工学に基づいた高精度な調整で
優しく耳にフィットするイア・パッド

 SW-HP10Sの外見は、黒で統一されたシンプルなデザインだ。劣化の少ないナイロン素材のケース・シェルと油性劣化のしにくいポリウレタン性イア・パッドなどによって、耐久性にも優れた構造になっている。イア・パッドの形状や縫い目も特徴的だ。よく見かける一般的な密閉型ヘッドフォンは、密着性や音漏れを防ぐ目的で側頭部を押さえつける傾向がある。しかし、SW-HP10Sは人間工学に基づいたエルゴノミック・デザインのイア・パッドを採用し、圧迫感なく耳にフィットするよう工夫が施されている。耳を隙間なく覆い隠すために、耳の裏にある乳様突起側のクッションが耳たぶ側よりも大きく膨らんでいるのだ。装着したときに耳周りの骨部に均等に圧力がかかるよう高精度な調整がなされている。とても柔らかい材質のクッションをその形に固定するために、頑丈で特殊な編み込みにより丁寧に接着されているのだ。

▲人間工学に基づいたエルゴノミック・デザインのイア・パッド。耳の裏にある乳様突起側のクッションが耳たぶ側よりも大きくふくらんでいるのが分かる ▲人間工学に基づいたエルゴノミック・デザインのイア・パッド。耳の裏にある乳様突起側のクッションが耳たぶ側よりも大きくふくらんでいるのが分かる

 また、左右にわたるコードが露出していないので断線の心配も無い。ちょっとやそっとでは壊れない耐久性抜群なヘッドフォンに仕上がっている。パッと見た第一印象よりも、よく観察していくことで驚くほど精密に計算されているのが分かった。このギャップはとても魅力的だと感じる。

 これまでの構造を含めて、セミオープン型ヘッドフォンのSW-HP100との共通点は多い。一方で、SW-HP100は両出しの着脱式ケーブルを採用しているが、SW-HP10Sは片出しで、リケーブルできない構造になっている。ほかにも両モデルは異なるドライバーを採用している。

キックは密度が高くアタックもあり
ボーカルの輪郭や動きは鮮明に見える

 ここからは実際に、密閉型のSW-HP10Sをセミオープン型のSW-HP100と聴き比べながら特性を見ていこう。

 まずはビートが強くワイド・レンジなヒット・チャート入りしている洋楽のポップスを聴いてみた。SW-HP10Sの方は、SW-HP100ほどワイドにはならないが、楽器一つ一つの粒立ちがくっきりしていて位置がつかみやすい。特にキックの音に重要な50〜70Hz辺りの周波数が締まって聴こえてきて芯を感じる。音が散っていかないので、密度が濃くアタック感もあってメリハリがある印象だ。ボーカルは細かい動きが分かるほど鮮明に輪郭が見えて奥行きも感じられる。

 SW-HP100は反射面が無いような音で、多方向に散っていくようなワイドなサウンドだ。8~12kHz辺りのストリングスやパッドなどは特に透明感があるので、まるで空気に溶け込んでいるかのような音に感じられる。高域に痛いところは無くキックやベースなどの低域には奥行きがあり、全体的にフラットなので非常にバランスが良い。ボーカルのリバーブ感もよく聴こえてきて、空間の3~5kHz辺りの周波数がつややかで伸びがある。

 ハード・ロックやメタルを聴いてみたところSW-HP100はエレキギターのひずみが心地良く、倍音がはっきりと聴こえた。ドラム・パートの余韻を鮮明に聴かせてくれるのでライブのような空気感を楽しむことができる。SW-HP10Sはエレキのひずみがくっきりと聴こえて、ベースやキックの音は迫ってくるように表現が伝わってくる。特にスラップ・ベースやアコギのストロークなど弦を弾くような音も耳に痛くなく、滑らかに聴こえてきた。ジャズやクラシックなどダイナミクスのある音源でも、SW-HP10Sはピアノやアコギの倍音がよく聴こえてきて、厚みがあり芯のある印象である。

 最後に両ヘッドホンでミックスを実践してみた。SW-HP100は8~12kHz辺りの空気感を透明感のある表現に調整したり、リバーブ・タイムやディレイのフィード・バックを正確に設定できる。立体的に聴こえるので、音数の多い楽曲でも位置の振り分けが容易だ。SW-HP10Sはキックやベースなど100Hz以下の周波数が見えやすく、EQ処理がしやすかった。500Hzから5kHzまでのボーカルに立体感や太さを持たせるために、どこの周波数をブーストしてカットすべきかをピンポイントに特定することができる。倍音がよく聴こえるのでひずませるときの微調整にも最適だ。

 どちらのヘッドフォンでも、試しにマスターEQで8~12kHz周辺を過剰にブーストしてみた。すると持ち上がっていることや経過は明確に分かるが耳に痛いと感じない。そのためか耳が疲れないので、長時間のヘッドフォン・ミックスが可能だ。今度は映画やドラマなどに使われるアフレコ編集でも試したが、SW-HP100の方が環境音の中での左右前後を決めるアフレコの位置調整やガンマイクとピンマイクの入れ替わりによる違和感などを自然に調整するのが容易だった。ナレーションの編集でもリップ・ノイズを見つけやすく、吹かれの軽減にも効果を発揮した。

 まとめると、レコーディング時の演奏者側にはSW-HP10Sを用いて、ミックスとアフレコなどの編集作業にはSW-HP100を使用するなど、用途によって使い分けると幅広く効果を発揮する。耳が疲れにくく良質なサウンドで、耐久性にも優れている点から、文句無しの超万能ヘッドフォンと言えるだろう。

サウンド&レコーディング・マガジン 2020年3月号より)

SOUNDWARRIOR
SW-HP10S
13,800円
▪構造:密閉型ダイナミック ▪出力音圧レベル:103dB@1kHz(1mW) ▪周波数特性:20Hz~20kHz ▪最大許容入力:300mW ▪インピーダンス:40Ω ▪ヘッド・バンド:ビニール・レザー ▪プラグ形状:3.5mmステレオ・ミニプラグ ▪ケーブル:片出し ▪重量:280g(ケーブルを含む) ▪付属品:標準プラグアダプター、延長コード(長さ2m)