
50種類の新規インストゥルメントを収録
ローミッドがふくよかなDeluxeキット
今回のSSD5から、オーサライズはiLok認証となりました。インストールを済ませ、起動すると、メイン・パネル左側には上からConstruct Kit、Edit Instrument、Mixer、Mapping、Grooves、Setting、少し離れてInstruments、Samplesというボタンが並んでいます。ここまでがメイン・メニューで、ここで機能を切り替えていくのが操作の基本です。画面下半分にはドラマー側から見たドラム・セットが映し出されます。ただ黒い部屋にドスッとドラム・セットが置かれた無骨な雰囲気が、STEVEN SLATE DRUMSらしくてクールです。
この段階ではまだライブラリーの位置が指定されていないので音は出ません。Setting内のSelect Base Dirより、好みの場所にインストールしたライブラリーを指定しましょう。ライブラリーが認識されるとさまざまなドラム・キットが上部のブラウザーに映し出されます。キットの読み込みに数秒かかりますが、以前と比べ非常にスムーズな印象で、音選びにストレスを感じることはなさそう。音色選択のスピード感はアレンジャーにはとても重要なポイントですのでありがたいです。
まずは自分で作ったMIDIデータを流し込み、収録されているキットの音を順番にすべてチェックしていきました。新たに50種のインストゥルメント(キット)が追加され、キック×103種、スネア×111種、タムが21セット、ハイハット×16種、ライド・シンバル×10種、クラッシュ・シンバル49種、スプラッシュ・シンバル×3種、チャイナ・シンバル×5種、パーカッション×13種、エフェクト音×4種を収録しています。
SSD5で一番気になるのはロック系キット。僕のお薦めは新規に追加されたDeluxe Rock×20種、Deluxe Metal×6種です。どちらもSTEVEN SLATE DRUMSお得意の骨太サウンドですが、想像していたよりバキっと派手ではなく、録ったままのふくよかな音で気に入りました。僕がソフト音源を扱う上で一番大事にしているのがローミッドのふくよかな部分。この部分はEQで足すと不自然になってしまいます。最初の段階から作り込まれたキラキラの良い音源よりも、ふくよかにサンプリングされた音源の方が、ミックスした後の出来上がりが良くなります。この辺りにエンジニアでもあるスティーヴン・スレート氏のこだわりが感じられます。
一方でClassicシリーズのキットは往年のロック・ドラムを意識した音作りとなっており、思わずニヤリとしてしまう音色。こちらは迷わず、そのままの音色ですぐ使えます!
打ち込みの単調さを回避する新エンジン
楽器のマルチマイキングを個別出力可能
もう一点感じたのが、ダイナミクスの表現の素晴らしさです。打ち込みっぽく聴こえてしまう一番の原因は“音が連続したときの単調さ”なのですが、新しいフィジカル・モデリング・ベースのアルゴリズムを採用したSSD5では細かい強弱にしっかり反応してくれて、ハットやスネアの連打、タム回しなどベロシティを調整すればするほど人間がたたいているように聴こえます。特に、フロア・タムとスネアで♪ダダダダダダダダ〜とクレッシェンドするフレーズでは、もしかしたら人間にたたいてもらうより僕らアレンジャーのイメージに近いものを作ることができるのでは?と思ってしまったくらいです。
Edit Instrumentでは、個々のサンプルのボリュームやチューニング、ボリューム・エンベロープ、ベロシティ・カーブ/レンジなどを調整し、お気に入りのキットとして保存することもできます。このセクションでは、ハイハットのショット/ペダルやスネアのリム・ショット/サイド・スティックなどのバランスを細かく調整可能に。例えばスネアのトップとボトムを個別に出力したりといった設定が可能です。またMixerページとは別にマスター・ボリュームが設けられました。これによって全体のベロシティを上げた後に音量を下げるといった調整も行いやすくなっています。


さらに、GroovesページではプリセットされたMIDIパターンを再生可能。気に入ったパターンはDAW上にドラッグ&ドロップできます。打ち込みの苦手な方やアイディアに煮詰まったときなどには助かる機能だと思います。
今回チェックしたSSD5は多機能であるにもかかわらず操作方法もシンプルで、プリセットを選ぶだけで実戦に使用できるレベルのものがたくさん収録されていますし、さらに自分のイメージに近い音を作ることもできます。これは長年ドラムのサンプル作りで特に元音の骨太な音質にこだわり抜いたSTEVEN SLATE DRUMSだからこそできることで、プロ/アマ問わず圧倒的に満足できるクオリティとなっています。自信を持ってお薦めできる音源です。
(サウンド&レコーディング・マガジン 2019年2月号より)