「VIENNA SYMPHONIC LIBRARY Synchron-Ized Chamber Strings」製品レビュー:Vienna Synchron Playerを採用する小編成のストリングス音源

VIENNA SYMPHONIC LIBRARYSynchron-Ized Chamber Strings
今回紹介するのは室内楽ストリングス音源として人気の高い、VIENNA SYMPHONIC LIBRARY Vienna Chamber Strings 1のVienna Synchron Playerバージョン、Synchron-Ized Chamber Stringsです。ドライなストリングス素材をユーザーが細かく作り込むVienna Chamber Strings 1に対して、Synchron-Ized Chamber StringsはIRリバーブを使用した、言わば完成されたストリングス・アンサンブルを手軽に使用できるソフト音源です。Vienna Chamber Strings 1と同じ収録音を使用していて、IRリバーブは同社が新設した大規模なレコーディング・スタジオSynchron Stage Viennaの音響特性を元に作られているとのこと。以前のバージョンよりどのような変化があるのか、使用感と音質面についてチェックしていきたいと思います

厳選されたアーティキュレーション・パッチ
ストリングスに適したエフェクトが充実

Synchron-Ized Chamber Stringsの動作環境はMac OS X 10.10 Yosemite以上、Windows 7の64ビット以上で、AAX/AU/VSTに対応しています。専用ソフトであるSynchron Playerが付属しており、別売りのライセンス管理専用USBキーのVienna Keyがあれば動作します。なお、従来のプレーヤーであるVienna Instruments Proには対応していません。

収録内容は1stバイオリン×6、2ndバイオリン×6、ビオラ×4、チェロ×3、コントラバス×2の小編成で、上質なストリングスの収録音を21のインストゥルメントにまとめたものとなっています。

Vienna Chamber Strings 1に比べてアーティキュレーションのパッチが若干少なくなっています。ですが、使いやすいパッチが厳選されているので、演奏中に迷うことなくパッチを切り替えることができるようになっています。パッチの階層は視覚的に分かりやすく表示されるので、すぐに把握できるでしょう。まずレガートやトレモロ、ピチカートなどのアーティキュレーションを選択する階層に入り、Soft、Normal、Fastといったダイナミクス・タイプ、そしてビブラートの有無……といった感じで出したい音へ感覚的にたどり着けるようになってます。気に入ったパッチができたらオリジナルのプリセットとして保存しておきましょう。ちなみに僕の場合はアーティキュレーション・パッチをトラック別にロードして、全体のバランスを確認しながら調節しています。

▲Articulation→Type→Vibratoとパッチを選択する ▲Articulation→Type→Vibratoとパッチを選択する
▲よく使うパッチを選択した後、画面左のボックスにドラッグ。画面右でプリセット・タブに切り替えてUserフォルダーへ名前を付けて保存する ▲よく使うパッチを選択した後、画面左のボックスにドラッグ。画面右でプリセット・タブに切り替えてUserフォルダーへ名前を付けて保存する

さらに音を作り込んでいきたい場合は、画面下部の設定エリアを活用します。PERFORMタブでベロシティ・クロスフェード(CC 2)やエクスプレッション(CC 11)などを調節することができます。

▲PERFORMタブ。ベロシティやエクスプレッション、ダイナミック・レンジなどの操作項目を用意 ▲PERFORMタブ。ベロシティやエクスプレッション、ダイナミック・レンジなどの操作項目を用意

MIXタブではエフェクトを使用した音作りが可能です。5バンドEQをはじめとして、ディレイ、アルゴリズミック・リバーブ、ストリングス・アンサンブル/オーケストラのポジションに沿ったパノラマ・コントロールなどが用意されています。これらのエフェクトはしっかりストリングスに適した効きになっているので、オーディオ・データ化する前にこちらでしっかり音を作り込むと良い結果が得られるでしょう。

繊細なダイナミクスを持った
周波数レンジ豊かで自然な質感

気になるサウンドの方は、ジャンルを問わずオケに溶け込んでいってくれるような、周波数レンジ豊かでナチュラルな質感です。高品質なサウンドなので、ストリングスだけのアレンジに使っても表情豊かで味わい深いサウンドを奏でられることでしょう。

一方、繊細なダイナミクスも持ち合わせているので、48インストゥルメントを収録したVienna Chamber Strings 1などの大編成音源に、繊細でダイナミックなニュアンスを付け加えてアンサンブル・サウンドの軸を注ぎ込むのにも使えます。ストリングスにコクのあるサウンドの軸を加えると、音色構築の可能性をさらに広げることができます。

小人数編成でありながらも、ストリングスの繊細なニュアンスと演奏性を兼ね備えているソフト音源はかなり珍しいのではないでしょうか? 直感的に操作できるようになっていながら、今までのVIENNA SYMPHONIC LIBRARY製品のサウンド・クオリティを幅広くを踏襲していると言えます。ロードすればすぐに実用的なサウンドが使用できるので、Vienna Chamber Strings1と比べて“作曲モード”にすぐ入れるなぁと感じました。持っておくと間違いなく作曲家の心強い味方になってくれる、良いソフト音源だと言えます。

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サウンド&レコーディング・マガジン 2018年10月号より)

VIENNA SYMPHONIC LIBRARY
Synchron-Ized Chamber Strings
55,600円
【REQUIREMENTS】 ▪Mac:OS X 10.10以降、AAX/AU/VST対応のホスト・アプリケーション ▪Windows:Windows 7以降、AAX/VST対応のホスト・アプリケーション(64ビット) ▪共通 INTEL Core i5/i7/Xeon以上のCPU、8GB以上のRAM(32GB以上を推奨)