
オリジナル・プラグインも収録
より音の解像度が高くなったイコライザー
最新バージョンのTube-Tech Complete Collectionには、Tube-Tech Equalizers MK IIとTube-Tech CL 1B MK II、Tube-Tech Classic Channel MK II、そしてオリジナル・バージョンであるTube-Tech PE 1C、Tube-Tech ME 1B、Tube-Tech CL 1B、Tube-Tech Classic Channelが含まれています。Tube-Tech Equalizers MK IIはTube-Tech PE 1CとTube-Tech ME 1Bが合体してバージョン・アップしたプラグインで、Tube-Tech ClassicChannel MK IIはTube-Tech Equalizers MK IIとTube-Tech CL 1B MK IIが上の画面のように組み合わさり、一つのストリップになったプラグインです。
まずはTube-Tech Equalizers MK IIから見ていきましょう。新しくなったPE 1Cは、20/30/60/100Hzをシェルビングでブースト/アッテネートする低域セクションと、1/1.5/2/3/4/5/8/10/12/16kHzをピーキングでブーストする中高域セクション、そして5/10/20kHzをアッテネートする高域セクションの3つで構成されています。低域セクションのブースト/アッテネートでは、実際アッテネートの方が若干周波数が高くなるため、ブーストしながらアッテネートする変則的な使い方“ザ・ローエンド・トリック”が有名です。
新しくなったME 1Bは、左から0.2/0.3/0.5/0.7/1kHzの中低域ブースト・セクション、0.2/0.3/0.5/0.7/1/1.5/2/3/4/5/7kHzの中高域アッテネート・セクション、そして1.5/2/3/4/5kHzの高域ブースト・セクションの3つで構成されています。これらPULTECタイプの新しいPE 1CとME 1Bには、どちらも実機にはないアウトプット・ゲインを搭載。また、旧バージョンと比べてみると、音色や効き具合はあまり変わりませんが、Tube-Tech Equalizers MK IIの方が音の解像度がかなり高くなったと感じました。
ローカット・フィルターやパラレル・コンプ
M/S処理を新たに搭載
コンプレッサーTube-Tech CL 1B MK IIには、今回サイド・チェイン時において80/220Hzでローカットできるフィルターと、パラレル・コンプレッションのブレンド量を決めるウェット/ドライの機能が追加されました。


それではTube-Tech CL 1B MK IIのパラメーターを見てみましょう。アウトプット・ボリュームはオフ/−10/0/+10/+20/+31dB、レシオは2:1〜10:1、スレッショルドはオフ/0/−10/20/30/41dB。そして、これらは実測値ですがアタックは0.5〜300ms、リリースは50ms〜10sで、それぞれ連続可変です。ちなみに、アタック/リリースの設定値はノブ周りには表示されず、プラグイン画面下部に表示されるので、数値にとらわれることなく音の変化に応じた設定をすることができます。これはハードウェアに近い触り心地を再現しているのでしょう。

リリース・ノブの右側にはアタック/リリースの設定を変更できるノブがあり、設定は3種類。アタック1ms/リリース50msの“fixed”、アタックは0.1msに固定で、リリースはノブの設定値となる“fix./man.”、アタック/リリースともにノブの設定値となる“manual”です。
オリジナルのTube-Tech CL 1Bプラグインは実機のTUBE-TECH CL 1Bよりひずみ感が強く、なかなか実機と同じ気持ちで使えないものでした。今回のTube-Tech CL 1B MK IIはかなり実機に似ており、音だけではどちらがハードウェアでどちらがプラグインなのか判断できないくらいです。また、オリジナルのTube-Tech CL 1Bでは実機のように再現できなかった“ボーカルをうまく聴かせるコンプの使い方”が、Tube-Tech CL 1B MK IIでは可能でした。
個人的には、サイド・チェインのローカット・フィルターとパラレル・コンプレッション用のウェット/ドライ・バランスがとても有効で素晴らしく、実機を超えた使い方が期待できるのではないかと思います。Tube-Tech CL 1B MK IIの“積極的な使い方”をもっと探してみたいと思いました。
最後に試したのは、Tube-Tech CL 1B MK IIとTube-Tech Equalizers MK IIを組み合わせてストリップにしたTube-Tech Classic Channel MK II。これはステレオ使用時のM/S処理ができるようになりました。
レイテンシーとCPU負荷についてですが、AVID Pro Tools | HDXでテストした限りだと、一般的なコンプやEQなどのプラグインと同じくらいの負荷だと言えるでしょう。また、ハードウェアを忠実にモデリングしたプラグインは重いという印象がありますが、Tube-Tech Classic Channel MK IIはプラグイン全体で見ても軽い部類に入ると思います。
以前、私は旧バージョンのTube-Tech Complete Collectionを試して導入していなかったのですが、今回のアップデート版は導入することになるだろうと思います。以前からSOFTUBEのモデリング技術には注目していましたが、今回あらためて試してみて、その進化にとても驚きました。
(サウンド&レコーディング・マガジン 2018年8月号より)