「WAVES PRS SuperModels」製品レビュー:PRSギター・アンプをモデリングし独自の機能を追加したプラグイン

WAVESPRS SuperModels
PAUL REED SMITHとのコラボレーションにより誕生したWAVES PRS SuperModelsは、PRS Archon、最も稀少なPRS Blue Sierra/V9、そして伝説的銘機と名高いPRS PRS Dallasという3つのハイエンド・ギター・アンプをモデリングしたプラグイン。筆者は、ギター・サウンドに関して並々ならぬこだわりがあるので、プロデューサー/ギタリストの視点で詳しく見ていきたいと思います。

スピーカー・キャビネットのIR間で起こる
位相や遅延の問題を自動補正

PRS Archonの画面上部には、サウンドを押し出したいときに使用するブースト・スイッチとペダル・アイコン、クリーン/リード・スイッチ、マスター/デプス/プレゼンス・ノブとチューブ・アイコン、ブライト・スイッチ、各EQとボリューム・ノブを用意。画面下部にはインプット・ノブ、ゲインを自動調節するオート・インプット、ヒス・ノイズなどをフィルターするノイズ・ゲート、8種類のキャビネットIRが選択可能なキャビネット・ローダー、サウンドに空気感を足すエア、デジタル・チューナー、アウトプット・ノブが搭載されています。

PRS Blue Sierra/V9の画面上部には、ブースト・スイッチとペダル・アイコン、ブライト・スイッチ、プリアンプのボリュームと各EQノブ、ゲインのボリューム/アウトプット・ノブとオン/オフ・スイッチ、プレゼンス/マスター・ノブ、チューブ・アイコンが備えられ、画面下部の機能はPRS Archonと同じ仕様です。

続いてPRS Dallasの画面上部には、ブースト・スイッチとペダル・アイコン、ブライト・スイッチ、ボリューム/リバーブ/各EQ/マスター・ノブ、チューブ・アイコンがあり、画面下部の機能はこちらもPRS Archonと同じで、3種共通の仕様となっています。

各画面下段のキャビネット・ローダーの右上にある歯車アイコンをクリックすると、画面中段にキャビネット1/2、それらをまとめるミックス/ボリューム・ノブ、そしてエクスカージョン、プロセスといった設定画面が出現。キャビネット1/2にあるIRブラウザーがあり、IRの読み込みなどが可能となっています。また、プロセス部分にあるタイム・フィックス/フェーズ・フィックス/スマート・ミックスは、2つのIR間で発生する位相や遅延の問題解決、ボリューム調整を自動的に行う機能。これはとても便利だと思います。

▲PRS Archonの画面。中段にはキャビネット・ローダーの設定画面が表示されている。キャビネット1/2のIRブラウザーは、最大同時2つまでのサード・パーティ製スピーカー・キャビネットIRを読み込み可能である ▲PRS Archonの画面。中段にはキャビネット・ローダーの設定画面が表示されている。キャビネット1/2のIRブラウザーは、最大同時2つまでのサード・パーティ製スピーカー・キャビネットIRを読み込み可能である

ふくよかなローミッド
真空管アンプの低域感も再現

試奏にはアンプに合わせてPRSのハムバッカー・モデルと、STタイプの筆者のオーダー・モデルを使いました。

まず最初に試したPRS Archonは、モダンなヘビィ・サウンドが武器である実機をシミュレートしたプラグイン。第一印象は“PRSお得意のサウンド!”といった感じで、ハムバッカーとも相性抜群です。試した感想は“抜群にサウンドの重心が低い!”ということ。ギタリストの多くはハイの“ジャキッ”としたサウンドを求めているため、ハイミッドより上の帯域を強調したプラグインが多く、“弾いていて心地良い音”ではあるのですが“ミックスしやすい音”ではないことも多いです。その点、PRS Archonは生のアンプ録りをしたような、ふくよかなローミッドがしっかり出ているため、ミックスの際でもバンド・サウンドにとてもなじみが良いと思います。

次に試したのはPRS Blue Sierra/V9。実機は3機種の中で唯一未リリース・モデルとのことですが、クリーンからディストーション・サウンドまで幅広い音作りができ、現代的で新しいサウンドのように感じました。特徴的なのはEQの効き具合。ギター・アンプに搭載されているEQとプラグインのEQでは、前者の方が効きが弱く、後者を使用している側からすると若干もの足りなさを感じることがあると思います。しかしPRS Blue Sierra/V9のEQは効きが強めで、DAWユーザー向けに作られているのではないかと思いました。

最後はPRS Dallas。このモデルはクランチやクリーンを得意としていますが、僕が特に気に入ったのはリバーブの質感です。一般のリバーブ・プラグインとはまた違い、“ギタリストが求める残響感”を提供してくれます。ストラト系ギターのフロントや、ハーフ・トーンでのメロウなプレイなどにもバッチリでしょう。

そのほか3機種共通において、筆者のお薦め機能を細かく見ていきましょう。コンパクト・エフェクターのブースターは、物によりブースト帯域が固定されているので、“踏んでいるのに音が抜けてこない”ということが多々あります。PRS SuperModelsに搭載されているブースターは、画面上部のペダル・アイコンをクリックするとシェイプ・ノブが表示され、数種類のブースト・ポイントを選択可能。ソロを弾くときや音色にパンチを加えたいときなどに重宝しそうですね。

筆者が一番気に入ったのは、画面下部にあるオート・インプット機能。ノブの上には2.5/5/10という数字があり、これは入力音量を計測する“秒数”なのです。秒数を設定し、オート・インプット・ボタンをオンにすると、ノブの下のランプが時計回りに変化するので、それが一周し終わるまでギターを弾き続けます。その間に計測された音量により、プラグインが適正なゲイン値を自動設定してくれるのです。演奏するフレーズにふさわしいレベルに調整することができるので、非常に便利な機能だと思います!

PRS SuperModelsは、アンプ系プラグインにありがちなマイクの種類や位置設定、キャビネットのサイズ調整など、エンジニア的な機能を一切排除し、ギタリストでも直感的に操作できるプラグイン。簡単な操作性と複雑な音作りが絶妙なバランスで同居し、ギタリストにとっての“弾く楽しみ”や“音作りの楽しみ”を大切にしていると感じました。真空管アンプの特性である低域感などもしっかり再現されていて、上級者でも満足できるプラグインと言えるでしょう。

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サウンド&レコーディング・マガジン 2018年8月号より)

WAVES
PRS SuperModels
15,500円
【REQUIREMENTS】 ▪Mac:OS X 10.10.5〜10.13.3、INTEL Core I5/I7/Xeonプロセッサー、AU/VST2.4&3/AAX Native(64ビット)、スタンドアローン ▪Windows:Windows 7/8/10(64ビット)、INTEL Core I3/I5/I7/XeonまたはQuad-CoreのAMDプロセッサー、VST2.4&3/AAX Native(64ビット)、スタンドアローン ▪共通:8GB以上のメモリー、1,024×768以上の解像度を持つディスプレイ