同社のReference Goldと同様に
指向性を無段階で調節することが可能
本製品は、伝説のコンデンサー・マイクと言われているSONY C-37Aからインスピレーションを受けて開発されている。デイヴィッド・ジョセフソン氏が手掛けた米国産カプセルを採用し、MANLEYが設計した回路を搭載。さらにマイク・グレードの真空管5670やニッケル・コア仕様のMANLEY Ironトランスフォーマー、低ノイズのスイッチ・モード電源といったこだわりの装備によって構成されている。本製品についてMANLEYは女性ボーカルやサックス、ドラムのオーバーヘッド、バンジョー、リボン・マイク代わりとしてのチョイスなど、さまざまな用途での使用を推奨している。
形状をはじめ既存機と多くの共通スペックを持つ本製品は、リファレンス・マイクロフォン独自のサスペンション・システムが採用されており、カプセル自体がラバー・ショック・マウントに取り付けられている。また、マイクに的確な角度を付けることができるスイベルも付属しており、Tバー・ハンドルによってしっかりと固定することが可能だ。同梱品には同社コンデンサー・マイクの定番であるキャリング・ケースと革製のカプセル・プロテクターを用意。こういったところでも高級感を演出してくる点はさすがMANLEYと言ったところだ。
指向性の調節方法はReference Goldと同様の仕様になっており、ヘッド・バスケット背面に専用のキーを挿してスイッチを回すことで、単一指向から無指向まで無段階で指向性の調整を行うことが可能。注意すべき点は指向性を変更する際に電源をオフにしてケーブルを抜いた状態にする必要があるということ。レコーディングの現場では指向性を頻繁に変えることはないが、できれば聴きながら指向性を変えることが可能になるとさらに便利だとは思った。
豊かな低域でナチュラルなサウンド
録音ソースの質感をしっかりと録音できる
それではテストしていこう。サウンド・チェックにあたって筆者が普段からよく使用しているコンデンサー・マイク、NEUMANN U67を比較用として選択。また、プリアンプにはNEVE 1073を、ADコンバーターにはAVID Pro Tools HD I/Oを使用して録音した。また、今回は単一指向のみでのテストとなっている。
まずはボーカルから試したが、地に足が着いた落ち着きのあるサウンドというのが第一印象だ。低域が豊かで耳障りな硬く感じる帯域が無く、とてもナチュラルなサウンド。それでいながらもしっかりとボーカルの倍音成分を拾ってくれるマイクだ。この価格帯のコンデンサー・マイクはただ派手さの無い地味な音ということはなく、音の芯をとらえた上で余計な派手さが無い、いわゆるピュアな音質。U67に比べると少し音の重心が低い印象なので、派手なポップスやロックに使用するより、ジャズや渋めのブルース、バラードなどに使用する方がキャラクターに合っているだろう。今どきのコンデンサー・マイクはどうしても音作りが派手になる傾向にあるのだが筆者的には、録音ソースの質感をしっかりと録音できる本製品のようなマイクは非常に好印象。料理で例えるなら、変に味を濃くして素材の質感をごまかしているものではなく、素材の味を生かした一流シェフが作る料理と言えよう。
続いてはスチール弦を張ったアコースティック・ギターで試してみる。フォーク・ソング的な軽いストロークやアルペジオにとてもマッチしたサウンドだ。筆者が所有しているMARTIN D18を使用したときには、カントリーにも合っていると感じた。一方、ロック的な強めのブラッシングを多用するようなサウンドにはU67の方がマッチするだろう。少し中域が張り出ているU67は、やはりロックに合うコンデンサー・マイクなのだと再認識した。
次にガット弦が張られたアコースティック・ギターに使用してみたが、これは文句無くベスト・マッチなサウンド。少し低域がふくよか過ぎると感じる場合は、プリアンプ側で余分な低域成分をカットすればベストなガット・サウンドが得られるだろう。もちろんクラシック・ギターにもお薦めできる。
アウトプット・ゲインについても検証した。U67と比べて3dBほど高かったが、それでも既発の2機種と比べると若干低くしてあるとのことだ。また、単一指向でのバック・グラウンド・ノイズが若干大きかったが、これは単一指向使用時における、ダイアフラムの表と裏の混合具合が異なるからだと考えられる。もちろん許容範囲ではあるが、エアコンの排気音やスタジオ外部の音が気になる環境では少し注意が必要かもしれない。
以上、さまざまな用途でチェックしたが、原音を忠実にキャプチャーできる本当に素晴しいマイクであると私は思う。機会があればぜひとも試していただきたい逸品である。
(サウンド&レコーディング・マガジン 2018年8月号より)