最高24ビット/192kHzで録音可能
14種類のUADプラグインをバンドル
まずは外観。オーディオI/Oとしては非常にコンパクトです。適度な重量もあり、持ち運びやすさと作業時の安定感を両立しています。トップ・パネル右側には大きなノブがあり、下にあるPREAMPスイッチまたはMONITORスイッチを押して回すことで入力ゲインとモニター音量を調整可能。そして左側のレベル・インジケーター下には入力切り替えやローカット、48Vファンタム電源、PAD(−20dB)、位相反転、ステレオ・リンクなど、録音に必要なスイッチがそろっています。フロント・パネルにはHi-Z入力端子とヘッドフォン・アウトを装備。ヘッドフォン・アウトはメイン・ミックスとは別にキュー・ミックスを出力可能です。リア・パネルにはXLR/フォーン・コンボ入力端子×2とフォーン出力端子×2、そして業界で最先端を行くThunderbolt 3端子を用意し、なんとバス・パワーで駆動します。ArrowはThunderbolt 3のみ対応なので、使用の前に自身の環境を確認しましょう。
では本題の音の部分です。早速録音してみるとAD/DAが非常に高いクオリティであることが分かります。最高24ビット/192kHzに対応し、クリアでクセの無い音ながら太く豊かな響き。直接挿したベースの音もしっかりと芯のある状態で録れました。これだけ素の録り音が良ければエフェクトの効きも格段に良くなるでしょう。スピーカーやヘッドフォンからの出音も解像度が高く、聴き心地の良い音です。
ArrowにはUADプラグインが14種類バンドルされています。AAX/AU/RTAS/VSTに対応し、Arrowに内蔵されているUAD-2 DSP(1基)で動作可能。コンピューターのCPUに負荷をかけず使用できるのが特徴です。バンドルされているUADプラグインの中で筆者が特に好きなのはPultec Pro EQ Legacy。アナログ感満載の音で、打ち込みのドラム・トラックに挿してキックの低域をブーストすると良い音圧感が出ますし、スネアの中高域を強調させてザラついた質感にすることもできます。生楽器との混ざり方がとても良くなりますね。
また、ArrowはConsoleというソフトウェアも付属し、内蔵ミキサー部をコンピューター上で操作できます。UADプラグインはこのConsoleでも使うことができ、Console上のチャンネル・ストリップにインサートしてかけ録りをすることが可能。DAWを通さずにエフェクトをかけられるので、ほぼゼロ・レイテンシーでのモニタリングができます。また、UADプラグインをかけ録りする/モニター音のみ適用してDAWには素の音を録音する、ということが切り替えられるのがとても便利です。UADプラグインをかけ録りできるのがArrowの魅力の一つですが、“リバーブなどは後で調整したい”というときに切り替えればOKです。
入力部のインピーダンスを変化させて
ビンテージ機材の特性を再現するUnison
Unisonに対応したプラグインも試してみましょう。Unisonは、著名なマイクプリやギター/ベース・アンプをエミュレートしたUADプラグインに使われている技術です。このUnisonに対応したUADプラグインをConsole上で使うことにより、Arrowのマイクプリ/Hi-Z入力部がエミュレート元の実機と同等のインピーダンス特性に変化します。インピーダンスまで実機を再現することでビンテージ機材の微細なニュアンスまで伝わるのです。
Unison対応の付属プラグイン、UA 610-B Tube Preampを使用してアコギを録音してみると、本機だけで録ったとは思えないような豊かな倍音、真空管のウォームなサウンドで録れました。ゲインの上げ方次第でナチュラルなひずみも加わり、この操作感はまさにアナログ機器の領域です!
これだけの機能や高品質のAD/DAが小さな筐体に収められ、レイテンシーを感じずに録音できるというのは驚きです。Arrowをギター・ケースのポケットなどに入れていき、旅先で得たインスピレーションをそのまま高品質な音で録音する……なんて最高ですね。
(サウンド&レコーディング・マガジン 2018年4月号より)