
木製のスキンにかかる4方向の圧力を検知
感度の調整でさまざまな“演奏”が可能
何と言っても目を引くのが“スキン”と呼ばれる手触りの良い木製パネル。この下に仕込まれた高精度の感圧センサーで上下左右の4方向への圧力を検知し、それぞれにアサインされたパラメーターをコントロールします。基本的にはXYパッドやジョイ・スティックなどと似た発想ですが、Touchéのユニークですごいところは指で軽く触れることから、手のひらで深く押し込んだり激しく揺らすことまで、手や指のデリケートかつ複合的なジェスチャーを“演奏”として感知し、コントロール信号に変換し、複雑で表情豊かな変化をサウンドに与えられること。左右は完全に別のアクションですが、上下は中央や両端を押さえることで同時にコントロールできます。
動作モードは本体に保存しておいた24のプリセットを呼び出して使用するスタンドアローン(電源はUSBから供給)と、Mac対応のコントロール・ソフトLié(リエ)によって設定や挙動をコントロールするスレーブ・モードが選択できます。手前にあるエンコーダーは主にスキンの感度調節に使われ、演奏中でも感度を8段階で切り替え可能。軽いタップから激しく押し込む動作まで操作に合わせて瞬時に変更できます。2つのボタンはプログラムやプリセットの切り替えのほか、CCの80と81を扱うことが可能です。またエンコーダーやボタンには8色のカラーLEDが使用されており、感度やプログラムの切り替え時の視認性も良く、デザイン的にもスマートで、触れたくなるような魅力を感じさせます。
VSTiのホストになる専用ソフトLié
パラメーター・アサインも直感的
専用ソフトのLiéはDAW上でVST/AUプラグイン・インストゥルメントとして使用します。またVSTインストルゥメントのホストにもなります。外部ハードウェア用にCCやCVを使うときのための“Hardware”と、Liéの内部にVSTiを呼び込み使用するための“Plugin”という2種類のカテゴリーがあります。また音源に関してはUVI UVI Workstation(付属)を用いたTouché専用サウンドが用意されているほか、多数のソフト/ハードに合わせたプリセットも選択できます。
スキンに対するジェスチャーをTouchéでは“シフティング”と呼ぶのですが、このシフティングに関してさまざまな設定を行うのがLiéの主な役割。一つのプログラムにつきシフティングでコントロールできるのはCC×8、CV×4までで、それらはスロットと呼ばれます。シフティングは上下左右と“左右をセットにしたもの”の合計5つから選択でき、8つのスロットで重複して選択できます。極端な例ですがスロットすべてに下を設定し、8種類の違うパラメーターを同時に変化させることも可能です。また左右をセットにしてオシレーターのピッチをコントロールすると、ギターの弦を左右にゆすってビブラートをかけるような感覚で操作することもできます。
プラグイン・インストゥルメントのパラメーター・アサインはとても簡単で、プラグイン画面上部にあるスロット番号をクリックしてからパラメーターを操作すれば自動的にアサイン。ストレスを感じることなく直感的に操作できます。パラメーターの種類やCCのナンバー以外にスロットごとに設定できるのは、パラメーターの最小/最大値と感度ですが、驚いたのが感度の設定。さまざまなタイプのカーブがあるだけなく、なんと手書き(!)でカーブを描くこともでき、設定を追い込めば自分の指先の感覚にフィットするようにカスタマイズできるのがLiéの魅力であり、Touchéを使うことのだいご味でもあります。
Touchéは今までの鍵盤を中心としたコントローラーを使っていたときよりも、確実にサウンドに有機的な揺らぎや躍動感を与えることができます。またCCなどを利用することにより照明や映像関係など音楽以外の分野でも、新たなアプローチを生み出すツールとして使えるのではないかと思います。“今までない何か”を追求したいと考えているクリエイターにはぜひとも一度触ってもらいたい製品です。



(サウンド&レコーディング・マガジン 2017年9月号より)