「ROLAND SH-01A」製品レビュー:SH-101を再現&拡張したBoutiqueシリーズのシンセ・モジュール

ROLANDSH-01A
もはや次は何が来るのか?と予想するのが、世のオトナたちの密かな楽しみになってきたROLAND Boutiqueシリーズ。そしてとうとう来たか!というのが今回のSH-01Aです。元ネタはもちろんSH-101。1982年に発売されたアナログ・モノフォニック・シンセで、発売当初以上に1990年代になってテクノ系アーティストに評価され、今でも高額で取り引きされているという、TB-303やTRシリーズと同じ系譜をたどっています。

シンプルな電子音を特徴とするSH-101を
ACBテクノロジーで細部まで再現

SH-01Aでまず目につくのは何と言ってもそのデザインですよ。Boutiqueシリーズは筐体が小さくかわいらしいのが特徴の一つですが、SH-01Aのデザインは過去最高の出来と言ってもよいほどその筐体にフィットしている上に、オリジナルのカラー・バリエーションだったグレー、赤、青の3色まできっちりと用意されており、所有欲をそそられます。ちなみこのサイズ感は、SH-101の姉妹機、MC-202(僕も所有しています)にも近く感じました。

早速肝心のサウンドを探ってみましょう。その特徴的なブリっとキレのある音は、AIRAやBoutiqueシリーズでおなじみACBテクノロジーで再現。SH-101と同じ仕様である、1VCO、1VCF、1VCA、1ENV、1LFOにて再現されています。

VCOセクションの右横にはSOURCE MIXERが配置され、ここでパルス波、のこぎり波、サブオシレーター、ノイズをミックスすることができるので、感覚的には1VCOという感じがあまりしません。おのおのに異なるモジュレーションをかけたりはできないので、複雑な音作りには向いていないのかもしれません。が、そのシンプルさこそがまさにSH-101の特色であり、いかにも電子音らしい芯が強くも揺らぎのあるサウンドは、きっとあなたの魂をくすぐることでしょう。

VCFはローパスのみですが、レゾナンスを上げていくと自己発振するところもバッチリ再現されており、ENVはVCAと共有して使用します。ポルタメントはその度合いを調節するつまみに加え、OFF/ON/AUTO(レガート時だけかかる)というモードもレバーで選択できるようになっています。

さらにシーケンサーとアルペジエイターも装備。シーケンサーは100ステップ/64パターンを保存できます。テンポは内蔵クロックのほかに、EXT CLK IN端子にリズム・マシンなどからのクリックを入力しての同期、さらにはLFOのレートで変化させることも可能。LFOの波形をRANDOMにしてVCOやVCFに送り、1音ごとにピッチやフィルターのカットオフが変化するシーケンスを鳴らすことも可能で、とてもセクシーなのです。

4音ポリ化によって厚みある音も可能に
パーカッシブなサウンドも得意

そしてSH-101から進化した部分が幾つかあるのですが、中でも特筆すべきなのは、なんと4音ポリフォニック(!)になったこと。しかも発音方法をMONO/POLY/UNISON/CHORDという4種類のモードから選択可能です。もちろんシーケンサー/アルペジエイターも選択したモードで鳴らすことができ、走らせながらモード切り替えも可能。個人的に気になったのはUNISONモードで、4音がレイヤーされるそのブ厚いサウンドは、まるで脳天杭打ちを食らったかのような衝撃です。また、LFOの波形もノコギリ波/逆ノコギリ波の2種が追加され、モジュレーションの幅が広がっています。そして音色は64種メモリー可能です。

さて、オリジナルのSH-101と言えば、鋭いエンベロープとノイズを使ったパーカッシブなサウンドも有名ですが、このSH-01Aもしかり。アナログライクなパーカッション・サウンドや、VCF自己発振を利用した硬くて重いキックなども簡単に作成可能です。

Boutiqueシリーズではおなじみの電池駆動対応で、内蔵スピーカーも装備。リボン・コントローラーは、シーケンサーやアルペジエイターを走らせながら触っていると思わぬフレーズが飛び出てくることもあり、創作意欲を刺激されるでしょう。また、MIDIはもちろん、CV/Gate OUTも装備され、Boutiqueシリーズのほかのモデルやアナログ・シンセとの連携も抜かりありません。

SH-101を知らない世代には、シンプルな構成がとても分かりやすく、それでいて脳に直接訴えかけるようなエグい音が鳴るこの新機種は、シンセ入門機としても重宝するのではないでしょうか。そして我々SH-101ラバーズもがっつりハマるであろうこのSH-01A。グレーを使い倒すか、レッドで興奮するか、ブルーをかわいがるか……さて、あなたなら、どのカラーにします?

▲レッド・ボディのSH-01A-RD ▲レッド・ボディのSH-01A-RD
▲ブルー・ボディのSH-01A-BU ▲ブルー・ボディのSH-01A-BU
▲リア・パネル。左から電源スイッチ、USB(バス電源/MIDI/オーディオ)、ボリューム・ノブ、ヘッドフォン(ステレオ・ミニ)、アウトプット(ステレオ・ミニ)、ミックス・イン(ステレオ・ミニ)、MIDI OUT&IN ▲リア・パネル。左から電源スイッチ、USB(バス電源/MIDI/オーディオ)、ボリューム・ノブ、ヘッドフォン(ステレオ・ミニ)、アウトプット(ステレオ・ミニ)、ミックス・イン(ステレオ・ミニ)、MIDI OUT&IN
▲底面にはスピーカーと、ミニ・キーボードK-25M(別売)の接続端子が左に、単三電池×4の収納エリアが右に用意されている ▲底面にはスピーカーと、ミニ・キーボードK-25M(別売)の接続端子が左に、単三電池×4の収納エリアが右に用意されている

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サウンド&レコーディング・マガジン 2017年11月号より)

ROLAND
SH-01A
オープン・プライス(市場予想価格46,000円前後)
▪音源方式:ACB(Analog Circuit Behavior)テクノロジー ▪最大同時発音数:4音 ▪メモリー:サウンド・パッチ×64、シーケンサー・パターン×64 ▪シーケンサー:100ステップ/4音ポリフォニック ▪電源:単三電池×4(ニッケル水素充電池またはアルカリ電池)またはUSBバス電源 ▪外形寸法:300(W)×46(H)×128(D)mm ▪重量:965g(電池含む)