
新開発コーンのウーファーを実装
高さや角度が容易に調整可能
CMSシリーズに替わる、Shapeシリーズの中でも一番小さいShape 40。サイズの割には重量感があります。そして、バスレフの代わりにパッシブ・ラジエーターというスピーカー・ユニットが、本体両サイドに装備されています。このラジエーターは、電気的にはつながっていないユニットで、低域の量感をコントロールするもの。なので、Shape 40は密閉型に分類されます。バスレフ型は設置場所との兼ね合いが難しい場合がありますが、本機は周囲の環境にあまり影響なく設置できそうです。実際、壁に付けた状態でも印象があまり変わりませんでした。
メインの2ウェイ・ユニットは、それぞれ25Wのパワー・アンプで駆動。新しいフラックス(亜麻繊維)コーンを用いた4インチのウーファー、アルミニウム/マグネシウム合金の1インチ・ツィーターで構成されています。コントロール系では、250Hz以下を±6dB、デスクトップEQの160Hzでは±3dB、高域の4.5kHzから上を±3dB調整可能。これとは別に、サブウーファーと併用する際のハイパス・フィルター(80Hz)も付いています。
入力は、XLRとRCAピンを装備。別売りの金具で天井や壁面に設置できるのもポイントです。さらに、底面にはネジ式のゴム足が取り付けられています。これは設置面の水平を取るのが容易な上、角度の調整にも使え、前かがみとか、上向きといった設定も可能です。
中低域が前に出るタイトな音
設置場所で印象が変わらない
では音を聴いてみましょう。FOCAL PROFESSIONALは所有/試聴ですべて聴いてきた筆者としては、一聴してこのブランドの音と、良い意味でそこを裏切ってくれた部分とを感じました。従来はレンジも広く奇麗な音で、どちらかと言えば中音域がちょっと引っ込んだ印象でした。しかしShape 40ではその印象が薄れ、音が前に出てきます。高域に関しても、これまでのシャリッという感じからザクッという感じも出るようになりました。低域は非常にタイトで、設置場所を変えてもブーミーになることもなく、場所による補正も本体のEQでコントロールできる印象です。ベースのフレーズの動きもよく見えるようになりました。このサイズでも低域の量感がありながら、ブーミーになっていないのは、パッシブ・ラジエーターが効いているようです。
一方、サイズが小さいので、ROLAND TR-808系キックなど、重低音の長さは実際より短く聴こえる傾向はあります。この部分を重視する方は、サブウーファーを用意すると解決できるでしょう。
また、筆者はスピーカー・チェックで、マスタリング時には気付かなかったある部分がチリチリとひずんでいる音源を聴くことにしています。本機では、そのひずみが同社上位シリーズよりはっきり聴こえます。このひずみはスピーカーによっては聴こえなかったりもするのですが、本機がそこをはっきり出すことができたのはモニターとして使える証拠の一つでしょう。
左右の定位に関しては、音源の位置がよく分かり、はっきりしています。一方で奥行きは、実音が前に出てくる分、やや苦手な面もありますが、制作用モニターとして使えるようにターゲットを狙っているように感じます。音楽ジャンルは問わず、そつなく鳴らしてくれる印象。特に打ち込み系に強いスピーカーが多い中、生音もうまく鳴らせるのはうれしいところです。出音的には素直で、あまり癖を感じさせる音ではありませんので、盛り上がる出音のスピーカーというタイプではないと思います。
これまでFOCAL PROFESSIONALのスピーカーを所有し、仕事で使ってきて”もうちょっとここがこうなれば”と思っていた点が、新しい素材とパッシブ・ラジエーターによって改善されたと感じました。今回は自宅でも気軽に使える一番小さいサイズでしたが、リスニング・ポジションが比較的近いのも都合が良いですね。モニターとして使えるスピーカーを探している方は、一度聴いてみてください。よくまとまっているスピーカーだと思います。


撮影:川村容一
(サウンド&レコーディング・マガジン 2017年9月号より)