
ステレオ2系統の入出力を切り替え
MONO/MUTE/DIMも搭載
初代Big Knobは2005年の発売開始から12年も使われていた人気機種。とうとうモデル・チェンジを果たし、それも3種類が発売となります。上位2機種はマイクプリやオーディオI/O機能も装備した、もはやモニター・コントローラーとは言えないくらいのレベルのものですが、Big Knob Passiveは電源不要のシンプル設計。コンパクトで、価格も実売で1万円を切る、とても手ごろなモデルです。個人的には、本機は電源が不要のパッシブ設計ですので、増幅回路を通らない、無駄なものが付いていないところが特に気になっていました。余計な色付けがされないのであれば買いたいなと、発表時から興味を持っていたので、今回のレビューは楽しみでした。
Big Knob Passiveは、ステレオ2系統の入力とステレオ2系統のモニター・スピーカーを選択/切替が可能。初代Big Knobにはトークバックなどいろいろな機能がありましたが、それらを大幅にカットしてきました。初代には各スピーカーのアウトに個別の音量トリムがあったのですが、それも省略。接点はずいぶん減っていますね。
パネルも、説明不要なほどシンプルな設計です。Big Knobと言えばこれ!という大きなボリューム・ノブが中央にあるのが印象的ですね。その下にL/Rステレオをモノラル化するMONOスイッチ。これはバランスの確認や位相のチェックをするときに便利です。そして出力を止めるMUTE、音量を下げてくれるDIM(−20dB)が並んでいます。小さい音量で確認したいときや、作業中に電話がかかってきたときなど、DIMがあれば便利ですね。MUTEはオーディオI/Oの電源を入れ直したいときなど、突発的なノイズを回避する場合にも使えます。そしてその左側にあるのがインプットを選ぶSOURCE SELECT、右側がモニターを選べるMONITOR SELECTになります。インもアウトも2系統なので、それぞれスイッチひとつでA/Bを切り替えることができます。全部同じスイッチなので統一感があって見た目も良いですね。
リア・パネルにはTRSフォーンの入出力(バランス/アンバランス対応)が並んでいます。インプットのBにはステレオ・ミニ端子も用意されていて、これは便利そう(ステレオ・ミニ側が優先)。ステレオ・ミニのケーブルも付属しています。外のスタジオで、コンピューターやスマートフォンなどのヘッドフォン端子からデモや参考音源をみんなで聴きたい場合があるのですが、わざわざケーブルを出してもらうということもあるので、本機が常に机の上にあってつながっていれば……と考えてしまいました。ピッチ確認用ミニ・キーボードとかもつなげますし、各スタジオにぜひ本機を1台。
すっきりとして色付けが少なくナチュラル
入出力の拡張や持ち運びにも便利
肝心の音は、正直期待していた以上でした。初代Big Knobのふくよかさは無くなり、すっきりした色付けの少ないナチュラルな音です。パッシブ方式だからでしょうか? 上下左右の広がりも良く、詰まった感じもありません。欲を言えば、奥行き感がもう少し見えれば良いかな……というくらいです。
気になったことと言えば、絞り切りから少し音量を上げたときに若干の左右の音量差が見られます。ただ、本当に最初のところなので、ボリュームをこの位置で使い続けることはないでしょうから、許容範囲レベル。この価格を考えたら、優秀過ぎるくらいです。
最近はパワード・モニターを使っている方が多いと思いますが、自宅で使っているとスピーカーのボリュームはほとんど上げられないのではないでしょうか? ボリューム回路はアッテネーターであることが多く、だとすればなるべく上げた状態で使うのが良いと思われます。パワード・モニター側のボリュームをなるべく上げておき、音の変化の少ないBig Knobでコントロールするというやり方は、一度試す価値があると思います。
Big Knob Passiveは机の上に置くにも邪魔にならないですし、コントローラーの無い環境に持ち出すにも小さくてよいと思います。僕は、今使っているモニター・コントローラーの出力系統の分岐に使いたいと考えていたのですが、その用途でも音の変化がほぼ無く好印象でした。今のモニター・コントローラが壊れたときの予備にもなりますし、とりあえず僕は買おうと思います。スピーカーは一組しか使っていない人にも便利ですし、皆さんもいろいろと試して良いところを見つけてほしいです。

撮影:川村容一(トップ・パネル)
(サウンド&レコーディング・マガジン 2017年9月号より)