「TC・HELICON Perform・VK」製品レビュー:入力した楽器のコードからハーモニーを作るボーカル用エフェクター

TC・HELICONPerform・VK
ライブ中において、アーティストが歌とキーボードを同時に演奏しているときに、歌のハーモニーや空間系エフェクトまでもボタン一つで操作できてしまう機材があればとても便利であろう。TC・HELICON Perform・VKはそんなキーボーディスト兼ボーカリストのニーズを満たしてくれるボーカル用エフェクターだ。早速その実力について見ていこう。

オーディオ入力したコードを自動解析
リバーブやエコーなどのエフェクトも搭載

Perform・VKは、本体のマイク・イン(XLR)に入力された音声に対して自動的にハーモニーを付けてくれるボーカル用エフェクター。マイク・スタンドに取り付けるフックが本体左側に備えられている。大きさは手のひらサイズで、非常に軽い。大きなノブが中央に1つあり、その周りに各ボタンが配置されている。シンプルな見た目なので、簡単に基本的な操作が行えそうだ。また、各ボタン上には機能を表す文字が書いてあり、暗闇でも点灯する仕様となっている。本体左側にはHARMONY、REVERB、ECHOなど主要エフェクト・ボタンが並ぶ。各ボタンを押せば音声にエフェクトがかかり、ノブでその量をコントロールできる。

HARMONYは、入力した音声に自動でハーモニーを付けてくれる機能。中央のノブでドライ/ウェットのバランスを、ボタン長押しでバリエーションを変更することができる。また、MIDIキーボードだけでなくライン入力された楽器のコードを解析してハーモニーを生成でき、これが本製品の大きな特徴となっている。例えば、INST INにキーボードを接続して演奏するだけで、弾いているコードをボーカル・ハーモニーとして生成してくれるのである。

EQやダイナミクスを自動設定するTONE
専用アプリでプリセットを多数追加

TONEボタンは入力した音声にEQ、コンプ、ディエッサー、ゲートを自動的に設定してくれる機能だ。まさに“ボタン一つ”でプロのサウンドを実現できる優れものである! 初めは疑心暗鬼だったのだが、実際に試してみると明りょうなボーカル・サウンドになったので驚いた。ライブにおけるボーカルの音作りは、アーティストであれば誰もが苦労していると思う。もっとボーカルを上げたいけれど、PA的にはハウリングしてしまい、逆にバンド全体の音量を下げるとライブ・サウンド自体に迫力がなくなってしまう。TONEで作られた音は聴き取りやすく、余計な帯域が削られている印象だ。つまり、PAにもっと音量を上げてもらえる“整えられた音”だと感じた。さらにPITCHボタンをオンにすると、入力されたピッチに一番近い、正確なピッチへ自動的に補正してくれる。正直、“こんなに楽チンでいいのかな”と思うくらい役立つ機能が満載だ。

ほかにも、ライブ時のハウリングを抑えるANTI-FEEDBACKボタン、MC時には全エフェクトをオフにするTALKボタン、演奏中でもすぐに自分好みの設定に切り替えられる3つのプリセット・ボタンなどが付いている。TALKボタンはオン時には赤に点灯するので“つい押し忘れた”ということも防げそうだ。これだけの実用的な機能があれば、アーティストは面倒なセッティングに困ることなくパフォーマンスに集中することができるであろう。

興味深いのは、iOSデバイス/Android端末専用のPerform・VKアプリから、多数の追加プリセットが転送できるという機能。転送したいプリセットを選択しスマートフォンのスピーカーからTALKボタンの右側にあるマイク穴へ向けて送信音を聴かせるだけで、自動認識する。

そもそも筆者はハードウェアのハーモニー・プロセッサーを初めて触ったのだが、普段DAWで使っている同様の機能が“リアルタイムで”演奏に付いて来るという感覚には驚かされた。ハーモニーを自動生成するというプロセスはDAW上では負荷がかかるため、タイム・ラグに目をつむりながら……ということが多かったのだが、本製品の紹介動画での演奏でも明らかなようにその感度は見事だ(https://youtu.be/1WHqlWTUySo)。手軽に高機能を提供してくれる Perform・VK、一度手にしてみることをお勧めする。

_KPO9410(CMYK) ▲リア・パネル。左から、 USB端子、MIDI IN、ペダル・イン(フォーン)、AUX(ミニ・フォーン)、ライン・アウトL/R、インスト・イン L/R(以上、フォーン)、マイク・イン(XLR)。USB端子はコンピューターと接続し、プリセット管理ができるようになっている
IMG_2520 ▲iOSデバイス/Android端末専用のPerform・VKアプリ。Harmony、HardTune、Megaphoneなど多数のプリセットを本体へ転送できる。また、アプリ内にはGenre、Songs、Favoriteなど項目別に1,000以上のプリセットが収録されている

撮影:川村容一

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サウンド&レコーディング・マガジン 2017年8月号より)

TC・HELICON
Perform・VK
オープン・プライス(市場予想価格:29,800円前後)
▪マイク入力インピーダンス:6.7kΩ(バランス) ▪マイク最大入力レベル:−29dBu〜+2.5dBu ▪AUX最大入力レベル:+2.5dBu ▪INST入力インピーダンス:10kΩ(バランス)、5kΩ(アンバランス) ▪INST最大入力レベル:+5.8dBu ▪最大出力レベル:+14dBu ▪ダイナミック・レンジ:112dB以上(20Hz〜20kHz) ▪周波数特性:20Hz〜20kHz(+0.50/−0dB) ▪ヘッドフォン・アウト:1(フロント・パネルに装備) ▪外形寸法:167(W)×92(H)×170(D)mm ▪重量:480g(本体) ▪付属品:電源アダプター、USBケーブル