
迫力満点なモノフォニック・サウンド
波形の動きを確認できるオシロスコープ
MonologueはVCO1でノコギリ波、三角波、矩形波を、VCO2でノコギリ波、三角波、ノイズ・ジェネレーターを選択可能で、VCO2はオシレーター・シンクとリング・モジュレーターのスイッチ、セント単位で調整できるPITCHノブも付いています。Minilogueのオシレーターは、SHAPEつまみによって三角波、ノコギリ波、矩形波の3種類すべてで倍音を作り出し、独特な波形の変形が行えるという点が大きな特徴でした。MonologueでもそれぞれのオシレーターにSHAPEつまみがあり、感覚的に波形の変化を楽しめるようになっています。このとき、オシロスコープ機能を搭載した有機ELディスプレイに波形が描き出されるのですが、この躍動感には驚いてしまいました。Minilogueでは、ポリフォニックで鳴らすとその中の1音がディスプレイに表示されるという仕組みだったのですが、モノフォニック・シンセになり、制限なく実際の出力をリアルに目で見て楽しめるようになったようです。
演奏していて良いなと感じたのは、VCO1のオクターブ・シフトがマスターのオクターブ・スイッチで行えるようになったこと。Minilogueではマスターとは別に、それぞれのVCOにオクターブ・スイッチがあったので、例えばライブ中、とっさに“1オクターブ上げたい!”と思ったときに、マスターで全体のオクターブを上げるのか、VCOの方で上げるのか、ちょっと迷ってしまうんです。しかし、Monologueではマスターのオクターブ・スイッチで調整すれば間違いないので、シンプルで助かります。また、KORG ARP Odysseyのように、VCO2のシンクをオンにしておけば、ピッチ変更がモジュレーション代わりに使えるので、SHAPEと合わせて変調を楽しめます。VCO1とVCO2がしっかりと組み合わさって太い音を生み出しているのが分かるので、ミキサー部でノイズ・セクションを追加するのではなく、ノイズ・ジェネレーターがVCO2の中にあるというのも、スマートで納得がいきます。
Monologueのフィルター部は、CUTOFFとRESONANCEの2つのつまみのみで構成されているのですが、この潔さが“攻めてるなー!”と、思わずうなってしまうほどのカッコよさ。ここで一度オシレーターをすべて切って、フィルター発振の音を確かめてみます。ああ、なんて気持ちの良いサウンドなのでしょう! この電子音だけでパーカッションを作りたくなります。VCO2をノイズにして、ディケイやフィルターで微調節しながらミックスしていけばキックやスネアがあっという間に完成しました。
16ステップのモーション・シーケンサーで
ノートやつまみの動きを4つまで記憶可能
Monologueのパネルを最初に見たとき、シーケンサーが占める割合が意外と大きいと思ったのですが、最大の魅力はこの16ステップのモーション・シーケンサーだと思います。ノートとともに、つまみの動きを4つまで記憶でき、モーション・シーケンスでフィルターのCUTOFFの変化を16ステップ分入力するだけで、リード・トラックになりうる強烈なシーケンスを作ることができます。
LFOの完成度と使いやすさも群を抜いていると感じました。なんと言ってもFASTにしたときの圧倒的な速さとえぐられるような深さが最高なのですが、発音のときにだけアクセントのような振れ幅が欲しいとき、深くモジュレーションをかけたままでもしっかりとメロディを演奏できる“1SHOT”もLFOのモードとしては珍しく、とても便利で気に入っています。
ほかにはDRIVEつまみの手軽さと凶暴さもぜひ体験してほしいです。これらの操作性の良さと音の良さはすべて“かっこいいシーケンスを作り、常に新しい発想でそれをエディットしていく”ということへ集約されている印象を受けました。E音から始まる25鍵のスリム鍵盤も弾きやすく、リアルタイムでの演奏が楽しいことは言うまでもありません。さらに今回一番驚いたのは、平均律以外の音律を作れるマイクロ・チューニングという機能です。自分のオリジナル・チューニングで曲を作るという試みをさらっと提示してくれるシンセ、かっこいいですね。アルミとウッドをミックスしたスタイリッシュなビジュアルと選べる5種類のカラー、重量1.7kg(電池駆動可!)というコンパクトさも相まって、誰もが手にしたくなるシンセだと思います。今すぐライブで弾いてみたいです!!

(サウンド&レコーディング・マガジン 2017年3月号より)