
単三電池2本で駆動し
固定焦点で最大160度まで撮影可能
本体はとてもコンパクトで扱いやすい大きさ。小さな動画カメラの代表であるところのGoProより一回り大きく、上部にマイクが付いたといった印象です。水平なテーブルなどに置くとやや上向きに角度が付くようになっていて、後述する広角レンズでの撮影に適した角度に三脚なしで設置可能。電源は単三電池を2本使い、本体下部のカバーを開けて装着します(アルカリ/充電式両対応)。記録に使うmicroSDカードのスロットもカバーを開けた電池と同じ場所にあり、頻繁に交換するのは手間なので、できれば容量が大きめのSDカードを使用したいところでしょう。
本体のカメラについてはとにかく撮影できる角度が広くて驚きました。レンズは固定焦点で最大160度まで撮影可能。160度ということはつまりほぼ真横まで撮影できるということになりますので、例えば狭いリハスタなどでも部屋のカドに置けば演奏全体を余裕でカバーできますね。また、左右に広がるイベントやステージの収録にもこのレンズ性能は役立つと思います。とはいえ、ここまで広いとどうしても撮影された映像は魚眼レンズ的にゆがみますので、通常はデジタル・ズームした状態で使用すればある程度ゆがみを抑えた撮影を行うことができます。最近はこうしたレンズによるゆがみを補正するソフトウェアも充実してきているので、サブカメラ兼アンビエンス・マイクのような使い方としては必要十分な性能と言えるでしょう。
マイクは120°XYステレオ方式を採用
シーンに併せたオート・ゲイン機能を搭載
内蔵マイクについてはZOOMらしいとてもクリアな音色でした。120°XYステレオ方式を採用しているため、広めの音場による収音が可能。レンズがこれだけ広角であることを考えるとちょうどいいステレオ・イメージです。
今回はたまたまレビュー期間にギタリストの友人の結婚式に出席したため、Q2Nを会場の隅に設置し収録してみました。近くの自分の会話はほかのざわざわとした背景音に混ざりつつもくっきりとしていて、言葉は十分聴き取ることができました。ギタリストの友人なので当然余興には演奏があるわけですが、音量の大きい演奏シーンでもゲインを自動で調整してくれるため、ひずむことなく奇麗に記録していてくれました(レベルはマニュアルでも調整可能)。このオート・ゲインがとても秀逸で、プリセットが幾つか用意されています。会議の記録のような言葉の聴き取りやすさを優先した“MEETING”、クラシックのコンサートのようなダイナミック・レンジを広く取るようなレベル調整をしてくれる“CONCERT”、その中間くらいの“SOLO”と、用途に応じて選ぶことができます。
こうしたオート・ゲイン機能で重要なのは、第一に収録音声がひずまないことですが、どのモードでも比較的自然なレベル調整をしてくれるので、使える音に自動でしてくれるという印象がありました。そして全体にローノイズ。背景音までくっきりと記録されており、ディテールまで聴き取りやすい音でした。カメラ性能と合わせてマイクやレベル調整についても必要十分な性能を持っていると思います。
そして、現場ではある意味画質/音質よりも重要な場合も多い操作性ですが、本当にシンプルで使いやすいです! 画面に表示された設定項目に対するボタンを押すだけで簡単に設定を切り替えていけます。実際電池とmicroSDカードを本体に入れたら、説明書を一切読むことなくすぐに収録ができました。
ユニークな機能も搭載していて、USBケーブルでPCなどに接続しWebカメラとして、またはUSBマイクとしても使うことが可能です。Q2Nの広角レンズを生かして、大人数でのビデオ・チャットやライブ配信などにも活用できそうです。また、電池を使用しなくても本体のUSB端子からの給電で動作するので、USB充電器やモバイルバッテリーなどにつないで、ライブ会場等での長時間の収録にも活用することができそうです。
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惜しむらくは、本体のディスプレイの解像度が低く少し見づらいこと、給電やデータ転送に使うUSBケーブルなどが付属していないこと(アルカリ乾電池は付属)、レンズ・キャップが無いなどが不便だなと思うところでした。しかし、ここまで解説してきた基本機能の充実度に対してのコスト・パフォーマンスはかなり優秀だと思いますので、多用途のカメラ/オーディオ・レコーダーとして現場に一つあると心強い製品だと思います。


(サウンド&レコーディング・マガジン 2017年2月号より)