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「YAMAHA PX5」製品レビュー:出力性能に優れた回路構成でDSP搭載の2chパワー・アンプ

YAMAHAPX5
YAMAHAからパワー・アンプのPXシリーズが発表された。パワーの異なる4モデルからのラインナップで、ライブ用から設備音響まで幅広いアプリケーションへの対応が可能だ。今回は4モデルの内、PX5でテストをしてみた。

カスタムLSIを用いたクラスDエンジンで
効率的かつ高音質な出力を実現

PXシリーズは4Ωステレオ出力時で1,200W×2の出力を持つPX10、1,050W×2のPX8、800W×2のPX5、500W×2のPX3から成る。PX5とPX3はモノラル出力時にはパワー・ブースト・モードで、より高い出力が可能だ。

全モデルがA/Bの2チャンネル入力を用意している。入力設定は4種類あり、A/Bチャンネルが独立したデュアル・モード、Aチャンネルの入力をA/Bチャンネルへ分配後に信号処理ができるパラレル・モード、Aチャンネルの入力を信号処理後にA/Bチャンネルへ分配できるシングル・モード、A/Bチャンネルの入力をミックスするサム・モードに分けられる。出力設定はフル・レンジ・スピーカーとサブウーファーの組み合わせを15種類のシステム構成で選択でき、さまざまな用途/シチュエーションで使用が可能だ。

入力端子はXLRとフォーンを併装。出力端子はバインディング・ポストに加え、スピコン、フォーンを備えるなど、さまざまな用途に対応可能だ。重量も6.9kg~7.4kgと軽量ながら堅固な作りとなっている。

心臓部にはカスタムLSIを使用した新規設計のクラスDエンジンを搭載。従来のアンプ回路と部品構成を見直し、YAMAHA独自の1チップ設計により、低消費電力、低ノイズ、高音質、高度な保護機能を実現したという。

また、高性能DSPによる柔軟なプロセッシングが本機の最大のポイントだ。アンプ設定はベーシック・モードとアドバンスト・モードに分かれる。操作項目がツリー形式になっており、メイン・ノブを回して各項目を設定していく仕様ではあるが、ベーシック・モードは接続するスピーカーの組み合わせ、フィルター、クロスオーバーを選ぶだけの最小限の設定なので簡単だ。アドバンスト・モードはさらに詳細にわたる設定が可能で、ベーシック・モードに加え、入力信号のルーティング、入力感度/アンプ・ゲイン、スピーカー・インピーダンスを選ぶことができる。

さらに、YAMAHAスピーカー向けのプリセットが充実しており、モデルごとに緻密(ちみつ)にチューニングされた設定が既に組み込まれているため、接続するスピーカーの組み合わせを選ぶだけで最適なセッティングにすることができる。また、接続するスピーカーの用途に最適な周波数特性に設定する“D-CONTOUR”は、FOH、フロア・モニターなどに適したものにすることができ、効果のかかり具合も数値設定で簡単に調整可能だ。

バランスがとれた音質で
ダイナミクスと臨場感を生み出す

今回はオール・スタンディングで150人弱を収容する 弊社ライブ・ハウス(原宿ストロボカフェ)にて試聴。スピーカーはMEYER SOUND UPA-1A+サブウーファーの650-Pを使いテストしてみた。

まずはA/Bチャンネルが独立したデュアル・モードにして、プロセッサーは何も設定せずに確認。音源はコンピューター内のミュージック・ライブラリーからさまざまなジャンルを使用し、ミキサーに経由させて音の鳴りを確かめる。ボリューム・ノブの設定が小さな段階でも、十分なほど低音から高音までレンジが広く聴こえた。キャパシティに耐えられるくらいまでボリューム・ノブを上げて音源を再生させてみると、あたかも目の前でライブ演奏がされているようなダイナミクスと臨場感が得られる。どの帯域も突っ張った感じや癖が無く、バランス良く鳴っているので、EQ処理などのオペレーションもイメージした通りに気持ち良く行えるだろう。

続いてシングル・モードでAチャンネルの入力信号を処理した後にハイボックスとサブウーファーに信号を分配し、確認してみた。本機内蔵のフィルター(HPF/LPF)はしっかりとカットしてくれる印象。周波数ポイントが本機フロント・パネル正面のメイン画面に表示されるので、リハーサルや本番の際にパッと確認できるようになっていて便利だ。

次にCONFIG WIZARD画面にてクロスオーバーの設定を行った。クロスオーバー周波数は80/100/125Hzの3タイプからの選択となり(TUNING画面では20Hz〜20kHzの間で連続的に調整可能)、フル・レンジ・スピーカーとサブウーファーで分ける使い方としては十分。クロスオーバーも自然な印象なので悩まず設定できる。

AMP PRESET画面では、入力感度/ゲイン、周波数などのPXアンプの設定をアンプ・プリセットとして保存可能。本体に8つ分保存できるほか、USBメモリーへのコピーができる。PXシリーズを複数台使用する場合にデータを読み込むだけで設定が完了するので、仕込みの時間を大幅に短縮できるだろう。さまざまなシーンに合わせたカスタマイズの自由度も高い。

UTILITY画面ではパネル・ロック、バックアップ機能、アンプ内の状態が確認できるデバイス・インフォメーション、動作ログの表示などが行える。現場で起こりうるさまざまなトラブルにも迅速に対応できそうだ。

§

簡単に製品が使えるベーシック・モードから、より詳細にチューニングを行えるアドバンスト・モードまで用意されている本機。PAを始めたばかりの方からベテランまで幅広い層に向けて作られており、音質/パワーも素晴らしい。YAMAHAスピーカーを使用するのであれば、最適なチューニングが既に施されているので、最大限のパワーをスピーカーに提供できる製品だ。

▲リア・パネル。左から、入力×2ch(フォーン、XLR)、出力×2ch(フォーン、スピコン、バインディング・ポスト) ▲リア・パネル。左から、入力×2ch(フォーン、XLR)、出力×2ch(フォーン、スピコン、バインディング・ポスト)

サウンド&レコーディング・マガジン 2016年8月号より)

YAMAHA
PX5
オープン・プライス(市場予想価格:72,000円前後)
▪チャンネル数:2 ▪クラスDアンプ出力(ステレオ):500W×2(2Ω)、800W×2(4Ω)、500W×2(8Ω) ▪周波数特性:20Hz〜20kHz(±1dB/1W/8Ω) ▪SN比:100dB(A-weighted/8Ω) ▪THD:0.1%(1kHz、10W) ▪消費電力:230W(1/8出力/ピンク・ノイズ/4Ω) ▪外形寸法:480(W)×88(H)×388(D)mm ▪重量:6.9kg