
専用ソフトウェアAudio Architectでシステム全体の制御や監視が行える
SRX800 Powered Seriesはスピーカー・メーカーの製品だけあり、使用しているスピーカー・ユニットが優れた音質と高い信頼性を備えています。SRX835P Poweredの高域ドライバーは3インチの大型で、環状ポリマー製ダイアフラムを搭載。大型ボイス・コイルをネオジム磁石で駆動させます。低域ドライバーは、2つのボイス・コイルを備えた独自のディファレンシャル・ドライブ方式を採用。中域ドライバーは、同社のライン・アレイ・システムVTX-V20にも搭載されたテクノロジーを元に開発されたそうです。
また、内蔵パワー・アンプはAMCRON製で、クラスDの2,000W(SRX818SP Poweredは1,000W)出力です。アンプ出力段には “LevelMAX”リミッターを装備し、スピーカーの保護をしてくれます。
そして、最大の特徴として、SHARC DSPを内蔵していることが挙げられます。Windows対応の無償ソフトウェア“Audio Architect”、またはAPPLE iPad/Android OS端末用アプリケーション“SRX Connect”から操作することで、音量/コンプレッサー/ディレイ/パラメトリックEQなどの機能をコントロールできます。Audio Architectは固定設備での使用など、より詳細な設定を行いたい場合に便利。Audio Architectで設定した値はプリセットとしてスピーカー内部に保存でき、次回からは本体のみで呼び出すことができます。
ボーカルを自然に再現するハイボックス中規模ライブ・ハウスには十分過ぎるパワー
今回試聴に伺った場所は、このシリーズを日本で始めて導入したライブ・ハウスの両国SUNRIZE。幅が6mほどのステージ両側にSRX835P Powered+828SP Poweredが1/1対向で設置されています。客席はスタンディングで最大250人を収容するそうで、試聴当日は各スピーカーをLANケーブルでコンピューターと接続し、Audio Architectが操作できる状態にしてあります。
まず、いったん調整されたEQなどのセッティングをフラットな状態に戻し、卓からピンク・ノイズを再生してRATIONAL ACOUSTICS Smaartにて周波数特性を見てみます。するとなかなかフラットな特性が見えました。
その後、持ち込んだハイレゾ音源を再生。最初にハイボックスのSRX835P Poweredのみをチェックしました。ワイド・レンジでレスポンスの良い音が聴けます。3インチ高域ドライバーだけでなく、中域ドライバーが加わる3ウェイであることから、ボーカルが自然に再現されていて調整無しでも素晴らしい音色です。
次にサブウーファーのSRX828SP Poweredを追加して先ほどと同じレベル設定で聴いてみました。この場合は重なっている帯域が多いため、調整せずには満足した状態にできません。しかし出力の具合から、AMCRON製のパワー・アンプの良さを十分に感じられました。
試しにAudio ArchitectのパラメトリックEQを使用して調整してみます。直感的に操作しやすく、3ポイントほど補正するだけで聴きやすく調整できました。
最後にAudio Architect上で、今回のスピーカーの組み合わせに適合したメーカー・プリセットにしてみました。SRX835P Poweredをローカットして、SRX828SP Poweredが60Hz以下の再生です。するとEQの調整をせずとも素晴らしい音が再生されました! 音量も十分で、パワー・アンプのメーターもコンピューター上で見るとまだまだ余裕がありそう。再生音源とライブでの音圧は比べにくいですが、これでも十分過ぎるくらいでした。アコースティック・ライブを中心に行うお店なら、SRX835P Poweredのみで足りるはずです。とてもナチュラルな出音と、ボーカルを自然に再現してくれるのでぴったりではないしょうか。
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SRX800 Powered Seriesは入力レベルや位相反転の操作、EQ設定までリモート操作できるAMCRON製のパワー・アンプ内蔵で、コスト・パフォーマンスに優れています。新規機材を検討されているライブ・ハウスならば間違いなくその選択肢に入れるべきシステムでしょう。


製品サイト:http://proaudiosales.hibino.co.jp/jblpro/3459.html
(サウンド&レコーディング・マガジン 2016年8月号より)