
DCI Series Networkとの組み合わせで 最大限の性能を発揮
JBLと言えば、アメリカ老舗のオーディオ・ブランド。スタジオ・モニターとしてだけでなく映画館の多くでメイン・スピーカーに採用され、オーディオ・マニアの間でも愛好者が多くその名は広く知られています。現代の制作現場のニーズに合わせてリリースされたLSR 7 Seriesは、極めてコンパクトな作りで、ターゲットはプライベート・スタジオ。コンパクトな理由の一つにパッシブ型というのもあり、本体重量を大幅に軽減しています。実際にLSR708Iは12kg、LSR705Iは4.4kgとかなり軽く、持った印象では、YAMAHA NS-10Mとさほど変わらない。大きさを見てみるとLSR708Iはスタジオの卓上に置くのにちょうど良いサイズ感です。一方LSR705Iはかなりコンパクトで、GENELEC 2029Aとほぼ同じくらいと言えば分かりやすいでしょうか。 LSR 7 Seriesはパッシブ型なため、アンプを別途用意しなければいけません。最大限の性能を発揮するために、AMCRONのパワー・アンプであるDCI Series Net workとの組み合わせが推奨されています。今回は、そのセットアップでレビューすることになりました。 DCI Series Networkは、Windows上で“Audio Architect”というソフトウェアを使い、EQや既に登録してあるプリセットを読み込むことで音場を簡単に調整できます(画面①)。

スピーカーの性能やキャラクターも重要ですが、今回パーソナル・スタジオ向けに作った理由はここにあるような気がします。ソフトウェア上では、部屋に合わせた音場をイコライザーで補正して、スピーカー本来の性能を引き出すことができるのです。もちろん、EQポイントやその上げ幅下げ幅を細かく調整することも可能なので、気に入るまで追い込むこともできます。さらに発展性を考えるのであれば、マルチチャンネルのシステムを構成する場合、このソフトウェア上で一元管理が簡単にできるでしょう。
高域は両機種とも36kHzまで伸び リスニング・ポイントは広めに設定
スピーカーのもう一つの“売り”になっている原音の再現性。その再現性を高めるために、1インチ環状ポリマー製ダイアフラムが新たに開発されました。これを搭載したコンプレッション・ドライバーを採用することによって、両モデルとも36kHzまで伸びる高域特性を獲得。指向性は従来ほど強くなく、リスニング・ポイントが広めに設定されているので、センターをある程度外した場所でも同じような聴き方ができます。エンジニアと同部屋後方に居る人とのリスニング誤差をなくすことが可能なのです。 実際に、歌モノ、打ち込み、オケと、ジャンル違いの音源をそれぞれ聴いてみました。LSR708Iはパッと聴いただけでも解像度がかなり高いことが分かります! パワーもそこそこ入り、バスレフのポートが前面に付いていますがダブつく低域感もなく明りょう。歌モノにかかったリバーブ感の尾ひれや子音がキツく聴こえることなく、作業しやすい印象です。またレベルを大きめに入れてモニターした際、ROLAND TR-808/909系のキック・サウンドの輪郭も張り付いて見えなくなることはなく、しっかりとした再生音で好印象でした。特に良かったのがオケの奥行き感。これはJBLが今まで培ってきた技術なのか、優しいJBLらしい自然な音です。 続けてLSR705Iで試聴してみると、見た目に反してかなりの音量が出せることに驚きました! 解像度はLSR708Iより多少落ちる印象ですが、音の傾向は大きく変わりません。全体的に、最近のスピーカーに見られるシルキーな高域/低域特性ではなく、あくまで自然な鳴りでの解像度と低域の明りょう度の高さでした。この大きさでこのポテンシャルを得られるなら、導入の選択肢の一つに加えても良いかもしれません。今後パワード・タイプも発売予定ということで、市場での期待は高そうです。
製品サイト:http://proaudiosales.hibino.co.jp/information/3385.html
(サウンド&レコーディング・マガジン 2016年6月号より)