「DAVE SMITH INSTRUMENTS Sequential Prophet-6 Module」製品レビュー:6ボイス仕様アナログ・ポリシンセのモジュール・バージョン

DAVE SMITH INSTRUMENTSSequential Prophet-6 Module
SEQUENTIALの商標がデイヴ・スミス氏のもとに返還されることになり、その名を冠したProphet-6が誕生したのが昨年のこと。今度はそのモジュール・バージョンが登場しました。見た目もかのProphet-5を相当意識したものとなっており、いやが上にも期待が高まります。早速レビューしていきましょう。

コンパクトなボディに機能を凝縮
伝統の“SYNC”“POLY MOD”も搭載

まず外観ですが、つまみがたくさんついている割にコンパクトで、中身が詰まっている感じがします。つまみはオリジナルのProphet-5のものを小型化したようなデザインで、スイッチ類のレトロな形状もそそります。個人的にはあえて液晶画面を搭載していないところも好みです。

シンセサイザー部は6ボイスのポリフォニック仕様で完全アナログ。1ボイスごとにディスクリートの2オシレーター、独立したハイパス/ローパスのレゾナント・フィルター、VCA、2基のエンベロープ・ジェネレーター(ADSR)、1LFOを用意。それに加えて64ステップのシーケンサー/アルペジエイター、デジタルのマルチエフェクターなどが搭載されています。エフェクターを通ることでAD/DA変換されてしまうわけですが、オフにするとトゥルー・バイパスになる設計。サウンド・バンクは読み込み専用が500プログラムで、Prophet-5のプリセットを手掛けたジョン・ボーエン氏の手による音色を収録。加えてユーザー・バンクが500で、計1,000プログラムが扱えます。アナログ・シンセの宿命であるチューニングですが、Prophet-5同様ボタン操作でオート・チューニングできますので、安定するまではこの操作を繰り返すといいでしょう。“UNISON”ボタンを押すと6ボイスすべてを同時に発音させられますが、その際“SLOP”ノブでビンテージ・シンセ特有のピッチのバラつきを故意に作り出すことができ、かなり分厚いサウンドになります。

トップ・パネルの操作系を見ていきましょう。VCOのピッチは半音階ずつの可変で、“FREQUENCY”を回すと現在の音名がLED画面に表示されるので、チューナーが無くても正しいピッチに合わせられます。波形は三角波、ノコギリ波、矩形波が“SHAPE”ノブで連続可変、パルス幅も0〜100%まで調整可能です。OSCILLATOR 2は“LO FREQ”でLFOに切り替えられ、キーボードと切り離してピッチを固定させる“KEYBD”機能もあります。さらにProphet伝統の“SYNC”も搭載しており、波形が可変であること以外はProphet-5と同じ仕様と言えます。フィルターはハイパス/ローパスの操作系が独立しており、それぞれにレゾナンスが用意されているため、かなり過激なフィルタリングが可能。フィルター・エンベロープは正相/逆相が切り替えられるほか、ボタン一発でベロシティに追随。キーボード・トラッキングもOFF(0%)/HALF(50%)/FULL(100%)の3段階から選べ、フィルターを発振させた状態でこれをFULLにすると発振音で正確に12音階を奏でられるようになります。エンベロープはフィルター用も含め一般的なADSRタイプですが、つまみを回した際のタイム感はデイヴ・スミス氏設計のシンセに共通する特有の感覚があり、使いやすいです。

もう1つのProphetシリーズのお家芸である“POLY MOD”も健在。フィルター・エンベロープとOSCILLATOR 2をソースとして、FREQ 1/SHAPE 1/PW 1/LPF/HPFに対してモジュレーションがかけられます。SHAPE 1に適用できる効果はこれまでに無かったもので、まるでウェーブテーブルのよう。LFOは波形が5種類あり、2つのオシレーターに対するピッチ・モジュレーションを個別にON/OFFできるので、YMOフリークがやりたくてうずうずしてしまう、“片方のオシレーターにだけビブラートをかける”ギミックも再現可能です。

S/Nに優れた品の良い音色
“使える音”がバンバン出てくる

エフェクト・セクションは24ビット/48kHzで内部処理されており、ディレイ/コーラス/フェイザー/リバーブから2種類を同時にかけられます。シンセになじみのよいビンテージライクな効果がそろっており、スタジオ・クオリティと言えます。ディレイはMIDIクロックに同期でき、“CLOCK SYNC”ボタンを押すとタイムのパラメーターが音符の表示に変わります。

シーケンサー・セクションは1トラック/64ステップのポリフォニック仕様。ボイス数の制限内であれば、シーケンサーを走らせつつ鍵盤で演奏を重ねることもできますから、かなり凝ったプレイができると思います。プログラミングはステップ入力で、まず右上の“RECORD”を押し、記憶させる鍵盤を順番に押していくスタイル。さらにプレイバック時にRECORDを押しながら鍵盤を押さえると、中央のCを基準としてシーケンスをトランスポーズすることもできます。アルペジエイターはシーケンサーとの切り替えになりますが、オクターブ・レンジとモードを変更でき、パネル左下の“HOLD”を押せば、手を離しても演奏が止まらない“ラッチ”モードになります。

肝心のサウンドですが、非常に良くできており、適当な操作でも“使える音”がバンバン出てくる感じです。Prophet '08との比較では、音の傾向としてはよく似ているものの、Prophet-6の方が若干落ち着いた印象を受けました。S/Nが良く、低域も品良くまとめられていますが、フィルターを閉じた際の音の表情の変化にはビンテージらしさを感じます。モッサリ感が無い分音作りの幅が広く、何よりオケに埋もれない存在感のある出音が印象的。音作りに関係する操作子は全部パネル上に出ているので、操作が分かりやすいところもポイント高いです。アナログ・シンセの使い方が分かっている方であれば、マニュアルを読まなくても9割は理解できるでしょう。

▲リア・パネル。左より電源端子、USB 2.0端子、MIDI IN/OUT/THRU、フット・スイッチ用のSEQUENCE、SUSTAIN(共にフォーン)、外部ペダル用のVOLUME、LP FILTER(共にフォーン)、右がアナログ出力L/R(フォーン)、ヘッドフォン端子 ▲リア・パネル。左より電源端子、USB 2.0端子、MIDI IN/OUT/THRU、フット・スイッチ用のSEQUENCE、SUSTAIN(共にフォーン)、外部ペダル用のVOLUME、LP FILTER(共にフォーン)、右がアナログ出力L/R(フォーン)、ヘッドフォン端子

製品サイト:http://www.fukusan.com/products/DSI/prophet6module.html

サウンド&レコーディング・マガジン 2016年5月号より)

DAVE SMITH INSTRUMENTS
Sequential Prophet-6 Module
オープン・プライス(市場予想価格:318,000円前後)
▪音源方式:アナログ ▪ボイス数:6 ▪オシレーター構成:1ボイスにつき2基のディスクリートVCO ▪オシレーター波形:三角波〜ノコギリ波〜矩形波(連続可変)+サブオシレーター(三角波) ▪ハイパス・フィルター:2ポール ▪ローパス・フィルター:4ポール(自己発振可能) ▪外形寸法:540(W)×112(H)×189(D)mm ▪重量:5.9kg