「YAMAHA EMX2」製品レビュー:持ち運びに便利な10ch入力のコンパクト・パワード・ミキサー

YAMAHAEMX2
レビューの話をいただいたタイミングで、1日の限られた時間の中で数店舗を回るインストア・イベントの仕事がちょうど良く舞い込みました。ステージ環境を変えずにセットアップを楽にするには、機材を持ち込むのが良い方法の一つです。YAMAHA EMX2はコンパクトなパワード・ミキサーで、持ち運びに便利。早速今回のシチュエーションで本機の実力を試していきましょう。

フットワークの良さを感じられる
EMXシリーズの最軽量モデル

まず、本機のサイズは375(W)×147(H)×220(D)mmでコンパクト! パワード・ミキサーの“EMXシリーズ”の中でも、最も小さなモデルになっています。以前、EMX512SCをリハスタなどで何度か触ったことがありますが、本機はさらに機能が洗練され、重さ4.2kgというさらなる軽量化でフットワークの良さを感じられます。

また、本機は小型ながらも計10chの入力を搭載。モノラルのCH1、2(XLR)とCH3、4(XLR/フォーン・コンボ)はMIC/LINEのゲインを切り替え可能で、CH1、2はファンタム電源に対応しています。ステレオは、CH5/6(フォーン)、CH7/8(フォーン/RCA)、CH9/10(フォーン、ステレオ・ミニ)の3系統を用意。各チャンネルに3バンドのEQを実装し、モノラル・チャンネルにはリバーブのセンド・ボリュームを搭載。ステレオ・チャンネルにはモノラル/ステレオの出力切り替えスイッチが装備されています。

出力部に関しては、任意で4Ω/8Ωの切り替えが可能なスピーカー・アウト(フォーン)を搭載し、最大出力は250W+250W(4Ω)となっています。また、SUBWOOFER OUT(フォーン)というモノラル・アウトを装備しているので、サブウーファーを追加したい場合はすぐに接続可能です。

ひずみ感のないまとまりあるサウンド
リバーブ・タイムを容易に調整可能

今回の現場は店舗のイベント・スペースで行うカラオケと言えるものです。インプット回線はワイアレス受信機とMC用のマイクSHURE SM58、CH7/8のRCAピンにCDプレーヤーを接続。そして会場常設の10インチのスピーカーが8Ωと確認した上で、本機のアウトプットと接続。セッティングはこれで終了です。

SM58を入力したチャンネルのゲイン・スイッチをMICにし、まずはマスターEQを12時位置のMUSIC、マスター・レベルを12時位置に設定し、チャンネル・レベルを徐々に上げていきます。2時位置でちょうど良い音量感を得られました。この状態でマスターEQをSPEECHに回すとローエンドが少なくなり、明りょう度が上がって来ます。もちろんBASS BOOSTの方にするとローエンドが上がって来て、ブンブンしたサウンド・キャラクターになっていきますね。この無段階可変式のEQは微妙な低音感を再現できるので、かなり使えると思います!

本機はパワーもさることながら、音質もひずみ感がなく好印象です。シャキシャキしていたり、モッタリしたところがなく、実に音楽的でまとまりがあります。

次に、スイッチを押すだけでハウリングを抑えることができるというFEEDBACK SUPPRESSORの効果を試すため、接続したマイク4本のレベルを少しずつ上げていき、わざとハウリングを起こしていきます。スイッチを入れると、原音を邪魔しないくらいQ幅の狭い“ノッチ・フィルター”が最大7ポイントのハウリング・ポイントを検出し、自動でカットしてくれます。これならば急なハウリングも怖くありません。これでハウリング・マージンを十分稼げました!

次にリバーブを試してみます。まずはPLATEに設定してみますと、さすが!YAMAHAらしいというか、キラキラとした広がりのある奇麗なリバーブがかかります。しかもツマミを回すほどにリバーブ・タイムが変化するので、操作は非常に簡単です。試しにHALLに回してみると、PLATE時より奥行きが足され、深みのあるリバーブが再現されました。とても簡易タイプのエフェクトとは思えないですね。バラードの際はリバーブ・タイムを伸ばしたりなどという調節をとても容易に行えました。また、ちょっとしたことかもしれませんが、この価格帯のミキサーではあまり装備されていないエフェクトのオン/オフ・スイッチが付いている点が、本番中にミュートをよくする筆者にはとてもうれしいです!

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PAエンジニアはリハーサルと本番での音場の違いに素早く対応しないといけません。本機はその調整を高品位、かつスピーディに行えるもので、ベストなサウンドを誰でも簡単に完成させられるアイテムだと思います。今後いろいろな会場に普及しそうな予感がしますね。

▲リバーブは1つのツマミを回してタイプを切り替える方式で、HALL/PLATE/ROOM/ECHOから選択できる。また、REVERB ONスイッチにより、エフェクトのオン/オフを瞬時に切り替え可能。マスターEQはスピーチから音楽再生まで、1つのツマミを回すだけで、用途に合わせてスピーカー音質の設定を最適化できる ▲リバーブは1つのツマミを回してタイプを切り替える方式で、HALL/PLATE/ROOM/ECHOから選択できる。また、REVERB ONスイッチにより、エフェクトのオン/オフを瞬時に切り替え可能。マスターEQはスピーチから音楽再生まで、1つのツマミを回すだけで、用途に合わせてスピーカー音質の設定を最適化できる

サウンド&レコーディング・マガジン 2016年4月号より)

YAMAHA
EMX2
オープン・プライス(市場予想価格:45,000円前後)
▪最大出力:250W+250W(4Ω) ▪周波数特性:40Hz〜20kHz(to SPEAKERS OUT)、20Hz〜20kHz(to MONITOR OUT) ▪全高調波ひずみ率:0.2%(@13.8W/to SPEAKERS OUT)、0.05%(@+10dBuW/to MONITOR OUT) ▪クロストーク:−80dB ▪消費電力:90W ▪外形寸法:375(W)×147(H)×220(D)mm ▪重量:4.2kg