SURFY INDUSTRIES Surfybear Classic V2.0 レビュー:1960年代の名機をJFETで再現した4本タイプのスプリング・リバーブ

SURFY INDUSTRIES Surfybear Classic V2.0 レビュー:1960年代の名機をJFETで再現した4本タイプのスプリング・リバーブ

 ビンテージの名機を規範としてギター・エフェクターを製作しているSURFY INDUSTRIES。Surfybear Classic V2.0もそのひとつで、数種あるSurfybearシリーズのトップライン・モデルです。FENDERのギター・アンプに搭載されている歴史的スプリング・リバーブ・ユニット6G15と同様のコントロールで、チューブをJFETトランジスターに置き換えて再現するという構想から始まったSurfybear。実際のサウンドや使用感を主にミックス・エンジニア目線でレビューしたいと思います。

ノイズがほとんどなく現代の仕様に対応。サウンドにはザラつきがあり立体的な質感

 カラーはブロンド(メイン写真)、ブラック、ブラウン、LIMTED EDITIONのツイード。色を選べるのは非常に楽しいですね。大きさはミニ鍵盤くらい(幅450mm)で重くないので、場所を選ばずに使えます。持ち運び用にナイロン・バッグも付属しており、移動が多い方でも安心です。

ブラック

ブラック

ブラウン

ブラウン

ツイード(数量限定モデル)

ツイード(数量限定モデル)

 電源は付属の12Vアダプターを使います。エンクロージャー・ボディは木製。ボトム・カバーは外音のノイズや干渉を最大限避けるためにスチール製となっています。端子やスイッチはSWITCH CRAFT製で、確かな品質と耐久性(とても大切)が期待できそうです。

 Surfy Panと銘打たれたリバーブ・パンはACCUTRONICSタイプの4本スプリングのもの。ACCUTRONICS 4AB3C1Bリバーブ・パンをさらに1960年代の感じに寄せるため、同社に相談しディケイなどをカスタムしてもらったことからも、SURFY INDUSTRIESの並々ならぬ情熱を感じます。

リバーブ・パンはSurfy Panと銘打たれ、ACCUTRONICSタイプの4本スプリングのものを採用している

リバーブ・パンはSurfy Panと銘打たれ、ACCUTRONICSタイプの4本スプリングのものを採用している

 操作ノブは6G15と同じく3つ。左からTONE(サウンドの明るさ調整)、MIXER(原音とエフェクト音のブレンド)、DWELL(エフェクト量の調整)。ノブはすべて連続可変式です。本体左面には外部フット・スイッチ用1/4インチ・フォーン端子を搭載。SURFY INDUSTRIESからはMIXERノブ搭載のペタル・スイッチSurfydrip Switchが別売りされていますが、一般的なフット・スイッチも使用可能です。

 それでは、実際のミックス作業で試していきます。オーディオ・インターフェースの出力からリアンプ・ボックス経由でSurfybear Classic V2.0に入力し、OUT端子からDIインのあるマイク/ライン・アンプ経由でオーディオ・インターフェースに戻すルーティングで接続しました。

 まずは電源オンしてヘッドフォンでノイズ・チェック。スプリング・リバーブ=ノイズが多い、というイメージが筆者にはありましたが、さすが現行品。ノイズはほとんどなく現代の仕様に対応できるSN比でした。

 1ch仕様なので、モノラルの音源に使います。ちょうどトランペット・ソロにハマるリバーブを探していたので、早速使用したところバッチリでした。リバーブ・サウンドは、古くさい感じはないけれども、ザラついた質感が感じられて立体的。また、モノラルだからということもありますが、リバーブが広がり過ぎず高域も散ることなくで、あらためてモノラル・リバーブの威力、存在感を確認できました。リバーブ・タイムやプリディレイなど細かい設定はできませんが、そこが気にならなくなる音の説得力はさすがです。

ジャンルを選ばず解像度の高いサウンド。薄くかけてミックスになじませるのが効果的

 次にギター、歌、スネアにも使用。言うまでもなくバッチリでした。“これぞスプリング・リバーブ!”的なビャンビャンな使い方もキャラが立って面白いですが、薄くかけてミックスになじませるような使い方が大変効果的でした。TONEの効きも分かりやすく、濃過ぎず薄過ぎずの質感はジャンルを選ばず使えそうです。また、ビンテージのスプリング・リバーブよりもディケイの切れ端の感じなどが明確で扱いやすく、サウンドの解像度も高い印象でした。

 ところで、このSurfybear Classic V2.0はトゥルー・バイパスではなく、100%ドライでも回路を通るようになっており、通した時点で音が少しだけザラついてキリッとなる変化がありました。細くなった感じではなく、いい具合に回路を通ってリバーブ乗りが良くなったような音のイメージです。1960年代の匂いも少し感じました。それもあってか、DAW内で伝統的にセンド&リターンで使うよりは、トラックに直接インサートしてDry/Wetで使う方がドライ音とリバーブ音のなじみがよく、ミックスで混ぜやすい印象がありました。

 個人的に欲張りたい点は、エフェクトを入れてMIXノブを上げていくと原音の音量が下がってしまうので、それを補正するVOLUMEノブがあっても良かったかも?というところですが、同シリーズのSurfybear MetalやCompactには搭載しているので、このClassic V2.0には6G15へのリスペクトがあるのかもしれません。後段のフェーダーやライン・アンプで調整すれば済む話でもありますね。また、いつかステレオ仕様も発売してほしいところですし、NAMM 2022で発表されたアウトボード・タイプのSurfybear Studio Editionの動向も大変気になるところです。

 この音の感じでしたら、レコーディングやプリプロでも十分に威力を発揮してくれることでしょう。音の粒立ちや奥行き感など、プラグインのリバーブとはまた違った存在感があるので、アウトボードのリバーブに興味のある方はもちろん、プラグイン/アウトボード問わず良い感じのスプリング・リバーブを探している方にもぜひ使ってみていただきたい一台です。

 

福田聡
【Profile】フリーで活動するレコーディング・エンジニア。ファンクやR&Bなどグルーブ重視のサウンドを得意とし、ENDRECHERIやShunske´G & The Peas、オーサカ=モノレールなどを手掛ける。

 

SURFY INDUSTRIES Surfybear Classic V2.0

52,800円(ツイード・カラーのみ57,200円)

SURFY INDUSTRIES Surfybear Classic V2.0

SPECIFICATIONS
▪コントロール:DWELL、MIXRE、TONE ▪外形寸法:450(W)×80(H)×190(D)mm ▪重量:2.11kg(実測値)

製品情報

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