sonible smart:EQ 4 レビュー:複数トラック間で生じる音の濁りやかぶりを回避するAI搭載EQプラグイン

sonible smart:EQ 4 レビュー:複数トラック間で生じる音の濁りやかぶりを回避するAI搭載EQプラグイン

 sonibleは、AIを駆使した先進的なプラグインで知られるメーカー。smart:EQ 4は同社の最新EQです。実は私、同社製品はsmart:EQのほか、コンプレッサーのsmart:compもVer.1からフルコンプしているちょっとした信者。どれほど進化したのかワクワクです。

ダイナミックEQも利用可能 オートゲインでひずみを回避

 まず、smart:EQ 4の基本的な使い方から。トラックにインサートして、上掲画面の最上部“Bass”という文字の左に見える緑の丸をクリックしてDAWを再生します。すると、入力音が分析されてEQカーブが自動設定されます。この際、プロファイルというデータを使用するのですが、その種類がVer.4では格段に増えました。

プロファイルはドラムやギターといった楽器向けのほか、2ミックス用としてジャズやエレクトロニックといったジャンル別でも用意されている

プロファイルはドラムやギターといった楽器向けのほか、2ミックス用としてジャズやエレクトロニックといったジャンル別でも用意されている

 また、Ver.3から複数トラック間の音の濁りやかぶりなどを解決するグループ機能が搭載されましたが、Ver.3では6trまでだったのが10trへと拡張され、機能的にも強化されました。詳細は後述しますが、このグループ機能をうまく使うことでミックスを効率よく整えていくことができます。これがアップデートの目玉なのですが、個人的にはほかの追加機能も激アツなので、それらを先に紹介しちゃいますね。

●ダイナミックEQ:任意のEQポイントをダイナミックEQに変更できます。スレッショルドを設定してブーストあるいはリダクション可能です。アタックやリリース、レシオなども細かく設定でき、僕的には“これが欲しかった”という機能です。

●オートゲイン:これも僕的には欠かせない機能。EQ操作でブーストを過激に行ってもプラグイン内で自動的に出力を調整してくれます。これにより出力段階でひずんでしまうなどのミスを防ぐことができます。

●周波数アナライザーの表示切り替え:EQ前後の周波数分布を切り替えて表示できます。

各トラックの前後感を設定可能 分析&自動設定でアナログ感のある音に

 では、Ver.4のメインイベントであるグループ機能を、実際にミックスしながら紹介しましょう。まずステムとしてまとめたい楽器のトラックすべてにsmart:EQ 4をインサート。例えばストリングスだったらバイオリン、ビオラ、チェロなどです。その中のどれか1つのsmart:EQ 4を開き、add to groupボタンをクリックして開いた画面で任意のグループ名を入力。あとは、createボタンをクリックすると、グループ作成画面に切り替わります。

グループ作成画面。add instance(黄枠)をクリックすると、右の青枠部分が表示され、smart:EQ 4をインサートしたトラックが並ぶ。それらを左のピンク枠内にドラッグ&ドロップしてグループを作成する。ここは上からFront、Middle、Backの3セクションに分かれており、最大で10trまで配置できる。配置が完了したら、白枠のボタンをクリックして分析をスタート。完了したらEQが自動的に設定される

グループ作成画面。add instance(黄枠)をクリックすると、右の青枠部分が表示され、smart:EQ 4をインサートしたトラックが並ぶ。それらを左のピンク枠内にドラッグ&ドロップしてグループを作成する。ここは上からFront、Middle、Backの3セクションに分かれており、最大で10trまで配置できる。配置が完了したら、白枠のボタンをクリックして分析をスタート。完了したらEQが自動的に設定される

 ここでadd instanceをクリックすると画面右側にsmart:EQ 4をインサートしたトラックが表示されます。これらを10個まで、画面左のエリアにドラッグしてグループを形成します。その際、前面に出したいトラックはFront、奥に配置したいトラックはBack、その中間はMiddleという3セクションに振り分けて、優先順位を付けられます。例えば、ソロバイオリンを目立たせたいのであればFrontに、その他はMiddleやBackに配置するという具合です。

 配置が完了したら、緑色のLearn AllボタンをクリックしてDAWを再生。すると分析がスタートし、各トラックにEQが自動的に適用され、トラック同士が周波数干渉しないように調節してくれます。このEQがまた良い感じで、アウトボードで作ったようなアナログ感のある音にしてくれます。

 ここからさらに細かい音作りも行えます。各楽器用のプロファイルを選択したり、AIが作成したEQの適用度や適用範囲(2分割も可能)を変更したり、画面上をダブルクリックしてEQポイントを作り、手動でイコライジングすることも可能です。しかし、ちょっと待って! 弦楽器は弾き方や音域で周波数分布は常に変化します。それなのに一定のEQカーブでいいんですか? ご安心ください。Adaptiveというパラメーターの数値を上げると、常に動的にEQカーブが変化します。例えば、ある音域でとてもピーキーになるバイオリンも、その音域だけ良い感じにピークを抑えてくれるのです。

 ここで、“グループってどんなふうに作用しているの?”と疑問をお持ちの方もいるでしょう。実はグループではtrack、track+group、groupという3モードがあります。trackではトラック単体のみを分析して、ほかのグループ音の干渉は無視するので、単に楽器として良い音を作る場合に使用します。逆にgroupではグループでの優先順位を重視するので、backに配置したトラックは相対的に目立たなくなるEQが適用される可能性があります。track+groupはその中間で、デフォルトはこの設定です。

 さて、ミックスでは前述のバイオリン、ビオラ、チェロをステムとしてまとめたAUXトラックにもsmart:EQ 4をインサートしました。ボーカル類やシンセ類、ドラム、ベースなども同様に処理していき、各ステムをまとめたマスター的なAUXトラックにもsmart:EQ 4をインサートし、ステム同士でグループを作成。Frontにソロ楽器やボーカル、Middleにはドラムやベース、Backにはシンセなどをアサインしました。また、キックを目立たせたかったので、ドラムのグループから独立させて、キックのトラックをFrontに配置。短い時間でパパっと作業したのですが、随分と早くまとまってくれました。ここから、さらに踏み込んで音作りを行っていけそうです。

 AI機能によって大幅な作業の効率アップが可能となり、ダイナミックEQなどの機能追加によって、音作りの幅が広がったsmart:EQ 4。僕としてはメインEQとしてバリバリ使用していきたいと思います。

 

Nagie
【Profile】レコーディングエンジニア/プログラマー/作編曲家。aikamachi+nagie、ANANT-GARDE EYESとしても活躍している。Vocaloid『IA-ARIA ON THE PLANETS』の開発に携わる。

 

 

 

sonible smart:EQ 4

19,250円(価格は為替レートによって変動)

sonible smart:EQ 4

REQUIREMENTS
▪Mac:macOS 10.14/10.15/11〜14(INTEL CPU/ARM)
▪Windows:Windows 10(64ビット)/11
▪共通項目:intel Core i5以上(MacはAppleシリコン含む)、4GB以上のRAM、64ビット環境のみ
▪対応フォーマット:AU、AAX、VST、VST3

製品情報

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