「MACKIE. MC-100」製品レビュー:人間工学に基づくヘッド・バンド&イア・パッドを備えた密閉ヘッドフォン

f:id:rittor_snrec:20210406174544j:plain

 MACKIE.は1990年代に高性能な小型ミキサーの分野で一世風靡(ふうび)し、DAWコントローラーの先駆けであるHUIやリーズナブルなモニター・コントローラーBig Knobなど、音楽制作者の強い味方となっている音響メーカーです。近年は時代の流れか、より低価格路線を進み、びっくりするような価格で音響機材を数多くラインナップ。今回もやはり驚きの低価格なヘッドフォンのご紹介です。

硬めのイア・パッドで外来ノイズをカット
聴覚保護にもなるソフトな高域と豊かな低音

 MC-100は密閉型のモニター・ヘッドフォン。イア・カップはアラウンド・イア型で、ケーブルは3mのストレート・タイプです。専用設計の40mm径ドライバーは15Hz〜20kHzを再生可能。インピーダンスは32Ωで、スタジオのキュー・ボックスから携帯電話のヘッドフォン端子まで、ほぼすべてのオーディオ製品に使用できます。

※サウンド&レコーディング・マガジン2021年6月号掲載の同記事において、上記部分に誤りがありました。読者ならびに関係者の皆さまにご迷惑をおかけいたしましたことを深くお詫び申し上げるとともに、上記のように訂正いたします。 

 

 まずはデザインや装着感を見ていきましょう。MC-100のイア・カップは耳たぶ全体をしっかりとカバーします。イア・パッドは、表皮も中身のウレタン・スポンジも硬めですが、面圧が均一になるように設計されています。長時間装着し続けても、圧力が一カ所に集中して痛くなってしまうようなことはありません。高級ヘッドフォンほど柔らかいイア・パッドの製品が多いですが、硬質な素材を採用するMC-100は、外来ノイズをカットするとともに、エア漏れが少なく低音の再生に大きく貢献しています。

f:id:rittor_snrec:20210406174725j:plain

硬質な素材のイア・パッドで外部からのノイズをカット

 ヘッド・バンド部は折りたたみなどの機能が無い分シンプルで壊れにくく、側圧もしっかりと出ており装着感が良いです。同時に、クッション形状が適切で、頭頂部に均一に面圧が出るので、長時間の作業で頭の一部に荷重が集中して頭皮が痛くなってしまうようなことがありません。

 

 それでは実際に試聴してみましょう。オーディオ・インターフェースのヘッドフォン端子に接続してまずはサイン・スイープを再生。ひずみを確認したところ、全帯域において十分低ひずみであることが分かりました。これは期待ができます。

 

 続いて、ピンク・ノイズを試聴。全帯域でL/Rチャンネル間の誤差はかなり少なく、ドーム型振動板の共振、外耳道共振ともに、ふさわしくない鋭い共振は十分抑えられており、色付けの少ない再生音であると感じました。ピンク・ノイズ・フラットの特性より、100Hz以下はおそらく3dBほど持ち上がった特性だと推測されます。

 

 MC-100のようなソフトな高域と豊かな低音のチューニングは、非常に聴きやすい再生音色であると同時に、業務用途などで長時間作業する場合の聴覚保護にも役立つでしょう。例えば、長時間にわたるビート・メイクや、電車内など騒音下での使用に適していると感じました。特に、聴覚保護が必要な子供のゲーム用ヘッドフォンとしてもこの特性は役立つと思います。

 

ジャンルごとの雰囲気をストレートに再生
伝達関数の左右差が少なくセンターに定位

 次に、普段から聴き慣れているリファレンス音楽を試聴しました。まず感じたのは豊かな低音であることと、全帯域において十分な解像感があること。音色として不自然なところが無く、聴きやすい音色で非常に印象が良いです。特に低域を重視するダンス・ミュージックのミキシングやプロダクションにおいて非常に聴きやすい特性だと感じました。クラシック、ジャズ、ポップスなどでも、ジャンルごとの雰囲気をそのままストレートに再生することができます。

 

 また、モニター・ヘッドフォンや高価なオーディオ・ヘッドフォンにありがちな、高域を強調したカリカリと耳に痛い音ではなく、音楽に集中することができます。そのような硬い音に耳が適応している場合は、本機では高域が不足している印象を持つかもしれません。低域については、群遅延の不自然なバスレフ感が無く、クリアでダンピング感のある質の良い音です。また、中域の不自然なピークやディップは少なく、キックなどの細かい調整はスピーカーよりやりやすいのではないかと思う特性でした。

 

 定位感、空間再現性はどうでしょうか。ステレオ音源でも中央に定位することが多いボーカルやキックは、センターにしっかり定位することが分かりました。これはつまり左右のトランスデューサーの伝達関数のばらつきが非常に少ないということ。伝達関数の左右差が少ないほどマイクの位相差や時間差による空間再現性は正確なものとなり、クラシック音楽のホール録音などの再現性も高いでしょう。低価格のヘッドフォンは、製造時のばらつきがあってきちんとセンターが定位しない製品が多いですが、MC-100はリーズナブルながらその点においても優秀であることが分かりました。

 

 MC-100は、5〜10倍の価格帯の高級なヘッドホンに匹敵するレベルの再生品質を持つ音質のヘッドフォンであると言えます。この価格帯の製品でもきちんと音質を詰めてくる、MACKIE.のヘッドフォン音響調整の技術に感服しました。

 

Mine-Chang
【Profile】作編曲家/プロデューサーとしてアーティストへの楽曲提供やCM音楽などで活躍するとともに、prime sound studio form所属のレコーディング・エンジニアとしても活躍中。

 

MACKIE. MC-100

オープン・プライス

(市場予想価格:3,960円前後)

f:id:rittor_snrec:20210406174544j:plain

SPECIFICATIONS
▪形式:密閉型 ▪周波数特性:15Hz〜20kHz ▪インピーダンス:32Ω ▪トランスデューサー:40mm ▪出力感度:95dB ▪重量:233g ▪ケーブル長:3m

 

製品情報

mackie-jp.com

 

関連記事

www.snrec.jp

www.snrec.jp