「ETYMOTIC RESEARCH ER3SE-LE/ER3XR-LE」製品レビュー:MMCX方式のケーブル着脱に対応するカナル型イヤホン2機種

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 音楽の制作やミキシング、マスタリングをする際には、モニター・スピーカーだけではなくヘッドホンやイヤホンも併用していますが、スタジオのみならず、さまざまな環境で良い音かつ解像度の高い音で聴きたいと考えるのは筆者だけではないはず。そこで今回レビューするのはカナル・タイプのイヤホン、ETYMOTIC RESEARCHのER3SEとER3XRのLEバージョンです。

撮影:川村容一

 

バランスド・アーマチュア・ドライバーを1基搭載
Lightningアダプターを同梱

 ER3SEはETYMOTIC RESEARCHの正確無比なサウンドを継承しつつ、よりスタジオ・クオリティの高音質サウンドへバージョン・アップしたモデル。一方のER3XRは、ER3SEをベースとした高解像度なサウンドながら、より重厚で表情豊かな低域を体験できるリスニング用途に最適なモデルで、どちらも高い遮音性を持つことが特徴の一つです。外装と形状はどちらもほぼ同じ。ブラック・カラーで、小さく軽量ながらも高級感のあるメタル・ハウジングの仕上がりになっています。

 

 ER3SE、ER3XRは共に新開発のバランスド・アーマチュア型ドライバーを1基搭載しており、周波数特性は20Hz~16kHz。とてもコンパクトなドライバー・ユニットなので、持ち運びにもとても便利です。インピーダンスは22Ωなのでポータブル・プレイヤーでも容易に再生できます。ケーブルはMMCX方式で着脱可能なので万が一断線したときでも交換ができますし、リケーブルを行なって音のチューニングを楽しむこともできますが、コネクター部の形状が少し特殊なので注意が必要です。

 

 付属品には、イヤホン本体や予備のイア・チップなどを入れておける黒のミニ・ポーチ、ラージ・サイズのトリプル・フランジのイア・チップとウレタン素材のイア・フォーム、ケーブル・クリップ、ワックス・ガードとそれを取り替えるための専用フィルター・リムーバル・ツールを用意。今回テストしている、製品名末尾にLEと付くバージョンでは、そのパッケージにAPPLE iPhoneなどに直接接続するためのLightningアダプターと4サイズのダブル・フランジのイア・チップが付属しています。

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ER3SE/ER3XRには、ミニ・ポーチ、ラージ・サイズのトリプル・フランジ・イア・チップ、ウレタン製イア・フォーム、内部に汚れが入るのを防ぐワックス・ガード(フィルター)と交換用ツール、ケーブル・クリップが付属している。写真最下段にあるLightningアダプターと、右側ある4サイズのダブル・フランジ・イア・チップは、今回レビューしたLEと付くパッケージに付属している

 筆者はカナル・タイプのイヤホンを普段から使用しているのですが、ETYMOTIC RESEARCHのイヤホンは外耳道の奥までしっかりと挿入する細身のデザインで、少し慣れが必要でした。遮音性は35~42dBとなっており、自分の耳にフィットしたイア・チップを選択すれば遮音性は高く、耳に痛くない程度の大きめの音量で聴けば、音に集中できる遮音性がしっかりと確保されます。また、本体はとても軽いので装着性は快適です。

 

音の分離が良く高域が伸びたER3SE
低域が持ち上がった聴き心地の良いER3XR

 さて、それでは早速両機の試聴を行っていきましょう。今回はヘッドホン・アンプのRUPERT NEVE DESIGNS RNHP単体のほか、iPhone、コンピューターなど、さまざまな機器に接続して試聴してみました。楽曲は普段からリファレンスに使用しているアコースティックなジャズものからポップス、4つ打ちのダンス・ミュージック系など、ざっくばらんに聴きながら試します。

 

 ER3SEは音の立ち上がりや切れ目、分離がとても良い印象。低音の誇張が無く、締まっていて音のディテールを判別しやすいです。ウッド・ベースの弦の震えや、アコースティックなパーカッションでの細かなタッチのニュアンスも聴き取れます。高域も素直に伸びており、ボーカルの背後に広がるフィールドの大きさを判別することもできました。かと言ってカリカリとした印象も無いので、長時間の作業でも聴き疲れがしないでしょう。

 

 ダンス・ミュージック系の音源でもサブベースの存在をしっかりと感じることができますが、どちらかと言うと全体的にさっぱりとした印象。世界に没入するというよりも、しっかりと音を聴き分けるためのツールといったイメージです。飾りの少ない、リファレンス用途にチューニングされたモデルであるということに納得がいきました。

 

 ER3XRは、前述のER3SEと比べると中低域~低域にかけてなだらかに持ち上がっている印象で、その影響か音像が全体的に一歩前にいるように感じました。とはいえ、ドーピングされたような無理な低域の膨らみ方ではなく、全体の画角が一回り大きくなっているようなイメージ。全体的には細かいタッチのニュアンスの聴き分けができるのはER3SEと同じです。ダンス・ミュージック系の音源を聴くと、低域の重厚感が全体の一体感を生み出しているのか、音像がひとかたまりになって届き、グッと音源の世界に入り込めるように感じました。ER3SEが冷静に聴き分けることを主とした音だとすると、ER3XRは心地良さを求めたようなチューニング。リスニングに最適で、ほど良い低域のブーストが楽曲のグルーブを演出しています。

 

 原音再生にこだわったETYMOTIC RESEARCHらしい音質で、同ブランドの中でも比較的手の届きやすい価格帯のER3シリーズ。解像度の高いモニター用/リスニング用のイヤホンを探している人には、ぜひ選択肢の一つに入れていただきたいモデルです。

 

佐藤公俊
【Profile】 電子音楽バンドMother Terecoのメンバー。ソロ名義ではミックス・エンジニアやDJとしての活動に加え、パブリック・スペースやWebコンテンツのサウンド・デザインなども行っている

製品情報

ETYMOTIC RESEARCH ER3SE-LE

オープン・プライス

(市場予想価格:21,800円前後)

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SPECIFICATIONS:
▪ドライバー:バランスド・アーマチュア×1基 ▪ハウジング:アルミ製(アノダイズド加工) ▪周波数特性:20Hz〜16kHz ▪インピーダンス:22Ω ▪ノイズ・アイソレーション:35~42dB ▪感度:102dB ▪最大音圧:120dB SPL ▪ケーブル:約1.2m、着脱式(MMCX) ▪重量:15g(実測値)

ETYMOTIC RESEARCH ER3XR-LE

オープン・プライス

(市場予想価格:21,800円前後)

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SPECIFICATIONS:
▪ドライバー:バランスド・アーマチュア×1基 ▪ハウジング:アルミ製(アノダイズド加工) ▪周波数特性:20Hz〜16kHz ▪インピーダンス:22Ω ▪ノイズ・アイソレーション:35~42dB ▪感度:102dB ▪最大音圧:120dB SPL ▪ケーブル:約1.2m、着脱式(MMCX) ▪重量:15g(実測値)

 

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