ACOUSTUNE RS Three レビュー:独自のMyrinx EL-Sドライバーを採用したスタジオ・モニター・イアフォン

ACOUSTUNE RS Three レビュー:独自のMyrinx EL-Sドライバーを採用したスタジオ・モニター・イアフォン

 2013年創業のイアフォン・メーカー ACOUSTUNEが展開するMonitorシリーズから、第2弾となるスタジオ・モニター・イアフォンRS Threeが登場しました。早速チェックしてみましょう。

35Hz以下の低音の存在感がよく分かる

 RS Threeは、高耐入力性能と高い音響性能を兼ね備えるというMyrinx EL-Sドライバーを搭載することで、楽曲制作に適したモニタリングを実現したとのこと。また、資料によると、“著名なプロの作曲家たちからヒアリングを行い、スピーカーやヘッドフォンとは異なる部分でイアフォンに求められるものを掘り下げたところ、超低域、歯擦音、リップ音などの音や、パンニングといった部分のモニタリング性能が求められていることが分かりました”とありました。

 そういうことなら、まずは筆者が制作中の楽曲のセッションで試してみるのが何よりの近道かと思い、さっそく24ビット/48kHzの環境で 、オーディオ・インターフェースを通して試聴。伸びる高域とタイトな低域、そして少しだけ中高域に主張がありながらも、割とフラットな印象です。余計な脚色やコンプ感もなく、直感的に“これは制作のモニターとして使いやすいかも”と思いました。

 次に、我々クラブ系のクリエイターがとても気になる部分、低域についてチェックしてみます。超低域まで含まれるサブベースのトラックにEQを挿し、スロープを直角に近いカーブにして高域をカットしていったところ、筆者の耳では35Hz辺りまで削っても低音の存在がよく分かりました。

 中域については、中高域が若干強めに感じつつも、耳に痛いということは全くなく、ボーカルやギター、シンセなどの処理をしやすそうで、微妙なパンニングもよく分かります。

 資料にあった歯擦音、リップ音などのノイズもチェックしてみたところ、ここで筆者にとってショッキングなことが起こります。普段、モバイル環境などで制作をする際に、10万円クラスのイアフォンを使用しているのですが、そのイアフォンでは判別できなかったノイズが、今回試したRS Threeではっきりと聴こえてしまったのです……。これは!と思い、さらに聴き込んでいくと、音の粒立ちや細かなリズムなどが分かりやすいなと感じました。それだけアタックやリリースがしっかりと再現されているのでしょう。

 ならばハードウェアのマシンに直接つないで試そうと、ドラムやシンセのアタックの鋭さに長けるFM音源をベースとしたグルーブ・ボックスで試聴。ピッチ・エンベロープを使いパツパツに鋭くしたキックや、ディケイとリリースが長めのシンセ、そのどちらも細かいところまで判断しやすく、また、リバーブなどの空間系エフェクトの広がりの再現性も良く、演奏やプログラミングを気持ち良く行うことができました。

4種類のイア・チップの装着感は快適

 音質面はチェックできたので、それ以外の部分も見ていきましょう。イアフォンを使用するにあたり、個人的に重要視しているのが装着感なのですが、これが何とも快適。イア・チップは大小4種類用意されており、筆者の耳とは抜群の相性でした。このレビューを書くことを忘れ、しばらく普通に作曲やアレンジの作業を進めてしまっていたほどです。

付属のイア・チップ。大小4種類が用意されている

付属のイア・チップ。大小4種類が用意されている

 また、部品点数を減らし、市場調査でモニター・イアフォンの壊れやすい部分について徹底的に研究を行うことで、衝撃や熱、汗に強い、堅牢性の高いボディを実現したそうで、ハウジングは頑丈なポリカーボネート製。ケーブルには、高純度リッツ線とケブラー・ワイヤーを編み込んだ線材を使用し、PU素材の被覆を採用したとのこと。これをツイストすることで、しなやかで取り回しが良く、かつ断線しにくいようになっているそうです。実際とても軽くて柔らかく、丈夫な作りになっていました。ケーブルは着脱可能で、コネクター部分は日本ディックスが設計するPentaconn Earコネクターを採用。プラグ部分とジャック部分がより密接に接触し、伝導性能に優れるそうです。

ケーブルは着脱可能。日本ディックスが設計するPentaconn Earコネクターを採用しており、プラグ部分とジャック部分がより密接に接触することで、伝導性能に優れるとのこと

ケーブルは着脱可能。日本ディックスが設計するPentaconn Earコネクターを採用しており、プラグ部分とジャック部分がより密接に接触することで、伝導性能に優れるとのこと

 そのほか、3.5mmステレオ・ミニからフォーンへの変換アダプターや、キャリング・ケースも付属し、可搬性に優れます。この価格帯でこんな即戦力あり?という感想を持ちました。

3.5mmステレオ・ミニからフォーンへの変換アダプターや、キャリング・ケースが付属

3.5mmステレオ・ミニからフォーンへの変換アダプターや、キャリング・ケースが付属

 タイトでシャープなサウンドなので、リスニングにも適していますし、各部に配慮した頑丈な作りはステージ・モニターとしても重宝しそうで、制作以外にも使える逸品だと思います。ヤバいトラック、場所を選ばず気軽にたくさん作れそう!

 

REMO-CON
【Profile】ハード・ダンス系を軸とするDJ/トラック・メイカー。これまでに浜崎あゆみやAAAなどのリミックス、東京五輪閉会式の楽曲の編曲を担当。FMヨコハマやblock.fmでラジオDJも務める。

 

ACOUSTUNE RS Three

オープン・プライス

(市場予想価格:16,880円前後)

ACOUSTUNE RS Three

SPECIFICATIONS
▪形式:密閉型 ▪ドライバー・ユニット:9.2mm径密閉ダイナミック型ドライバー(ミリンクスEL-Sドライバー) ▪感度:108dB/1mW ▪周波数特性:20Hz~40kHz ▪インピーダンス:32Ω/1kHz ▪付属ケーブル:ARM011L(約1.8m) ▪重量:約29g(ケーブル含む)

製品情報

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