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第4回 Studio Oneを
ライブで使う際の準備について
こんにちは! DAW女シンガー・ソングライター小南千明です。早いものでこのPRSONUS Studio One(以下S1)のコーナーを担当させてもらって今月で4回目、最終回になりました。シンガー・ソングライターとしてどのようにS1を使っているかを作曲編、ボーカル録音編とお届けしてきましたが、今回はライブ編! 私は今、毎月4〜6本ほどライブをしていますが、S1でどのような準備をしているかお話をしていこうと思います。
ライブ用の音源をステムで用意して
微調整ができるようにする
ざっくり私のライブ・スタイルを紹介すると、ステージ上のAPPLE MacBook Proに立ち上げたS1から打ち込んだトラックを流し、ROLAND JD-XIを弾いたり、リズム・マシンのTR-8を操ったりしながら、ヘッド・セット・マイクのSHURE Beta 54で歌っています。
![▲基本のライブ・セット。Studio Oneを立ち上げたAPPLE MacBook、ROLAND JD-XI、TR-8、SHURE Beta 54を使い、トラックはTR-8のオーディオI/O機能を使って出力しています](https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/s/snrec/20220902/20220902002401.jpg)
ワンマン・ライブのような大きなイベント以外は一人でステージに立ちます。S1上で何か特別な機能を使っているかというとそうでもないのですが、見慣れない方も多いスタイルだと思うので、新曲をライブで披露するとき、どのような準備をしていくかお話ししていきましょう。
まずは演奏パートを決めてからデータの準備をします。主催イベントのDAW女子会では、出演者がそれぞれのコンピューターをステージに持ち込んでいますが、そのディスプレイをのぞくと2ミックスを張り付けている人もいれば、ソング・ファイルそのままの人もいたり、トラックの流し方もさまざまです。私の場合は、1つのソング・ファイルの中に、セット・リスト順のステム・データを張り付けています。コンピューターへの負担をなるべく小さくしつつも、ライブ・ハウスによって出音は異なるのでサウンド・チェック時にボリュームの微調整ができるようにするため。そんなに細かくは分けませんが、リズム・パート、SE、ベース、シンセ、ギター、コーラスといった感じです。ライブで手弾きするパートは単独で書き出し、ミュートしておきます。サウンド・チェックは時間がない中で行うことが多いので、パッと見てすぐ調整ができるようにパートごとに色を変えておくとスムーズですし、見た目も華やかになります。自分しか見ないのですが(笑)。
![▲とあるライブで使ったソング・ファイル。ライブのセット・リストをステム・ファイルで全曲分並べておきます。1曲につき7〜10個のパートに分かれており、時間の短いサウンド・チェックでもすぐ対応できるように色分けしています](https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/s/snrec/20220902/20220902002406.jpg)
また、TR-8を使って演奏するときはS1からMIDIクロックを送って同期させるため、曲ごとにBPMも入力しておきます。
![▲カーソルを曲頭に合わせ、“テンポ”欄のプラス・ボタンを押し任意のテンポを入力すれば、曲ごとにBPMを設定できます](https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/s/snrec/20220902/20220902002409.jpg)
![▲BPMを設定したら、環境設定>外部デバイス>TR-8を選択して、“デバイスを編集”のウィンドウを開き、“MIDIクロックを送信”“MIDIクロックスタートを使用”にチェックを入れると、TR-8と同期させることが可能](https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/s/snrec/20220902/20220902002415.jpg)
基本的にはその曲を作ったときのBPMを入力するのですが、S1はタイム・ストレッチをかけても奇麗な音のままなので、気軽にテンポを変えることができます。例えば1stミニ・アルバムに収録している「SPIRAL DAYS」は、ライブではCDより5BPM上げて演奏しています。ライブではタオルを回して盛り上がる曲なのでより疾走感を出すためです。
アレンジ・トラック機能を活用して
ライブの流れをスムーズに行う
一人でステージで演奏していると、なかなかライブ中にコンピューターのディスプレイをのぞく時間はありません。歌ったり弾いたり踊ったりしゃべったりと忙しくしているので、なるべくコンピューターには触れずに、スペース・キーだけ押せばスタートし、ライブを進められるよう、それぞれの曲の頭にマーカーを立てて流れをコントロールしています。マーカーの上で右クリックを押して“マーカーで停止”にチェックを入れておけば、そのマーカーが来たときに再生を止めることができます。曲終わりにMCを挟む場合はそこで止まるようにチェックを入れて、何曲も続けて歌うところでは逆にチェックを外すことで曲間に毎回コンピューターに触れなくてもライブを進めることが可能です。
![▲曲頭にマーカーを立てておけば、リハやサウンド・チェックでスムーズに曲を流すことができます。曲終わりにMCを挟むときはマーカーで右クリック(Macはcontrol+クリック)、“マーカーで停止”にチェックを入れておくと(赤枠)、そのマーカーの位置で再生が停止されます](https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/s/snrec/20220902/20220902002417.jpg)
準備するときは実際に音を出しながら曲を並べて構成を組み立てていきますが、曲を続けて流すときの曲間は、ライブの盛り上がりを左右する大事な要素なので、当日のライブ会場をイメージしながら丁寧に設定しています。例えばアップ・テンポの曲が続くときはテンションを下げないように曲間は短くすることが多く、しっとりした曲が続くときは、一度会場の空気を変えられるように長めに設定します。持ち時間が短いライブではメドレーのような感じで曲のサイズをカットしたり、DJ風に曲をつないだりすることも簡単にできるのがDAWを使う特権ですね。
そしてライブの準備にとても便利なのがアレンジ・トラック機能! 通常は曲を作るとき、主に楽曲構成を考えるのに便利な機能ですが、曲頭に設定したマーカーを右クリックして“マーカーからアレンジセクションを作成”を選択すれば、曲ごとに分かれたアレンジセクションが出現します。
![▲マーカーの任意の個所で右クリック(MacはControl+クリック)し、“マーカーからアレンジセクションを作成”を選択すると(赤枠)、曲ごとに分かれたアレンジセクションが現れます](https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/s/snrec/20220902/20220902002426.jpg)
準備の段階で“やっぱりこの曲とこの曲の曲間を狭めよう”とか、“この曲とこの曲を入れ替えよう”といった際には、このアレンジセクションを動かせば、トラックはもちろん入力したBPMの情報も一緒に移動させることができます。セクションごとに色を変えたり名前を入れたりすることも可能なので、ライブやリハでもセットリストを確認しながら歌うことができるのです。
![▲インスペクターのウィンドウを開くと、それぞれセクションごとにファイル名が並んでおり、選択すれば名前も変えられます(赤枠)。私はここに曲名を入力しているのです。色も好みのものに変えることができるので、曲のイメージに合わせて変更しています](https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/s/snrec/20220902/20220902002430.jpg)
このように私はS1を相棒にしてステージで歌っています。作曲からライブまでS1という一つの場所で行えるようになり、作ることと届けることの距離がぐっと縮まりました。DAW女子会を主催して続けてきた中で思うのは、作りたい、届けたい、という思いがあればそれだけでいいじゃんってこと! もちろん必要な知識や技術はたくさんあるし、私自身まだまだ勉強しなくちゃいけないことばかりだけど、それで壁を感じてしまうのはもったいないなぁと思います。DAW女子会に出演してくれるアーティストは、みんな自分の届けたいものがあって、それをDAWというツールで形にしていて、ものすごく自由で、私もたくさん刺激と勇気をもらいます。S1は作りたい!という思いに、直感的に応えてくれる優しいソフトだと思うので、DAWって難しそうだなぁと思っている人にもぜひ触ってみてほしいです!
というわけで4回の連載、最後まで読んでくれた皆様ありがとうございました。ぜひDAW女子会や私のライブにも遊びに来てください。どこかでお会いできるのを楽しみにしています!
*Studio One 3の詳細は→http://www.mi7.co.jp/products/presonus/studioone/