小南千明が使う Studio One 第1回

 第1回 曲作りからライブまで活用している
Studio Oneの使い方について

はじめまして! 今月からStudio One(以下S1)のコーナーを担当します、DAW女シンガー・ソングライター小南千明です。都内ライブ・ハウスを中心に歌っています。来年ポニーキャニオンからのメジャー・デビューが決定していて、今は曲を作りながら準備を進めているところです! 普段から作曲/編曲/レコーディングやミックス、ライブ……すべてにおいてS1を使って活動をしています。この連載では、これから打ち込みを始めたいという方や今シンガーとして活動している方に向けて、S1の魅力が伝えられるようにお話ししていきます! 今回は私がS1を使うことになったきっかけや、どのようにS1を利用しているか、また、お気に入りの機能やプラグインなどを紹介していきましょう。

自分自身で音源を制作するため
Studio One を使うようになった

私がS1を使い始めたのは4年半ほど前です。それまではAPPLE MacBookに入っていたGarageBandとMIDIキーボードを使って、曲のメモ書き程度のデモを作っていたのですが、もっとちゃんと音源を制作できるようになりたいなと思っていたころに、今お世話になっているプロデューサーの浅田祐介さんと出会い、曲を聴いてもらうようになりました。そのときに“S1がすごくいいよ”と薦めてもらって、調べてみたらStudio One 2 Artistと、オーディオI/O、コンデンサー・マイク、ヘッドホンがセットになったパッケージが売られていて、“これを買えばなんでもできるようになる!”と思って、すぐにネットでポチりました。これで宅録できる環境は整ったのですが、そのときは“DAW女”になるつもりは全くなく、ライブでもダンス&ボーカルとして活動していたのです。楽曲制作も、MIDIキーボードでピアノのコードを打ち込みボーカルを重ねてデモを作ったら、祐介さんのスタジオに持って行って話し合いながらトラックを完成させていました。

しばらくの間はS1内蔵の音源のみで制作していました。例えば、Presence(サンプル・プレーヤー)を使う場合、画面右側のブラウザーからプリセットを選んでドラッグ&ドロップするだけで音源が立ち上がり、簡単に音を出せたので、機械が得意でない私でも挫折せずに徐々にS1の操作に慣れていくことができたのです。

▲Studio Oneでソフト・シンセやプラグインを立ち上げるのは、画面右側のブラウザからドラッグ&ドロップでOK。S1 内蔵のソフトなら、画面のように音色プリセットから直接ソフトを立ち上げることもできる ▲Studio Oneでソフト・シンセやプラグインを立ち上げるのは、画面右側のブラウザからドラッグ&ドロップでOK。S1 内蔵のソフトなら、画面のように音色プリセットから直接ソフトを立ち上げることもできる

またボーカルの処理も、最初はプラグインの細かい使い方が分からなかったので、FxチェーンのFemale Popをボーカル・トラックにドラッグ&ドロップしていたのですが、それだけでも一気に歌がかっこよく聴こえて感動したのを覚えています。

だんだん自分の作りたいものを自分の手で形にできることが楽しくなっていき、ベースも打ち込んで重ねてみたり、元からたくさん入っているループ素材から好きなリズム・パターンを選んで貼っていったり、どんどんトラック数が増えていきました。そのデモを祐介さんに聴いてもらううちに「ここまでやったなら自分で最後までやってみれば?」と言われて。2014年の12月にアレンジまですべて自分で行ったクリスマス・ソング「Christmas Magic」をライブとYouTubeで公開したのがS1でのDAW女デビューでした。そのころからライブのステージ上にMacBookとMIDIキーボードを持ち込んで弾き語るようになり、しばらくしてキーボードがROLAND JD-XIになり、今のライブ・スタイルができたのです。

▲現在のライブ機材セット。右側からAPPLE MacBook、ROLAND JD-XI、TR-8を置いている。ライブではMacBookに立ち上げたS1でオケを流しながら、シンセを弾いて歌うのが筆者の基本スタイル。生ドラムをサポートに入れる際も、S1から同期用のクリックを出している ▲現在のライブ機材セット。右側からAPPLE MacBook、ROLAND JD-XI、TR-8を置いている。ライブではMacBookに立ち上げたS1でオケを流しながら、シンセを弾いて歌うのが筆者の基本スタイル。生ドラムをサポートに入れる際も、S1から同期用のクリックを出している

シンセからエフェクトまで
内蔵プラグインを活用

最近は作曲とアレンジをあまり区別せず進めることが多いです。トラックから先に作ることもありますし、メロやコードから作っても、リズム・パターンやシンセ・リフまでファースト・デモの段階で決めることがほとんど。音源やプラグインはいろいろ買っていますが、S1内蔵音源は今でもよく使っています。例えば、Impactのキックの音はパンチがあって、コンプで細かく調整しなくても前に出てきてくれるし、ソフト・シンセはMaiTaiが活躍! プリセットにかっこいい音がたくさん入っています。特にAnthemOneというパッドの音がお気に入りで、1stミニ・アルバムの収録曲「SPIRAL DAYS」で大活躍しているので探してみてください!

▲ポリフォニック・アナログ・モデリング・シンセMai Tai。2 基のオシレーター、サブオシレーター、2 基のLFO、ノイズ・ジェネレーターを備えているほか、ビンテージ・アナログから“ゼロ・フィードバック”フィルターまで、全5タイプのマルチモード・フィルターも内蔵。3基のEGや16 段のモジュレーション・マトリクス、エフェクトを搭載するなど、多様なサウンドメイクに対応することができる ▲ポリフォニック・アナログ・モデリング・シンセMai Tai。2 基のオシレーター、サブオシレーター、2 基のLFO、ノイズ・ジェネレーターを備えているほか、ビンテージ・アナログから“ゼロ・フィードバック”フィルターまで、全5タイプのマルチモード・フィルターも内蔵。3基のEGや16 段のモジュレーション・マトリクス、エフェクトを搭載するなど、多様なサウンドメイクに対応することができる

トラックが形になってきたらボーカルを録りますが、今は、シンガーでもある程度自分でピッチ補正ができるのは当たり前。その点S1にCELEMONY Melodyneが付属されているのは素敵です(Studio One 3 Professionalのみ)。コンピング機能で録り溜めていき、最後にOKテイクを選んで1本にします。そしてコーラスまで録ったら簡単にミックスもしています。最終的なミックスは自分でやっていないのですが、パンやEQなどの調整はしています。特に重宝しているのは、カラフルで目で見て分かりやすいPro EQですね。

▲S1 内蔵の7バンド・パラメトリック・イコライザーPro EQ。スペクトラム・メータリングや、可変式のローカット、ハイカット、低域、高域のマルチモード・フィルター、アウトプット・ゲインの自動設定などのオプションを備えている ▲S1 内蔵の7バンド・パラメトリック・イコライザーPro EQ。スペクトラム・メータリングや、可変式のローカット、ハイカット、低域、高域のマルチモード・フィルター、アウトプット・ゲインの自動設定などのオプションを備えている

ファースト・デモとしてミーティングなどに持って行くときはこの段階で2ミックスを書き出しますが、最近はできたての新曲もライブで歌うという試みをしているので、そのためにリズム、ベース、シンセ、ハモと、ざっくりとパートで分けて書き出した、ライブ用のステムも作っています。また、ライブ会場限定でデモ音源を販売することもあって、そのときはS1のプロジェクトで音量と曲間だけ調整して、ラフにマスタリングをしてCD-Rに書き出しています。

▲Studio One Professionalに備わっているマスタリング・ソリューションがプロジェクト。こちらのページでは、Red BookオーディオCDの保存、高品質のMP3アルバムの作成、標準ディスク/DDPイメージの書き出しのほか、ソングとオーディオ・ファイルを、連続するトラックとしてタイムライン上に並べられ、エフェクトをトラックやマスター出力にかけることができる ▲Studio One Professionalに備わっているマスタリング・ソリューションがプロジェクト。こちらのページでは、Red BookオーディオCDの保存、高品質のMP3アルバムの作成、標準ディスク/DDPイメージの書き出しのほか、ソングとオーディオ・ファイルを、連続するトラックとしてタイムライン上に並べられ、エフェクトをトラックやマスター出力にかけることができる

ライブではMacBookにS1を立ち上げ、トラックを流しながらシンセを弾いて歌います。一つのソング・ファイルにセット・リスト通りのステムを並べ、それぞれの曲頭にマーカーを立てて2曲続くようにしたり、MCのタイミングでストップするようにも設定。ドラムがサポートに入るときは、同期用のクリックもここから送っています。

このように私は、曲を作り、人に届けるところまで、音楽活動のすべてをS1で行っています。私のようなスタイルで活動する女子アーティストも増えてきていて、そんな子たちを集めた“DAW女子会”というイベントを定期的に開催するようになりました。みんなとてもかっこいいのでぜひ遊びにきてください! 次回からはそれぞれの制作過程をもう少し詳しくお話ししてこうと思います。引き続きどうぞよろしくお願いします!

*Studio One 3の詳細は→http://www.mi7.co.jp/products/presonus/studioone/