第4回
ミックスに便利なプラグインと
マスタリング機能の紹介
暑い夏も終わりに近づき、皆さんいかがお過ごしでしょうか? 連載も早いもので今月で最終回となりました。前回に続きミックス時に便利だと思うプラグインとマスタリング機能についてお話ししたいと思います。
ミックスに便利な
Analysis系のプラグインが充実
Studio One(以下、S1)内蔵のプラグインで充実していると思うのがAnalysis系です。音程を確認できるTunerは先月紹介しましたが、周波数分布を視覚的に確認できるSpectrum Meterも標準装備。
ミックス時の全体的なレンジ感や突出するピークの有無を周波数の値で見られるので、EQやコンプの調整に便利でしょう。ほかにはリサージュ・メーターで位相をチェックできるPhsae MaterやVU Meterは筆者には必需品。
アナログ・コンソールで見慣れたVUメーターをマスターにインサートし、2ミックスのアウトプット・レベルを確認できます。このようにミックスに便利なプラグインが多くそろっているのがS1の特徴の一つに思います。
ミックス時のコンプのかけ方にもいろいろあると思いますが、僕がよく使う手法の一つがパラレル・コンプ。パラレル・コンプとは、元のドライな音にコンプがかかったエフェクト音をブレンドする手法で、ダイナミクスがついているドライ音にコンプで太くした音を混ぜることで、元の音質やグルーブとパンチの効いたコンプの音の良いとこ取りするというもの。アナログ・コンソールでミックスしていた時代によく使っていたのですが、デジタル上では遅延の精度もあって、聴いた感じがしっくりこずに避けていたのです。しかし最近のコンピューターとDAWの性能向上のおかげで、また同じような質感で聴けるようになりました。プラグインやアウトボードに、パラレル・コンプの機能を備えたものがありますが、S1では拡張FXチェーンという機能で手軽に使うことができます。その方法は、①インサートしたコンプを表示、②左上のルーティング・ボタンをクリックしルーティング・ビューを展開、③スプリッターで分割。こうするとドライのルーティングとコンプが挟まったルーティングになり、アナログ・コンソールで行っていたパラレル・コンプがプラグイン一つで完結します。
もちろんそれぞれにレベル・コントロールやミュートもできますし、トラックを増やすことなく見た目もシンプルです。分割モードには周波数分割もあり用途の広い処理に対応したルーティングが組めるようになっています。
ハードウェア・インサートを使う方は、Pipelineというプラグインが便利です。
外部機材へのセンド/リターンのレベル、オフセット、ミックス具合も調整ができるので、アウトボードの機材に対しての細かい設定や、ミックスへのアプローチもスムーズに追加できます。
複DDP書き出しも可能な
マスタリング機能を装備
S1を選ぶ理由にマスタリング機能の搭載が挙げられます。こちらはProfessional版のみですが、CDプレス工場に納品ができるDDP書き出しが魅力。AVID Pro Toolsには無い機能なので、ミックスはPro ToolsでマスタリングはS1という方も多いのではないでしょうか。
マスタリングの操作も簡単です。スタート画面から新規プロジェクトを作成、ブラウザーから使用するオーディオ・ファイルをトラック・フィールドにドラッグ&ドロップで準備はOK。曲順を入れ替える場合は左のトラックが並んでいる曲情報リスト自体をドラッグ&ドロップ、曲間に関しては先頭の曲は必然で2秒を確保、それ以外はリストで時間を数値で打ち込んだり、直接ファイルをつかんで左右させることも可能です。クロスフェードもできるので、イメージに合った曲の流れが構築可能となっています。この曲間を決める場合、S1では曲の頭に必ずPQ信号(インデックス・ナンバーや演奏時間の情報)が入るようになっていますので覚えておきましょう。左側上部にはディスク・タイトル、アーティスト、EANコードなどを入力可能です。各曲についてもISRCなどメタ情報を入力できるようになっていますので、誤字脱字の無いように。
マスタリングでは、曲を通して聴いたときに、トータリティのあるアルバムにするために、EQやコンプ、リミッターなどで整音していきます。ここでもミックス時のエフェクト同じようにブラウザーからインサートにプラグインをドラッグ&ドロップするだけでOK。ここで紹介したいのはLimiterです。
見た目も使い方もシンプルで、レベルをピタッと止めたい場合に重宝します。次は周波数ごとにリダクション・コントロールができるMlutiband Dynamics。
突出した帯域だけ抑えたいときや上げたいときに機能してくれますし、プリセットも幾つかあるのでそこから調整していくと良いでしょう。さらにプロジェクト・ページには、あとどのくらいレベルの余裕があるのか、数値として見られるラウドネス情報も確認できます。
また、マスタリング時によくあるのは、並べてみたらある曲だけ歌が大きくて(小さくて)処理がしにくいなんてこと。しかしS1でミックスからマスタリングまでしていると、マスタリングの途中でもミックスに戻ることができ、調整後メニューから“マスタリングを更新”を選択することで、マスタリング中のファイルに反映させることができます。手軽にミックスとマスタリングを行き来することで最終的な作品のクオリティを上げられるので、とても便利です。
メタ情報の入力や整音、曲間ができたところでマスター・データの書き出しとなります。画面上部の書き出しフォーマットの項目を、用途に応じて選択してください。
最後に、短い間でしたけれども、本連載では、僕が普段S1でミックスやマスタリングで使っている機能や便利だと思うことを書かせていただきました。これが皆さんのアイディアの一つになればうれしいです。nos vemos!
*Studio One 3の詳細は→http://www.mi7.co.jp/products/presonus/studioone/