中土智博が使う Studio One 第2回

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第2回
Studio Oneでの作曲における
さまざまな役立つ機能

 こんにちは、中土です。暖冬と言われていた割には、関東でも雪が降るほどの寒さですが、皆さんいかがお過ごしでしょうか? 僕は部屋にこもってぬくぬくとStudio One(以降S1)で音楽制作に勤しんでおります。

オリジナルのマクロ機能を設定し
クリエイティブな作業に

作曲と一口に言っても、人それぞれいろいろな方法があると思いますが、僕の場合は大まかに分けると“メロディ+コード”で作る場合と、トラックを作ってその上にメロディを乗せる場合があります。前者の場合はいわゆる歌モノ、後者はダンス・ミュージック全般という感じ。後者は編曲的な色合いも強いのですが、今回はそれらを明確に分けずに、S1を使った僕なりのテクニックを紹介していきたいと思います。

ガイド・メロディやシンセ・リードを打ち込む際、音源や音色によっては、前のノート・オフと次のノート・オンが同じ音程で重なっていたり、異なる音程でもレガートになっていると、次の音のアタック感が聴き取りにくかったり、次のノートが正しく発音されない場合があります。そんな場合にはマクロで“ベロシティを最大に設定し、レガートにした後、少しだけノートの長さを短くする”というコマンドを組むことで簡単に解消します。

▲オリジナルのマクロ設定は、メニューからStudio One<マクロオーガナイザーを選び、新規をクリックして行う。画面のように、左カラムのコマンドから機能を選んで右カラムに追加し引数を設定できる。このマクロの場合は、“ベロシティ”でベロシティを最大→“長さ”でレガート+オーバーラップ修正した上でノートの長さを若干短くするという設定になっている ▲オリジナルのマクロ設定は、メニューからStudio One<マクロオーガナイザーを選び、新規をクリックして行う。画面のように、左カラムのコマンドから機能を選んで右カラムに追加し引数を設定できる。このマクロの場合は、“ベロシティ”でベロシティを最大→“長さ”でレガート+オーバーラップ修正した上でノートの長さを若干短くするという設定になっている

しかしノートの長さが短いと、うまくポルタメントがかからなくなる場合があります。そんな場合は逆に、レガート後にノート・オフと次のノート・オンをほんの少しオーバーラップさせるマクロを作ります。クオンタイズ後でもノートの重なりが残るので、ポルタメントを効かせたままにできるのです。

もう1つ、生音系のベースは後で生に差し替えることが多い楽器だと思いますが、作曲時はメモ程度にサクッと打ち込みたいものです。そんなときにもマクロが役立ちます。例えば、ロック系のベースの同音連打を打ち込む場合、まずベースを白玉系で頭の音を入力。そしてクオンタイズの値を連打したい長さに設定して、グリッドで分割します。シンコペーションがある場合は適宜、イベントの“結合”のコマンドを使って“タイ”を表現。コレでロックやパンク系のシンプルなルート弾きがあっという間に作れてしまいます!

なぜ、ショートカットやコンテキスト・メニューからそれぞれの機能を使わずマクロ化してしまうのか? もちろん手間を省くと言う意味合いも大きいですが、マクロ化しておくと、同じ長さを調節する機能でも、レガート、レガート/オーバーラップ修正、レガート+長さ微調整……など、微妙な違いを個別の機能として扱うことができるからです。これをショートカットに割り当てることで、クリエイティブな作業中に余計な頭を使わずに済みます。記憶力に自信のない僕は、せっかく割り当てたショートカットを忘れてしまうことが度々あるので、ゲーミング・キーボードにさまざまなショートカットを割り当てているのです。

スクラッチパッドを使って
メロディやコードをストック

メロディを考える際、“私、鼻歌でメモするんですけど”という方がいると思います。そんな人にオススメなのが、CELEMONY Melodyneを活用する方法。S1はMelodyneが統合されているので(ProfessionalにMelodyne essentialが付属)、鼻歌で歌を録音して、Melodyneを起動(必要ならピッチを補正)。その録音したリージョンをMIDIトラックにドラッグ&ドロップすれば、MIDIデータにすぐ変換できます。

▲鼻歌で録音したメロディをMIDIデータにする場合、CELEMONY Melodyneを使い、歌データを修正し、その後オーディオ・トラックからMIDIトラックへドラッグ&ドロップするだけ。より正確にデータ化できる ▲鼻歌で録音したメロディをMIDIデータにする場合、CELEMONY Melodyneを使い、歌データを修正し、その後オーディオ・トラックからMIDIトラックへドラッグ&ドロップするだけ。より正確にデータ化できる

また、スクラッチパッドは、メロディのアイディアをストックしたり、コード感やリズムなどを切り替えながら試聴できるなど、いろいろな使い方が考えられます。僕は作曲時に迷いが生じた場合は、スクラッチパッドにどんどんメモして、後でまとめるようにしています。一度ボツにしたアイディアでも、残しておけば、“あ、やっぱり前のアイディアの方が良かったかも”となる場合もあり、柔軟に対応できますからね。

作曲というトピックからは少し離れますが、スクラッチパッドは、ループを設定してそのループ間を選択すれば、新規トラックとして書き出すことができます。

▲メロディのアイディアをストックしたり、コード感やリズムなどの試聴に活用できるスクラッチパッド(黄色枠)。スクラッチパッドで作ったトラックをループに設定し、“ミックスダウンをエキスポート”のコマンドで、エクスポート範囲を“ループ間”に指定すれば、簡単に書き出しも可能 ▲メロディのアイディアをストックしたり、コード感やリズムなどの試聴に活用できるスクラッチパッド(黄色枠)。スクラッチパッドで作ったトラックをループに設定し、“ミックスダウンをエキスポート”のコマンドで、エクスポート範囲を“ループ間”に指定すれば、簡単に書き出しも可能

これはクライアントに、複数のテンポやキーを提示する際やアイドル・グループのようにボーカルが複数人いる曲のマイナスワンを作る場合に活用できると思います。ぜひ試してみてください。

オリジナルのマクロ機能を設定し
クリエイティブな作業に

ソフト・シンセのバウンスはCPUリソースを節約するイメージが一般的かと思いますが、僕は作曲/トラック・メイク中、CPUリソースに余裕があってもちゅうちょなくバウンスします。そうするとリサンプリングの要領で、オーディオ上で音の長さやノリを変えたり、任意のオーディオ・リージョンだけにエフェクトをかけることもお手のもの。

▲筆者は曲作りの際、積極的にバウンスを活用している。S1はオーディオ・エディットがしやすく、画面のように任意のオーディオ・トラックにMelodyneとKEILWERTH AUDIO Tape Stopをかけて、EDMでよく聴くことができるピッチ・ドロップの効果を出すのも手軽に行える ▲筆者は曲作りの際、積極的にバウンスを活用している。S1はオーディオ・エディットがしやすく、画面のように任意のオーディオ・トラックにMelodyneとKEILWERTH AUDIO Tape Stopをかけて、EDMでよく聴くことができるピッチ・ドロップの効果を出すのも手軽に行える

しかもS1なら途中でキー変更があってもピッチ・シフトのアルゴリズムが高品位なので、書き出しし直さなくても大丈夫です。特にPCM系のソフト・シンセやヒップホップ的なトラックだとS1上で変更した方がしっくりくることが多いのです。またインストゥルメント・トラックに変換をすれば、MIDIでの再編集にも即座に対応可能。ドラムに関しては、フル尺を作ったら早々にバウンスしてしまいます。その際、“すべてのチャンネルをレンダー”にチェックを入れておくと、マルチトラックで書き出されます。

最後にちょっとしたティップスを。S1でテキスト・メモをしたい場合、ソング情報のノート・タブにテキストを表示することができるエリアがあるのですが、僕はここに曲の発注メールやメモ書きだけではなく、歌詞を張り付けて確認しながら歌を録音したりしています。

▲S1でちょっとしたテキスト・メモをしたい場合に役立つのが、ノート。メニューのソング<ソング情報<ノートのタブで使えるので、コード情報や歌詞などを書いておくとスムーズに作業を進めることができる ▲S1でちょっとしたテキスト・メモをしたい場合に役立つのが、ノート。メニューのソング<ソング情報<ノートのタブで使えるので、コード情報や歌詞などを書いておくとスムーズに作業を進めることができる

次回は編曲寄りのトピックをご紹介したいと思います。

*Studio One 3の詳細は→http://www.mi7.co.jp/products/presonus/studioone/