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GENELECの革新的なモニタリング技術 SAMシステムの有用性②

1978年に創業したGENELECは、アクティブ・モニター・スピーカーの先導的なメーカーとしてさまざまな製品を開発してきた。SAM(Smart Active Monitoring:スマート・アクティブ・モニタリング)システムは同社の代表的な技術の一つで、正確かつ信頼性の高いモニタリングを届けるためのツールとして、2000年より研究開発されたものだ。2006年には、専用ソフトウェアGLM(Genelec Loudspeaker Manager)のリリースにより5種類のDSP搭載スピーカーが発表され、以降、ハード/ソフトウェアのアップデートがなされてきた。SAMシステムが本格稼働して10年がたった今、あらためてこの技術の有用性について再確認するため、数々のヒット曲にかかわってきたエンジニア、山内"Dr."隆義氏に本システムのテストを行ってもらったので、早速話を聞いていこう。

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【Profile】レコーディング・エンジニア/サウンド・クリエイター。大型スタジオであるサウンドインスタジオで経験を積み後にフリーランスに。鈴木雅之、ポルノグラフィティ、福山雅治、吉田兄弟、ウカスカジー、スガ シカオ/Sugar&TheRadioFire、布袋寅泰、ココロオークション、磯貝サイモンなど数多くの作品を手掛ける。長年の経験とノウハウからライブの収録や生中継なども数多くこなし、多くの視聴者、ファンに感動を伝えている 【Profile】レコーディング・エンジニア/サウンド・クリエイター。大型スタジオであるサウンドインスタジオで経験を積み後にフリーランスに。鈴木雅之、ポルノグラフィティ、福山雅治、吉田兄弟、ウカスカジー、スガ シカオ/Sugar&TheRadioFire、布袋寅泰、ココロオークション、磯貝サイモンなど数多くの作品を手掛ける。長年の経験とノウハウからライブの収録や生中継なども数多くこなし、多くの視聴者、ファンに感動を伝えている

スピーカーを持ち運んだ際でも
すぐ作業に取りかかれるのは効率的です

GENELECのモニター・スピーカー1031Aを長く愛用してきたエンジニアの山内"Dr."隆義氏。これまで、SAMシステム搭載のスピーカーを試したことがなかった氏が、今回初めて8351A、8330Aを試聴。その印象と、SAMシステムの有用性について語ってもらった。

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— 山内さんはGENELECのスピーカーのどんなところを気に入って使っているのでしょうか?

 山内  音の印象としてはレンジが広く、低域の確認もしやすいし、高域もよく伸びていると感じていました。ドンシャリと言う人もいますが、本体リアのDIPスイッチで部屋に合った音作りをすれば、中域もしっかり出すことができたので、個人的にコントロールしやすく柔軟性の高いスピーカーだと思いますね。

— 今回は、初めてSAMシステム搭載のスピーカーを使っていただき、GLMソフトウェアと専用キットによるキャリブレーションも行いました。いかがでしたか?

 山内  特別な知識がなくても手軽に測定できるのは良いですよね。セッティングから測定まで時間もかからないですし、自動でキャリブレーションした後の音も好印象でした。この部屋(STUDIO MECH 6st)は最近よく作業に使っているんですが、GLMソフトウェアでキャリブレーションすると、部屋の特性とフィルタリングした波形、そして補正後の波形をパソコンの画面で確認でき、ちょっと見えにくいと感じていた帯域がやはり膨らんでいた。さらに左右の音量レベルとディレイによって最適なバランスになるよう自動補正してくれており、このシステムはとてもユニークだと感じました。

▲キャリブレーションしたGLMソフトウェアの画面。上部に波形が表示され(赤:補正前、青:補正値、緑:補正後)、下部には音量レベル、ディレイ、EQの設定項目が表示されている ▲キャリブレーションしたGLMソフトウェアの画面。上部に波形が表示され(赤:補正前、青:補正値、緑:補正後)、下部には音量レベル、ディレイ、EQの設定項目が表示されている

— エンジニアや音響の専門家でなくても、キャリブレーションが手軽に行えますよね。

 山内  それはすごくメリットだと思います。僕が所属していたスタジオではモニターの音作りをする際、スタジオの方針で部屋の音響特性はできるだけ数値的にフラットにしていくという作業をしてきたんですね。多少モニタリングしにくくても数値優先でした。でもGLMソフトウェアでは、過度にフラットな補正をするというより、音楽的……良い意味でファジーと言うか、自然にモニターできように補正されている印象を受けました。GENELECの技術者が良い音の基準をきちんと理解しているからでしょうね。

— ソフトウェア上では、測定後にさらに設定値を好みにエディットすることができるほか、測定ポイントも複数個所で可能です。

 山内  細かくこだわりたい人もいるでしょうから、そこまでできるのはありがたいですね。また、複数ポイントで測定すれば、アーティストやクライアントがエンジニアと同じ条件の音で聴けるので、すごく良いと思います。

▲今回テストしたのはSTUDIO MECHの6stのコントロール・ルーム。8351A(外側)と8330A(内側)を設置し、それぞれGLMソフトウェアでキャリブレーションを行った ▲今回テストしたのはSTUDIO MECHの6stのコントロール・ルーム。8351A(外側)と8330A(内側)を設置し、それぞれGLMソフトウェアでキャリブレーションを行った

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— 実際、補正前と後の音を聴き比べてみましたが、どんな印象を受けましたか?

 山内  今回チェックした音源は、まさにこのスタジオのこの部屋でミックスした曲だったんですけど、バイパスしたときとキャリブレーションしたときと比べたら、キャリブレーション後の音は圧倒的に位相感が良くなり、センターの音像がハッキリする印象を持ちました。自動補正しただけで、ここまで違いが出るんですね。また、ボリュームを大きくしても小さくしても印象が変わりません。これであれば、大小複数のモニター・スピーカーを持ち込んで比較する必要が無くなりますね! これはクラスDアンプを搭載している恩恵もあるのでしょう。

— このSAMシステムを使うことによって、エンジニアにはどんなメリットがあると思いますか?

 山内  僕は25年くらい、ずっと同じスタジオでミックスをしていましたが、昨年辺りから、外のスタジオでもミックスをするようになってきたんですね。そのときは自分のスピーカー、GENELEC 1031Aを持ち込んでいたんですけど、その際に悩むのが、部屋とスピーカーとの相性なんです。ミックスの前にまずモニターの音作りをしなくてはいけないんですよ。でも、それを機械がサポートしてくれるというのは、すごく助かります。今まで僕たちはスピーカーを持ち込む際、部屋を何とかしてスピーカーに合わせなければという発想だったんです。反射させたり吸音させたり、そういうところに神経を配っていたので、コストと時間がとにかくかかった。でもSAMシステムはスピーカーが部屋に合わせてくれるという発想ですし、設置から10分くらいでキャリブレーションが完了してすぐ作業に入れる。効率的ですよね。

— SAMシステムを導入したら作業効率も上がるということですね。

 山内  そうだと思います。僕自身、今回試したスピーカーの音自体もすごくしっくりきて好みでしたので、もし自分で導入するとしたら、昨今の制作状況からアーティストさんのプライベート・スタジオに出向くときにとても有効かなと。それと、ここ数年とても増えているライブの生中継やレコーディングにおける中継車でのモニタリングではとても実力を発揮してくれるでしょう。僕は数多くの中継車に乗っていますが、車の中は決してモニタリング環境が良いとは言えません。そんな条件でもSAMシステムを導入すればわずか10分程度の測定時間で正確なモニタリングを実現できる。生中継のクオリティを格段に上げられるでしょうね。

▲キャリブレーション後の波形を確認する山内氏。もともとの部屋の特性と補正後とを視認でき「無理に数値的なフラット特性を作り出すのではないGLM独特のノウハウが音楽的な補正と感じるんですね」と感嘆していた ▲キャリブレーション後の波形を確認する山内氏。もともとの部屋の特性と補正後とを視認でき「無理に数値的なフラット特性を作り出すのではないGLM独特のノウハウが音楽的な補正と感じるんですね」と感嘆していた

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