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ハードコアのほかEDMなどにも使える
“スクリーチ”の作り方
今回は“スクリーチ”(screech)の作り方を紹介します。スクリーチとは、ハードコアのほかトラップやEDMなどにもよく使われているシンセの音色で、この連載の題材にしている曲「Hardsound Primary(SRM Edit)」(https://soundcloud.com/sound-7/dj-myosuke-hardsound-primary-srm-edit)でも大活躍しています。メインのシンセ・リフの音色がそれであり、00:28辺りで鳴り始めますが、00:50からが一番分かりやすいと思います。早速、解説しましょう!
チャンネル・セッティングのページで
ピッチ・エンベロープを直感的に調整
スクリーチは、ROLAND αJunoシリーズなどに入っていた“フーバー”(Hoover)と呼ばれるサウンドによく似ています。フーバーと聞いてピンと来ない人も、ピッチが急速に変化するギュウ〜ンという音色を聴けば“ああコレね!”と思うでしょう。スクリーチは、そのフーバーよりもトーンが明るく、現代的な雰囲気です。
題材曲のスクリーチは、FL Studio純正の加算合成シンセ3X OSCを元に作りました。作業の流れは、3X OSCの音にディストーションやステレオ・イメージャーをかけてブラッシュ・アップするというもの。3X OSCのオシレーターは全3基ですが、今回使ったのは2基で、波形はいずれも“rounded saw”(丸みを帯びたノコギリ波)を選択。双方にデチューンをかけ、なおかつ片方のチューニングを半音上げることで立体感を付けています。
![1スクリーンショット-2017-07-10-19.36.08](https://rittor-music.jp/sound/wp-content/uploads/sites/7/2017/07/1スクリーンショット-2017-07-10-19.36.08.jpg)
さて、ここまでは序の口。スクリーチのキモは何と言ってもフーバーばりのピッチ変化なので、“Instrument Channel Setting”ページにアクセスしてピッチのエンベロープ・カーブを描きます。このページでは、ピッチ・エンベロープを折れ線のグラフィックで調整可能。DAWによっては、モジュレーション・マトリクスなどからコントロールしなければなりませんが、それに比べるとずっと直感的です。こういう細かい部分もFL Studioならではの良さですね。セッティングに関しては、アタックとディケイのタイムをやや伸ばし、音が立ち上がった直後に一瞬だけピッチが上がるよう設定。これにより“ぴゅう〜ん”というサウンドが得られました。
![2スクリーンショット-2017-07-10-19.36.25](https://rittor-music.jp/sound/wp-content/uploads/sites/7/2017/07/2スクリーンショット-2017-07-10-19.36.25.jpg)
しかし出来上がった音を聴いてみると、やや芯に欠ける印象……それもそのはず、上モノは主に中〜高域の音で構成するため、単体では細く聴こえがちなのです。そこで3X OSCのトラックを複製し、その出音を1オクターブ下げてオリジナルにレイヤー。厚みが出てきましたね!オクターブ下げの方法は簡単で、Instrument Channel SettingキーボードのC6を右クリックするのみ。このキーボードでは右クリックした鍵盤をC5に変えることができ、それに伴ってすべての鍵盤のピッチがスライドするため、フレーズの移調が瞬時に行えるのです。
![3スクリーンショット-2017-07-10-19.36.43](https://rittor-music.jp/sound/wp-content/uploads/sites/7/2017/07/3スクリーンショット-2017-07-10-19.36.43.jpg)
ピアノロールのスライド機能で
パターンにインパクトを与える
ここからはエフェクトによる音作りです。まずは2つのシンセ・トラックを同じミキサー・チャンネルに送ります。そこにFL Studio純正のプラグイン・ディストーションFruity Fast Distを2つ挿し、ジャリっとした成分をプラス。このFruity Fast DistはCPU負荷が低く使いやすいのですが、ド派手にひずむタイプではないため、2つ立ち上げて段階的にひずませています。その後段にはFruity Stereo Enhancerをインサートし、ステレオ幅を広げました。今回はこのFruity Stereo Enhancerを使いましたが、FL Studioにはミキサーのすべてのチャンネルに“Stereo Separation”ツマミが装備されていて、それを使うことでもステレオ幅の調整が可能です。こうした機能を備えているのは、EDMなどの華やかなダンス・ミュージックに向けたFL Studioらしい設計ですね。
![4スクリーンショット-2017-07-10-19.37.02-のコピー小](https://rittor-music.jp/sound/wp-content/uploads/sites/7/2017/07/4スクリーンショット-2017-07-10-19.37.02-のコピー小.jpg)
![5スクリーンショット-2017-07-10-19.37.19](https://rittor-music.jp/sound/wp-content/uploads/sites/7/2017/07/5スクリーンショット-2017-07-10-19.37.19.jpg)
大体の処理を終えたら、FXスロットの最初の段にFruity Filterを挿しました。カットオフをオートメーションで動かし、音にうねりを与えています。ちなみにソフト・シンセには、ノートのベロシティでカットオフを動かせるモデルもありますよね。僕は普段、サード・パーティ製のLENNAR DIGITAL Sylenth 1でそれを行っています。
![6スクリーンショット-2017-07-10-19.37.38-のコピー小](https://rittor-music.jp/sound/wp-content/uploads/sites/7/2017/07/6スクリーンショット-2017-07-10-19.37.38-のコピー小.jpg)
音作りについては以上ですが、ノートの話が出て来たので、スクリーチを鳴らしているパターンについても触れておきましょう。ポイントはズバリ、先頭にあるピッチの変化です。題材曲の00:50で聴ける“どぅわっ”という動きのことですね。これはFL Studioのスライド機能を活用したものです。やり方については、ピアノロールのスライド・スイッチをオンにして、拍アタマから2つ目のノートを打ち込むだけ。そうすると拍アタマのノートから2つ目のノートにかけてピッチが滑らかに上がっていくため、うねるように聴こえるのです。クラブ・ミュージックでは、メロディックなパートについても“ピッチの変化をサウンド・エフェクトとしてとらえる”といった側面があると思うので、このスライド機能は有効活用できますよね。
![7スクリーンショット-2017-07-10-19.37.59](https://rittor-music.jp/sound/wp-content/uploads/sites/7/2017/07/7スクリーンショット-2017-07-10-19.37.59.jpg)
さて、スクリーチの合間に“スクラッチ”の音をアクセントとして入れています。題材曲の00:47〜00:50などが分かりやすいポイントだと思いますが、これはボイス・パートの元になったサンプルから作りました。作業はまさに一瞬。まずはターンテーブル・シミュレーターのFruity Scratcherとオーディオ・レコーダー/エディターのEdisonを同じチャンネルに立ち上げます。それからFruity Scratcherにボイス・サンプルを読み込み、EdisonをREC待機状態にしてから適当にスクラッチ。録音が完了したらオーディオをプレイリストにドラッグ&ドロップし、クリップを並べるだけです。これで完了! とても簡単だと思うので、皆さんも試してみてください。
![8スクリーンショット-2017-07-10-19.38.26-のコピー小](https://rittor-music.jp/sound/wp-content/uploads/sites/7/2017/07/8スクリーンショット-2017-07-10-19.38.26-のコピー小.jpg)
来月で自分の担当も最終回。ミキシングなど楽曲の全体像にかかわるトピックでお送りしたいと思います!
FL Studio シリーズ・ラインナップ
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