
誰にも教えたことのない
秘密のノイズ・テクニック
早いもので僕の連載も今回で最終回。ファイナルにふさわしいトピックとして、これまで誰にも教えたことのない秘技を紹介します! メインで使用するのは、IMAGE-LINE FL Studio 12のFruity Edition以外のグレードに標準装備されているシンセSytrusです。
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リードのノートと同じタイミングで
Sytrusのノイズを鳴らす
曲を作っているときに“このシンセ・リード、頑張って音作りした割にはど〜も抜けが悪いなぁ……”などと感じることはありませんか? リードではなく、ベースやキックに対してそう思うかもしれません。だからと言ってやみくもに音量を上げるとどうでしょう? 全体のバランスが崩れてしまいがちですよね。EQで高域を上げてもうまく抜けないことがあるので、難しい問題です。そんなときに効果的なのが“高域にノイズ成分を加える”という手法。超シンプルじゃん!と突っ込まれそうですが、幾つかコツがあるので最後まで読んでくださいね(笑)。この手法はリードからキックまでいろんなパートにマッチするため、僕は音抜けを良くしたいときのファースト・チョイスにしています。感覚としては、ひずみ系のエフェクトで倍音を増やすのと似ているでしょうか。例えば僕は自分の曲「Invasion」のコード・バッキングで、この手法を実践しています。
音作りの手順を解説します。ここではサード・パーティ製のウェーブテーブル・シンセXFER RECORDS Serumのプリセットで作ったリードにホワイト・ノイズを加えてみましょう。プリセットの波形は矩形波に近い形状。シンプルな音ですが、スーパー・ソウのように複雑なものよりはノイズの効果が分かりやすいと思います。ホワイト・ノイズに関してはSytrusで作成。Sytrusは6つのオペレーター(=オシレーター)を備えたシンセで、3つのフィルターやコーラス/ディレイ/リバーブのモジュールのほか、FMやリング・モジュレーションのためのマトリクスを装備しています。
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まずはSytrus用のピアノロールに、リードのMIDIノートをコピー&ペースト。このノートは、メロディではなくノイズを鳴らすものなので、ピッチを一律にしておくと後々便利です。とりあえずC5にそろえておきましょう。次にSytrusのオペレーター1をエディット。波形は6本のスライダーで連続的に変化させることができ、無限に音色を作れるわけですが、ノイズのみを鳴らす場合は“NS”というスライダーを目一杯上げればOKです。
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サイン波を使って
ノイズをリング・モジュレーション
今度はオペレーター2をエディット。オペレーター2は、オペレーター1のノイズに“揺れ”を与えるモジュレーターとして使用します。しかしなぜ、ノイズを揺らすのでしょうか? 狙いは、リードにグルーブ感を加えることです。しかもその揺れ方を変えることにより、グルーブの調整も可能。ズバリ、これが音作りのキモですね。手順としてはまず、オペレーター2の波形をサイン波にして“Frequency Ratio”を調整。これはオペレーターの基本ピッチを何倍かにできるパラメーターで、値を上げると2倍や4倍に、下げると0.5倍や0.25倍になります。ここでは差し当たり0.5倍に設定しておきます。
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続いてモジュレーション・マトリクスをリング・モジュレーション・モードに設定し、オペレーター2でオペレーター1をモジュレーション。これでオペレーター1の音が揺れ始めます。保留にしていたFrequency Ratioは、先ほどの0.5倍から上げると揺れが小刻みになり過ぎてグルーブが薄れたので変更ナシ! ちなみに揺れ方は、Sytrusをどんなノートで鳴らすかによっても変わってきます。現状C5で鳴らしていますが、もう少し小刻みに揺らしたい場合はピッチを上げ、ゆったりとさせたければ下げる形。最初からC8やC0のように極端なノートで鳴らしていると上げ下げの自由度が低くなるので、僕はC5から微調整することが多いです。
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これでおおかた完成ですが、リリースが短過ぎる印象なのでアンプ・エンベロープをエディットし、アタックとディケイを短め/リリースを長めに設定します。アンプ・エンベロープは、主体となるパート(ここではリード)の音色に合わせて調整すると良いでしょう。例えば白玉中心のリードならリリースを長め、打楽器のようにアタッキーな音であればリリースを短めに設定する要領です。
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これと併せて、Sytrusの内蔵ハイパス・フィルターで低域をカット。カットオフ周波数に応じて重心や質感が変わるため、主体となるパートの音色に合うよう調整します。なおフィルターの使用にあたってはマトリクスをFMモードに切り替え、オペレーター1をフィルターへ入力してからその出力を上げておきます。あとは別途プラグインを立ち上げ、リバーブをかけるなどして仕上げましょう。リードと一緒に鳴らしてみると、ナチュラルに音の粒立ちや輪郭がハッキリとしましたね! 以上リードに加えるためのノイズの作り方を紹介しましたが、音作り次第ではベースやキックにもマッチします。汎用性が高いので、いろいろと試してみてください。
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僕の連載は、インパクト・スネアにフォーカスしたりノイズの活用法を紹介するなど随分マニアックだったと思います。でもこれぞサンレコ的かな?と思い、なるべく掘り下げて解説したつもりです。FL Studioに限らず、DAWでの音楽制作は“ツールの扱いに慣れてナンボ”。皆さんもお気に入りのソフトを使い倒して、今まで以上に曲作りを楽しんでください! それではごきげんよう。
FL Studio シリーズ・ラインナップ
FL Studio 12 All Plugins Bundle(99,990円)
FL Studio 12 Signature Bundle(パッケージ版のみの販売:31,000円)
FL Studio 12 Producer Edition(24,000円)
FL Studio 12 Fruity Edition(12,800円)
<<<Signature Bundle以外はbeatcloudにてダウンロード購入可能>>>