C-Showが使う「FL Studio」第2回

ボコーダーやマキシマイザーなど
トラック制作に“効く”プラグイン

C-Show(シショウ)です。今回は僕がトラック制作で愛用しているプラグインをご紹介。いずれもFL Studio 12 Signature Bundle(パッケージ販売)とFL Studio 12 Producer Edition(https://beatcloud.jp/にてダウンロード販売)に付属するものです。

Vocodexのサイド・チェインに
声とウォブル・ベースを入力

まずはボコーダーのVocodexから見ていきましょう。そもそもの話ですが、ボコーダーとは、基本となる音色(シンセなど)を人の声でモジュレートするためのツール。基本の音色は“キャリア”と呼ばれ、人の声は“モジュレーター”と言われます。ボコーダーはモジュレーターの周波数分布をリアルタイムに解析し、その結果を用いてキャリアの周波数分布をコントロールします。少し難しい話になりましたが、結果としてはシンセ音などに声のキャラクターが付くため、ロボット・ボイスのようなサウンドが得られるのです。そしてこのプロセスを“ボコーディング”と呼びます。

▲FL Studio 12 Signature BundleとFL Studio 12 Producer Editionに付属するボコーダー、Vocodex。同グレードに付属のSytrusをベースとしたシンセを備え、キャリアとして使用することができる ▲FL Studio 12 Signature BundleとFL Studio 12 Producer Editionに付属するボコーダー、Vocodex。同グレードに付属のSytrusをベースとしたシンセを備え、キャリアとして使用することができる

Vocodexについても、シンセをキャリア、人の声(声ネタでもOK)をモジュレーターに設定するのが基本。しかし僕はこの関係を逆転させ、声ネタをキャリア、シンセをモジュレーターにして少し変わった音を作っています。

VENGEANCE SOUNDの声ネタとNATIVE INSTRUMENTS Massiveのウォブル・ベースを用意し、それらとVocodexをミキサーの個別のチャンネルへ立ち上げてみましょう。次に声ネタとMassiveのチャンネルのマスターへの出力を切り、両者をVocodexのサイド・チェイン入力へと接続。最後にVocodexの“MOD”(モジュレーター)欄でMassive、“CAR”(キャリア)欄で声ネタを選ぶと、声でウォブル・ベースをボコーディングできます。まるでベースが歌っているようなサウンドで、インパクト大。曲のタイトルになるような短い言葉を使うと、より効果的でしょう。僕は「SHOCK」という曲でこの手法を用いています。20秒辺りに登場するので、良かったら聴いてみてください(https://soundcloud.com/c_show/c-show-shock)。

▲ピンクの枠で囲んだ3つのチャンネルは、左からそれぞれNATIVE INSTRUMENTS Massive、VENGEANCE SOUNDの声ネタ、Vocodexを立ち上げたもの。画面はMassiveチャンネルの出力をVocodexチャンネルのサイド・チェイン入力へ接続したところで、パッチ・ケーブルのグラフィックによりルーティングが可視化されている ▲ピンクの枠で囲んだ3つのチャンネルは、左からそれぞれNATIVE INSTRUMENTS Massive、VENGEANCE SOUNDの声ネタ、Vocodexを立ち上げたもの。画面はMassiveチャンネルの出力をVocodexチャンネルのサイド・チェイン入力へ接続したところで、パッチ・ケーブルのグラフィックによりルーティングが可視化されている

ちなみにVocodexのMOD欄とCAR欄には“Massive”や“VENGEANCE”といった名前が表示されるわけではなく、“1”や“2”などの番号が出てくるだけです。サイド・チェイン入力された信号に付く番号で、この場合は1番目に接続したMassiveに1、2番目に接続した声ネタに2が振られています。またMOD欄で2、CAR欄で1を選ぶと、声でMassiveをボコーディング可。これは冒頭で述べた一般的なボコーダーの使い方ですね。

▲VocodexのGUI上部。ピンク枠で囲んだ部分の左の欄がモジュレーターを選ぶ“MOD”、右がキャリアを選択する“CAR”となっている。番号の数字が小さいほど、先にサイド・チェイン入力へ接続されたソースだ ▲VocodexのGUI上部。ピンク枠で囲んだ部分の左の欄がモジュレーターを選ぶ“MOD”、右がキャリアを選択する“CAR”となっている。番号の数字が小さいほど、先にサイド・チェイン入力へ接続されたソースだ

Vocodexにはキャリアとして使えるシンセが搭載されているため、声ネタのチャンネルに挿せば、その声で内蔵シンセをボコーディングすることができます。先ほど紹介した曲の10秒辺りの声は、この方法で作ったものです。Vocodexは、使用するシンセの音色によって大きく結果が違ってくるので、内蔵/外部を問わずいろいろなシンセを使ってみましょう。

次にEdisonを紹介します。これはオーディオ・レコーダー/エディターで、ミキサーのチャンネルなどに立ち上げて使います。録ったものをプレイリストにドラッグ&ドロップすれば、即座にオーディオ・クリップへと変換できるのが便利ですね。

▲オーディオ・レコーダー/エディターのEdison。4つのレコーディング・モードを切り替えて使用でき、プロジェクトの再生が始まった瞬間や、外部からオーディオが入力された瞬間など、録音開始のきっかけを選ぶことが可能。録音や編集が終わったら、その結果をツール・バーのアイコン(ピンク枠)からプレイリストにドラッグ&ドロップしオーディオ・クリップに変換できる ▲オーディオ・レコーダー/エディターのEdison。4つのレコーディング・モードを切り替えて使用でき、プロジェクトの再生が始まった瞬間や、外部からオーディオが入力された瞬間など、録音開始のきっかけを選ぶことが可能。録音や編集が終わったら、その結果をツール・バーのアイコン(ピンク枠)からプレイリストにドラッグ&ドロップしオーディオ・クリップに変換できる

では先ほどのVocodexの流れで、Edisonでの声ネタの扱い方を見ていきましょう。例えば“Yeah”という声ネタを使うとして、これにまずはFruity Reeverb 2のリバーブをかけます。次にチャンネルのサンプラーでリバースさせ、それをEdisonに録音。録ったものをプレイリストへドラッグ&ドロップし、“リバーブのかかったリバース声”のクリップを作っておきます。一方、最初にリバースさせた声は再び反転させ、オリジナルにリバーブがかかっただけの状態に戻します。それから先のリバーブ&リバースのクリップを手前に置くと、反転した残響成分が徐々に大きくなってから声が現れるという、クラブ系定番の音使いとなるわけです。文字で表すと“hhhhaaaeeYeah”という感じでしょうか。次に何か来るぞ、という雰囲気が出ますね。フェードインの部分がオリジナルの頭にうまくつながるよう、波形編集するのもポイントです。

▲声ネタにインサートで使用したFruity Reeverb 2 ▲声ネタにインサートで使用したFruity Reeverb 2
▲上のトラックにあるのはオリジナルの声ネタにリバーブをかけたクリップで、下はリバーブをかけた上で反転させたクリップ。後者の余韻の部分が前者の頭にうまくつながるよう位置を調整し、ポイントが決まったら重なった部分をカットした(ピンク枠) ▲上のトラックにあるのはオリジナルの声ネタにリバーブをかけたクリップで、下はリバーブをかけた上で反転させたクリップ。後者の余韻の部分が前者の頭にうまくつながるよう位置を調整し、ポイントが決まったら重なった部分をカットした(ピンク枠)

コンプレッション・カーブを
さまざまな形に変えられるMaximus

最後はMaximus。これは3バンド(ロー/ミッド/ハイ)+マスターのマキシマイザーで、ローカットやステレオ・イメージャーなども備える多機能なプラグインです。僕は主にシングル・バンド・コンプとして活用していますが、面白いのはコンプレッション・カーブをさまざまな形に変えられる点。グラフィックを右クリックすれば“Control point”という点を追加でき、オートメーション・カーブを描くような感覚でコンプレッション・カーブを変形させることが可能です。これにより、一般的なコンプでは難しい極端なアタックの強調が行えたり、“大きいところをより大きく/小さいところをより小さく”といったメリハリが作れたりするのです。

▲3バンド+マスターのマキシマイザー、Maximus。先読みのアルゴリズムを採用しており、リミッティング以外にもコンプレッション(パラレル・コンプやサイド・チェイン・コンプを含む)やゲーティング、エキスパンション、ディエッシングなどが行える。左上のグラフィックはコンプレッション・カーブで、直接編集することが可能。その右はゲイン・リダクションの具合などをリアルタイムに映す画面だ ▲3バンド+マスターのマキシマイザー、Maximus。先読みのアルゴリズムを採用しており、リミッティング以外にもコンプレッション(パラレル・コンプやサイド・チェイン・コンプを含む)やゲーティング、エキスパンション、ディエッシングなどが行える。左上のグラフィックはコンプレッション・カーブで、直接編集することが可能。その右はゲイン・リダクションの具合などをリアルタイムに映す画面だ
▲コンプレッション・カーブは、このように変わった形にすることも可能。音作りに偶然性を与えられるだろう ▲コンプレッション・カーブは、このように変わった形にすることも可能。音作りに偶然性を与えられるだろう

例えば16ビートのハイハット・パターンにかけると、オープンのところだけ強く聴かせることも可能。僕はそうして作ったサウンドにWAVESのコンプRenaissance Axxをかけて、よりアタッキーに仕上げたりします。そのほか、スレッショルドを下回った音をバッサリとカットするような設定も行えるため、ゲート的に使ったりと、発想次第でさまざまな処理が可能です。マキシマイザーとしての音質はそこそこという印象ですが、ほかには無い効果が得られる上、ゲイン・リダクションの様子が波形のグラフィックで表示されたり、CPU負荷が低いなどのメリットがあるので、普段から重宝していますね。

▲筆者がMaximusと併用しているWAVESのコンプRenaissance Axx。_パラメーターはスレッショルドとアタック・タイム、アウトプット・ゲインの3つのみで、出力段にはリミッターを装備している ▲筆者がMaximusと併用しているWAVESのコンプRenaissance Axx。_パラメーターはスレッショルドとアタック・タイム、アウトプット・ゲインの3つのみで、出力段にはリミッターを装備している

FL Studio シリーズ・ラインナップ

FL Studio 12 All Plugins Bundle(92,583円)
FL Studio 12 Signature Bundle(パッケージ版のみの販売:31,000円)
FL Studio 12 Producer Edition(22,222円)
FL Studio 12 Fruity Edition(11,852円)<

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