ACOUSTIC REVIVE クロス・レビュー「ケーブル・インシュレーター」

“原音忠実”の理念のもと、ケーブルなどのオーディオ・アクセサリーを手掛けるACOUSTIC REVIVE。今回クロス・レビューするのは、電源ケーブルやオーディオ・ケーブルを床から浮かせ、音質を向上させるためのケーブル・インシュレーター=RCI-3Hだ。

第4回「ケーブル・インシュレーター」

ACOUSTIC REVIVE代表
石黒謙、氏の技術解説

ケーブルも、スピーカーやその他の音響機器と同じように振動を受けており、その影響は深刻です。床を引き回しているケーブルはスピーカーや楽器からの振動を拾い、本来の信号ではないひずんだ信号を発電してしまいます。また、化学繊維のカーペットや塩ビシートの床では静電気の影響も甚大で、数万Vにもなる静電気は確実に伝送を劣化させるため、ケーブルを床から浮かせるインシュレーターが必要となります。しかし、単にケーブルを床から浮かせれば良いというわけではなく、ケーブルを浮かせるインシュレーターの素材によっては“素材自体の癖”が乗ってしまいます。

ACOUSTIC REVIVEのケーブル・インシュレーターであるRCI-3Hは、楽器にも使われる高級木材ヒッコリーとマホガニーを組み合わせたハイブリッド構造により癖の発生が一切無く、自然で生々しい良質な音色と質感を伴ったインシュレーション効果を発揮します。また内部に封入された、マイナス電位を持った天然鉱石のブレンドによって、ケーブル自体から発生する輻射(ふくしゃ)ノイズをも吸収/消滅させる効果を発揮。特に、電源ケーブルはケーブル自体から強烈な輻射ノイズが発生し、周りのケーブルや機材などに深刻な影響を与えていますので、RCI-3Hの輻射ノイズ消滅効果によってシステム全体のノイズやひずみを減衰させ、劇的な音質向上効果を実現します。

<Price>
RCI-3H:18,000円(1個)
外形寸法:80(W)×65(H)×30(D)mm
ケーブルを受ける部分のサイズ:40(W)×29(H)mm

Cross Review

Recording/Mixing Engineer
谷川充博
MT<Profile>Studio First Call主宰のエンジニア。くるり『ソングライン』や屋敷豪太の最新作『The Far Eastern Circus』、京都フィルハーモニー室内合奏団なども手掛ける。

分離/定位感/力強さなどが向上
音響に携わるすべての人に薦められる

RCI-3Hをお借りし、電源周りで使ってみました。まずモニター・コントローラーとパワー・アンプの電源ケーブルに試してみたところ、分離が良くなり、フォーカスが合ったように感じました。定位や奥行きもよく見えて好感触です。次にギター・アンプの電源ケーブルに使用。これは、大変驚きました。力強い音になり、ボヤけた感じが無くなって、ピッキングのニュアンスがそのまま出ます

私は、今まで電源ケーブルやマイク・ケーブルなどはいろいろ試してきましたが、ケーブル・インシュレーターというものを使ったことはありませんでした。直接そこに電気(シグナルや電源からの電気)が流れないオーディオ・アクセサリーに、そこまで効果を期待していなかったのです。しかし、今回RCI-3Hを試してみて、大きく考えが変わりました。使うことによるデメリットは全く感じない変化ですので、すべての音響にかかわる人に薦められるアクセサリーです。今後も、いろいろなところで試して、使っていきたいと思っています。

Composer/Arranger
荒木正比呂
MA<Profile>fredricson名義でエレクトロニカ作品を発表。レミ街のキーボーディストや広告音楽コンポーザーとしても知られる。中村佳穂『AINOU』には、主に作編曲でコミット。

つかみやすい明りょうな音像に
ギラつきなどは無く上品な音色変化

FOCAL Solo6 BEのスピーカー・ケーブルとVOLTAMPERE GPC-TQ(電源ディストリビューター)の電源ケーブルに使用。最初はキックの腰が少し高くなったかな?と思いましたが、中低域(ボコっとする辺り)が出てくるのでそう感じたようです。現在使っているオーディオI/OのANTELOPE AUDIO Zen Tourは音が上下に、Solo6 BEは横に広がり全体としてつかみどころが無くなりがちですが、RCI-3Hを使うとツルツルの岩肌に足場が現れるようなイメージ。随分明りょうな音になるという印象です

テストに使った音源はジャミーラ・ウッズ、ジョン・レジェンド、ジ・インターネット、リアン・ラ・ハヴァス、Lusineの最新音源やJ・ディラなど。特にLusineは、低域はあるもののほかの音源よりキックが平べったい印象なのですが、それでもちゃんとつかめるようになります。ケーブル類をへたに高価なものにするとギラついてしまうことがありますが、それに比べたら上品な音の変化のように感じます。良い変化だと思いました。いろいろ聴き込んでみようと思います。

Recording/Mixing Engineer
中村公輔
KN<Profile>エンジニア。折坂悠太、入江陽、TAMTAM、ツチヤニボンド、ルルルルズらを手掛ける。エレクトロニカ・アーティストでもあり、Mille Plateauxなどから作品を発表。

モワつきなど余分な成分が消え
後処理を減らせるから鮮度を保てる

ベテランのエンジニアの方が、ドラム・レコーディングの際にマイク・ケーブルを床から浮かせて配線している写真を見たことがあり、ケーブル・インシュレーターには興味がありました。とは言え、“絵的な面白さでミュージシャンとのコミュニケーションを図るための小ネタとして良いな”くらいの気持ちで、そこまで効果があるとは思っていなかったのです。ところが今回RCI-3Hを使ってみて、その固定観念が崩壊。自宅ブース内でマイク・ケーブルや真空管マイクの電源ケーブルなどに複数個設置してみたところ、レコーディングしていたアーティスト全員からも“明らかに音が変わった”との意見が得られたのです。

具体的には、これまでEQで処理していたモワつきなど、余分と感じていた帯域が消滅。“これはナチュラルな音だ”と思える音質で録れるため、後処理を減らしてフレッシュな状態をキープできるようになりました。自宅で録音すると、同じ機材を大手録音スタジオに持ち込んで作業するよりときに比べてわずかに不要な音が乗ると感じており、それは部屋の差だと思っていました。定在波を無くすために過度な吸音をしても収まらず、これ以上は部屋を作らないとダメだとあきらめていたんですが、まさかケーブル・インシュレーターで解決するとは!

ブースがカーペット敷きなので、コンデンサー・マイクのケーブルのように微弱な音声信号と電気信号を取り扱うようなものに使うと、静電気の影響から解放されて良い音になるのかもしれません。理屈は分かりませんが、効果があるのは確かなので重宝しています。

<製品概要>
ACOUSTIC REVIVEケーブル・インシュレーター

(本稿はサウンド&レコーディング・マガジン2019年5月号からの転載となります)